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法案提出権確保の共産党は「何でも反対」以上の何ができるか

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 今回の衆議院選挙は戦後最低の投票率を記録した。果たして投票率が高ければ反自民の勢力は伸張したのだろうか。コラムニストのオバタカズユキ氏が考える。

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 衆議院総選挙の投票率52・66%、戦後最低記録を更新。非難を覚悟のうえで正直なところを書くと、私はこの数字を最初に見たとき、思わず「惜しい!」と舌打ちした。あと3%弱落ちれば、40%台になったからだ。

 新聞の見出しを思い浮かべても、「戦後最低記録」より、「投票率50%割れ」のほうがインパクトはでかい。もしそうなったら、こりゃマジやばいという空気が濃厚になり、この国の議会制民主主義はもう機能不全に陥っているのではないか、というラディカルな問いが生れ、日本人のオカミ任せな政治意識が変わるきっかけになったかもしれない。

 もちろん、ラディカルなら何でもいいわけではないし、では、代わりにどんな制度がありえるのかと問い返されても、これといった答えを持っているわけじゃない。でも、50%割れなら、それで自民党が大勝したとしても、「半分以上の有権者が参加しなかった選挙の結果に過ぎない」という批判が何度も繰り返されることで、彼らの暴走に対する牽制力に少しはなりえるのではないか。なりえるなら、その様子を見てみたいと私は思ったのだ。

 だが、多くの人々は、こんな私の戯言を相手にしようともしない。せいぜいのところ、主にリベラルサイドの真面目な方々から、「キミのような無責任な人間がいるから、組織票に守られた与党の時代が続くのだ」とお叱りを受けるぐらいである。そう見られることは、長年、積極的棄権を続けてきた者としてとっくに承知している。

 たしかにこのコラムの書き出しにおける私の態度は、スポーツゲームを寝ながら楽しむ観客のように当事者性が薄く無責任だ。けれども、ならば、投票率が上がることでリベラルサイドに有利な選挙になるかというと、それもまた別の話で、むしろ今回の総選挙の結果に真正面から向き合うなら、「投票率が低かったからこの程度で済んだのかも」と考えてみるべきではないか。

 たしかに自民党は勝った。が、獲得議席は選挙前の293から2減らして291へ。ほとんどのマスメディアが「大勝」「圧勝」と言うからそんな気になりやすいのだが、自民党の議席数そのものは微減したのである。

 ここで、組織票の塊のような公明党は31から35へと議席を伸ばしたじゃないか、と「選挙に行こう」推進者からの批判の声が挙がるだろう。たしかにそうなのだが、それを言うなら、同じく組織票の権化みたいな共産党が8から21に躍進したのはなぜか、という話にもなる。

 今回の選挙で共産党があんなに伸びるとは、共産党員だって予想していた人は少なかったはずだ。なぜ躍進したか。これは専門家の分析を待つまでもなく、与党に批判的な浮動票の受け皿となった結果である。自公の独走を嫌う有権者のうちのけっこうな割合が、投票所に向かい、とにかくアベ的なものに徹底してダメを出す共産党に一票を入れたのだ。

 その結果、予想外に票が集まり、共産党は法案提出権を確保することに成功。国会議員が法案を作って衆議院の国会で発議するためには20名の賛同者を必要する、というきつい縛りがあるのだけれど、共産党はついにそこから解き放たれた。何でも反対するだけでなく、自ら主体的にどんな法案を共産党が出せるのか。国会を混乱させる以上の何ができるか、これから注視だ。

 党首が落選して、しょぼしょぼ感が漂う民主党も、選挙前の議席数62から73へと勢力を少しだけ回復させた。日教組や連合などの組織票がどれほど効いたか、効かなかったかは、もう少し経ってから調査結果を見ないと分からないが、もともとは浮動票頼みの性格が強いとされていた政党である。でも、投票率が下がったのに議席は増えた。

 共同代表の橋下徹氏が立候補せず、一昔前の追い風がまったく止まったとされた維新の会だって、42から41へ。それこそ浮動票が命の党なのに、投票率減でも議席はほぼ現状維持できた。

 で、各党とも予想以上にいい結果を残したり、それなりだった中、選挙前の議席数19から2へと、壊滅的な結果に終わったのが次世代の党だ。もうこの党のことは、そう遠くない将来に国民の記憶から消えそうだから記録しておくと、次世代の党は政党「日本維新の会」から石原慎太郎グループが抜け出して、今年の夏に設立した新党である。思想や政策は、安倍自民党より右寄り。リベラルサイドからしたら猛禽類の集まりのような党だ。そこが有権者から徹底的に避けられた。

 なぜ次世代の党は惨敗したのか。諸説あるようだが、最大の理由は「投票率が低い選挙だったから」だと私は思う。当選したのは、岡山3区の平沼赳夫党首と熊本4区の園田博之元官房副長官のみ。比例代表では1人も当選していない。田母神俊雄元航空幕僚長や西村信吾元防衛政務次官などを擁立し、ネット保守やネット右翼の人気を集めるかとも思われたのだが、その層はリアルでさほど動かなかったようだ。

 できたばかりの党なので、あくまで推測にすぎないが、もしも今回の選挙の投票率が高かったら、次世代の党はここまでボロ負けしなかったのではないか。前回の都知事選では、田母神氏が20代の投票者の24%の票を集めた。年配者には人気がなく、若い世代ほど彼を支持した。

 投票率が低かったのは、解散した当人自ら「アベノミクス選挙」と名づける争点がよくわからない選挙だったからだ。ところが、これが「憲法改正」や国防に関するテーマで争われる選挙だったら、都知事選で田母神氏に票を投じた層も動いたことだろう。安倍自民党はもっと票を集めただろうし、それじゃ「物足りない」層は、自民党より右寄りの政党を支持、正義を遂行する者として次々と投票所に向かった可能性が否定できない。

 そういう意味において、「選挙の投票率は高いほどいい」≒「投票率が上がればラブ&ピースな世の中の実現に近づく」的なお花畑思考をまだまだしているリベラル層は、世の中そんなに甘くはないことを、思い知るべき総選挙だったと言いたい。

 ちなみに私は、今回の総選挙できちんと投票をした。小選挙区は死票にしたくなかったから自民党と民主党の候補者で迷い、自民党のほうは大物の地盤を引き継いだ元リクルート社員の若手というだけで何のメッセージ性も伝わってこなかったので、民主党候補のほうがまだマシだと思って入れた。結果は、入れたほうが落ちた。ちょっと悔しかった。

 比例代表はどの党の政策も気に食わず、棄権も考えたが、どうせならということで、腰の引けたマスコミが増えている中、権力のチェック役としての共産党に入れた。躍進したが、実は政策も体質も自分には合わない党なので、選挙後に彼らが喜んでいる姿を見てもあまり気分はよくない。ただし、共産党の議席がある程度確保されることは、国会という生態系のバランス維持にとって有意義だと思っている。

 それに、これまでのように積極的棄権をしたら、「ちぇっ、戦後最低記録といっても半分以上は投票しているじゃん」と疎外感をこじらすだけだっただろう。無理矢理でも投票に行ったことは、個人的に良かったと思っている。


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