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国家戦略特区を目指す秋田県仙北市 生ハムの一大産地構想も

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 安倍晋三内閣が「第三の矢」(成長戦略)の切り札として進める国家戦略特区。今年8月、内閣府が行なった国家戦略特区の第二次提案募集に応じて、相当数の自治体・民間事業者から、既指定の6か所に勝るとも劣らない提案がなされた。政策工房社長の原英史氏は、その中から「田沢湖・玉川温泉を中核とした医療・農林ツーリズム特区」を提案した秋田県仙北市を訪れた。その時の発見をレポートする。

 * * *
 仙北市の特区プランは、以下の3つの柱で構成される。

(1)外国人も含めた、温泉活用・湯治型の医療ツーリズム推進

(2)食のトータルプラン(食農林観連携)の推進

(3)医療・観光拠点開発のための公共施設・交通などの改革

 この内容からは農林業、医療、観光の連携による地域の成長を目指すことが窺え、国に対しても、農業生産法人要件の緩和、国有林野の民間開放、外国医師の活用拡大などの岩盤規制の改革を求めている。

 事業プランの完成度は高い。規制改革提案はすぐに、内閣府に設けられている国家戦略特区ワーキンググループにかけられ、実現に向けた協議がスタートした。提案の背景については、仙北市の門脇光浩市長にご登場願おう。

「仙北市には無限大の可能性があると思っています。景観、体験、温泉など多様な観光資源があり、年間600万人の観光客に来訪いただいています。ところが、これが残念ながら市民の所得、豊かさにつながっていません。

 本来これだけの観光客の方々にお越しいただいているのですから、ここで作った食品を、わざわざ輸送コストをかけることなく食べていただけるわけです。『おいしかったよ』といって販売拡大につなげていただける可能性があります。そこで、食品産業を成長産業の基軸と位置づけて、企業誘致、クラスター(産業集積地)形成にも取り組んできました。秋田牛ブランドの拠点づくりなども進めています」

 市長の意気込みに呼応するように、市役所だけでなく、新たにチャレンジしようとする事業者も集まってきている。

 遠く離れた東京都港区赤坂でスペイン料理店「セルベセリア グランビア」を経営する金子裕二氏も、仙北市で新たな挑戦を試みる一人だ。看板メニューは自家製生ハム。金子氏は田沢湖高原で生ハム工房を運営して、年間1200~1500本の生ハムを生産しており、これをレストランでも提供している。金子氏の構想は、「生ハム工房をさらに拡大し、地場で豚の飼育・放牧から一貫して行ない、田沢湖周辺を生ハムの一大産地にしたい」というものだ。

 ただ、放牧を行なおうとしても、近辺には国有林が多い。日本の林野の3割を占める国有林の有効活用は、かねてより指摘されているが、現状では開発が厳しく規制されている。そこで金子氏は国家戦略特区を活用して規制改革を実現できないかと考え、市長に提案したのが一連の動きの起点にもなっている。金子氏は、力強く語る。

「観光を拡大するためにも、その土地のおいしい『食べ物』が欠かせません。国家戦略特区をばねに、皆で地域全体をもりあげていきたい」

 仙北市から提案された「国有林の民間開放」は、既に実現に向けて動きつつある。10月に臨時国会に政府が提出した国家戦略特区法案では、国有林野の民間貸し付けの対象面積拡大などが盛り込まれた。衆議院解散に伴って法案は廃案となったが、次の通常国会では規制改革が実現するはずだ。国の後押しで、仙北市の新たなチャレンジがさらに加速していくことを期待したい。

※SAPIO2015年1月号


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