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有料道路の民営化、規制緩和がもたらす功罪

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全国初となる有料道路の民営化、政府は認める方向で検討

政府は、愛知県が求めている全国初となる有料道路の民営化について、構造改革特区法を改正し、これを認める方向で検討しています。これは、規制緩和による成長戦略の一環で、アベノミクスの「第3の矢」に位置づけられるものです。

日本は、一部の欧米諸国と異なり、道路や空港、上下水道のような公共サービスを民間企業に運営させる仕組みの導入が遅れていました。しかし、数年前からの法整備等により、公共サービスの運営を民間に委託する、いわゆる「コンセッション方式」を採用できる環境が整ってきていました。

冒頭の有料道路の民営化の例でいえば、道路自体は公共財として引き続き愛知県が所有しますが、料金徴収、道路管理、サービスエリア(SA)の運営権などを民間企業に売却することになります。

自治体にも利用者にもメリットが生じる

愛知県の有料道路に関しては、通行料金やSAなどからの収入から人件費、道路整備費などの経費を差し引いても黒字の状態です。自治体は、こうした事業によって生じた利益を道路建設費の償還などに充てているわけですが、このような収益性のある事業について、例えば、民間企業が現在の黒字相当額を毎年支払うことで運営権を購入できるということになるでしょう。

自治体としては、従来通りの収益を確保できるだけでなく、民間企業のノウハウや企業努力により収益が増加した場合には、その収益を民間企業と自治体とで分け合うことで両者にとってメリットが生じます。

他方で、道路の利用者である市民の側にもメリットは生じ得ます。道路公団の民営化後、高速道路のSAなどについて、サービスや利便性の向上を感じている人もいるかもしれません。良質のサービス提供という側面では、自治体や道路公社よりも、多くのノウハウを持ち競争の中での経営感覚を有する民間企業に分があることは明らかです。有料道路の運営に民間のノウハウや競争原理を導入することで、付加価値が高まり利用者の利便性が増すことが想定されます。

企業が目先の利益拡大に走ると負の影響も

ただし、公共サービスがこれまで民間企業に開放されてこなかったことにも理由があります。道路や空港、水道などの社会インフラは、国民が生活をする上で不可欠な財産です。そのために、インフラ設備やサービス供給の安定性、継続性が強く要請されますし、場合によっては税金を投入してでも市民に対して安価にサービスを提供する必要性もあるでしょう。

民間企業が運営を行う以上、事業者としてできる限り利益を拡大しようとするのは当然です。企業が目先の収益拡大ばかりに目を向けた場合、不当な料金の値上げがなされたり、必要な道路整備がおざなりにされたり、最悪の場合、サービスの供給がストップしたりといった負の影響に対する懸念も否定できません。

そのため、今後、公共サービス運営の民営化を進めていくにあたっては、利用者である市民が長期にわたり安定的に安価で良質なサービスを享受でき、また、国全体の財産である社会インフラの維持・発展を阻害しない仕組みも併せて整備していく必要があると思います。

(永野 海/弁護士)

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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