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2014年、海外でのクリエイティブな音楽マーケティング・キャンペーンまとめ

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posted by Jay Kogami

マーケティング業界メディアが選ぶ、クリエイティブな音楽マーケティング・キャンペーン2014年版まとめ

広告/マーケティング業界向けのメディア「Advertiging Age」が選ぶ、2014年の音楽マーケティングが公開されましたので共有します。アーティストやレーベルが独自のアイデアを模索して、新しい手法で音楽をリスナーに届けるプロモーションのヒントになるかもしれません。

この3−4年で「音楽ストリーミングサーヴィス」に対する注目が世界的に高まっていますが、アナログレコードでのリリースも人気が高まるなど、音楽の聴き方の選択肢は拡大しました。これらの形式に人気が集まる一方でコアなリスナーはアーティストや作品との特別なつながりを求めています。斬新なアイデアでリスナーの注目を集め共感を高め、消費につなげる意味でも音楽マーケティングの重要性が高まっています。

音楽を聴くキッカケを作るために音楽マーケティングは必要不可欠になりました。これは、メジャーレーベルや有名アーティストだけにとどまらず、インディーズレーベルやインディーズアーティスト、さらにDIYクリエイターたちにとっても無視できない活動の一つとなっています。

ウータン・クラン:世界でただ一つのボックス・セット・リリース「Once Upon A Time In Shaolin」

「ルネサンス期」のパトロネージを彷彿させる、最新アルバムのリリース・キャンペーン。ウータン・クランはプロモーション用に、世界に一つしか無い高級ボックス・セットを製作しました。この銀のボックスは、世界中の王族やビジネスリーダーをクライアントに持つアーティストYahyaのハンドメイドによる彫刻アートがほどこされています。

ウータン・クランはこのボックスを世界中の美術館でアートエクシビションとして展示する世界ツアーを計画し、また最終的にはオークションする計画を明らかにしています。このプロモーションの発表は、従来の音楽メディアではなく、ビジネス系メディアの「フォーブス」での独占インタビューで行ったメディア戦略も、これまでとは違って注目を集めました。

ジェイ・Z&ビヨンセ:「On the Run」ツアー予告動画フィルム

ジェイ・Zとビヨンセは2014年は大規模な北米スタジアム・ツアー「On the Run」を行いました。初めてのジョイント・ツアーということでファンやメディアから注目の高いツアーのエンターテイメント性と世界観をチケット販売前にファンと共有するために、ロックネイション(ジェイ・Zのマネジメント・マーケティング会社)とParkwood Entertainment(ビヨンセのマネジメント・マーケティング会社)はツアーの予告動画を公開します。制作にはグラミー賞受賞映像監督Melina Matsoukasを迎えてドキュメンタリー形式の音楽PVを作り、ツアーのストーリーやビジョン、アートを動画で伝えることに成功します。

3分44秒の音楽PVには、ショーン・ペン、ドン・チードル、ジェイク・ギレンホール、ブレイク・ライブリーなどハリウッドスターが出演して、映画さながらの映像美でツアーへの期待値を高めています。現在までこの動画は再生回数1000万回以上を記録しています。

「On the Run」ツアーは80万人以上を動員しチケット(40ドル〜280ドル)は全てのスタジアムで数分で完売し、2014年で最も成功したツアーの一つになりました。

フー・ファイターズ:音楽ドキュメンタリー「Foo Fighters: Sonic Highways」

3年ぶりの新作となるフー・ファイターズの「Sonic Highways」のプロモーションでは、メディアとのエクスクルーシブなパートナーシップを実現させました。フー・ファイターズはアメリカのケーブルテレビHBOとパートナーを組み、ドキュメンタリー形式のシリーズ「Foo Fighters: Sonic Highways」を制作、アルバムに収録された8曲それぞれのタイトルに付けられた都市名にちなんで、8都市にまつわる8つのエピソードがオンエアされました。

監督はデイブ・グロールが務め、各エピソードにはシカゴやナッシュビル、シアトルなど各都市の音楽の歴史を振り返り、音楽関係者へのインタビューやスタジオ訪問が行われ、さらにフー・ファイターズとゲストミュージシャンによるアルバム収録曲のレコーディングの様子も紹介されます。音楽の歴史への理解、ローカルミュージシャンとのつながり、都市の音楽シーンへのリスペクトが込められたドキュメンタリーに仕上がり、ただのプロモーション用動画よりもエモーショナルでパーソナルな作品になっているのが特徴的です。

二プシー・ハッスル(Nipsey Hussle):100ドルのエクスクルーシブなミックステープ(2013年)

インディーズ系ヒップホップ・アーティストの二プシー・ハッスルは、新たに作ったミックステープ「Crenshaw」をdatpiff.comなどヒップホップ・コミュニティのダウンロードサイトにフリーで公開する代わりに、わずか1000個のフィジカルコピーを1個100ドルで、ロサンゼルスのポップアップストアで販売。世界初の100ドルミックステープとして注目を集め、24時間以内に全てが完売となりました。ジェイ・ZもCrenshawのコピーを100個購入したこともさらに話題を集める要因となりました。このエクスクルーシブなCrenshawキャンペーンは、アーティストやレーベルが行うプレミアムなデラックス・バージョンによるプロモーションに新たな視点を与えてくれました。ミックステープ販売の結果、ニプシー・ハッスルは10万ドルを稼ぎました。

トム・ヨーク:「Tomorrow’s Modern Boxes」BitTorrent Bundleリリース

レディオヘッドのトム・ヨークは、最新アルバム「Tomorrow’s Modern Boxes」の販売方法として通常のダウンロードストアを選ぶ代わりに、ファイル共有システムBitTorrentを使って、ファイルデータをバンドル販売する「BitTorrent Bundle」を選びました。

ユーザーは6ドル支払えば、BitTorrentサイトから音楽データを直接ダウンロードできます。BitTorrentは売上の10%しか受け取りません(iTunesなどは30%)。そのため売上の多くはアーティスト本人に還元されます。トム・ヨークのアルバムはBitTorrent初のペイゲイト付きBundle形式のリリースとなりました。

BitTorrentによるリリースにも関わらず、発売からわずか6日でダウンロード数は100万回を突破しました。

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テイラー・スウィフト:「1989」のSpotifyからの決別

テイラー・スウィフトは最新アルバム「1989」をリリースすると同時に、音楽ストリーミングサービスSpotifyから全ての楽曲を削除し、音楽は無料ではないことの主張を実践します。アルバムはリリース1週目で128万枚を売上げ、今年最大のヒットアルバムとなります。そしてSpotifyからの楽曲削除は、アーティストやレーベルが音楽に対して発言するキッカケをつくったと同時に、デジタル音楽サービスの可能性と音楽の価値に関する議論を活性化させました。

U2:「Songs of Innocence」の無料配信

アップルとU2が手を組み、最新アルバム「Song of Innocence」をiPhoneユーザーに無料配信したキャンペーンは、アップルのティム・クックCEO曰く「音楽史上最大のアルバムリリース」でした。発売前の限定配信、世界的なバンドU2の無料配信など注目を集める要素は揃っていました。しかし非U2ファンから自動でiPhoneに曲がダウンロードされることに対してのネガティブな意見が広がり、結果的にバンドへのネガティブなPRばかりが残りました。しかしこのキャンペーンも、世界5億人というユーザーに音楽を配信できるシステムとパワーを持つアップルが見せてくれた、音楽配信の新たな形と言えます。

FacebookやTwitter、YouTubeなどをプロモーションツールとして活用してきた音楽マーケティングですが、アーティストの世界観や作品のストーリーをファンに届け、共感を得るためには、ソーシャルメディア活用以上のクリエイティブが必要です。これは、どの規模のアーティストやレーベルにとっても言えることで、誰にどのように音楽を知ってもらい手にしてもらえるかを考え、どのコンテンツを作り届けるかを、戦略的に設計する必要があります。

ここで紹介されたアーティストのキャンペーンは、フィジカルな手法もあり、オンラインでの手法もあり、新しいアプローチもあれば従来のマスメディアと組む場合もあり、やり方の選択肢に限界はないことを示してくれます。

音楽マーケティングやプロモーションに興味のある方は、今回ご紹介した事例や海外でどのようなアプローチが行われているか事例を研究されると、今後に活かせるヒントに出会えると思います。

■記事元http://jaykogami.com/2014/12/10220.html

記事提供All Digital Music

Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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