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今週の永田町(2014.12.14~17)

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【与党、衆院選で3分の2以上の議席を維持】

今週14日、第2次安倍内閣の約2年間の政権運営などをめぐって与野党が争った第47回衆議院選挙の投開票(小選挙区295議席、比例代表11ブロック180議席)が行われた。今回の衆院選では、一票の格差を是正するため、小選挙区定数5議席(山梨、福井、徳島、高知、佐賀)が減った。

 

自民党は、291議席(無所属の当選者1名の追加公認を含む)を獲得した。公示前勢力から4議席減らしたが、国会運営で主導権を握ることができる絶対安定多数(266議席)を引き続き単独確保した。議席数に応じて野党に委員長を割り振るのが慣例となっているが、単独で絶対安定多数を確保することで、衆議院常任委員会(17)の委員長職を独占し、全常任委員会の委員職も過半数を送り込むことができる。

与党では、公明党の35議席(+4議席)を合わせて326議席となり、全議席の3分の2以上を維持した。これにより、参議院で否決された法案などを衆議院で再可決・成立させることができる。

 

これにより、安倍内閣の継続が事実上、確定した。安倍総理は、15日、谷垣幹事長ら自民党執行部を留任させる意向を表明した。また、山口・公明党代表と党首会談を行って、連立政権の継続を確認のうえ、与党としてめざすべき政策の優先事項を列挙した連立政権合意文書に署名した。アベノミクス推進による経済再生や、地方創生や女性活躍などへの取り組み、軽減税率を消費税率10%へ引き上げる2017年度から導入することをめざすなど、8項目19点の政策を優先事項としている。

 

 一方、自民党優位の「1強多弱」打破を訴えた野党側は、準備不足や低投票率などが影響して、各党とも議席を積み上げることができなかった。野党間の候補者をすみ分ける選挙区調整も一部でしか実現できず、過半数以上の対立候補を擁立することができなかった。

民主党は、73議席(+11議席)を獲得したが、海江田代表が議席確保できなかったうえ、総理・閣僚経験者も小選挙区で落選するなどしたため、敗戦ムードに包まれた。15日、落選した民主党の海江田氏が代表職を辞任した。これを受け、民主党は、党員・サポーターも投票する代表選を、来年1月下旬までに行う実施する予定でいる。

このほか、維新の党は41議席(-1議席)、次世代の党は2議席(-17議席)、生活の党は2議席(-3議席)へと後退した。社民党は、辛うじて公示前の2議席を維持した。

 

 他の野党が苦戦したなかで、自共対決を前面に打ち出した共産党は、21議席(+13議席)と倍増させた。無党派層を含めて政府・与党批判の受け皿となり、比例票を幅ひろく集めたほか、18年ぶりに選挙区(沖縄1区)でも勝利した。21議席を獲得したことで、党単独で予算を伴わない法案提出権を確保することとなった。経済政策や原発政策などで安倍政権との対決姿勢をさらに強めていく構えで、国会での野党共闘にも意欲を示している。

 

 

【経済対策の策定、補正予算案の編成に着手】

来週24日には、特別国会(~26日)が召集される。第2次改造内閣の総辞職、衆議院本会議での正副議長選出後、衆参両院本会議で首班指名選挙が行われ、安倍総理が第97代総理大臣に指名される予定だ。同日中に第3次安倍内閣が発足する見通しだ。

安倍総理は、第2次改造内閣発足から約3カ月しかたっていないことや、政策の継続性を重視する観点から、全閣僚を再任させるようだ。また、個人消費の底上げと地方の負担軽減などを柱とする緊急経済対策の策定と、それを裏付ける補正予算案の編成、衆院選で大幅にずれ込んだ来年度予算の編成などの作業を遅滞なく進めていくためにも、内閣改造・党役員人事で政治空白をつくるべきではないと判断したようだ。

 

当面、1年半延期した消費税率10%への引き上げにも耐えられる経済の好循環をいかにつくっていくことができるかが、安倍内閣の最重要課題となっている。安倍総理は、約2年間の政権運営とアベノミクス継続が衆院選で信任されたとの認識で、引き続き経済最優先の政権運営を行い、デフレ脱却とアベノミクス推進に全力を尽くす姿勢を打ち出している。そして、「景気回復の暖かい風を全国津々浦々に届ける」としている。

 ただ、景気回復の足取りが芳しくない状況だ。このことから、今月26日にも緊急経済対策、来年1月9日にも補正予算案を閣議決定する方向で、一連の作業が進められている。

 

 緊急経済対策は、当初、低所得者向けの現金給付やガソリン・灯油購入費の助成、子育て世代の家計支援、急速な円安に伴う燃料・原材料高に苦しむ中小企業の資金繰り支援、エコポイントの復活も含めた住宅購入促進策、学校や橋の耐震化・災害対策などを柱に、約2兆円規模とする方針だった。

アベノミクスの恩恵が地方に行き届いていないとの声に配慮して、安倍総理が重要課題に位置付ける「地方創生」分野を充実させるべく、3兆円規模に上積みすることが検討されている。地方創生分野の施策として、自治体が自由に使える交付金創設と地方自治体が配る地域商品券の財源手当てなどが盛り込まれるようだ。

 

 

【並行して来年予算案の編成も】

また、景気を下支えするためにも補正予算案と一体で切れ目のない予算執行を進めるべく、来年度予算案の編成も並行して進められている。今月30日にも来年度予算案の前提となる与党税制改正大綱を決定し、来年1月14日に来年度予算案を閣議決定する予定だ。そして、1月下旬に召集される通常国会に、補正予算案と来年度予算案を提出する。また、予算関連法案として、消費税率10%への引き上げ時期を1年半先送りするための税制改正法案も提出する予定だ。

当初、自民党・公明党の税制調査会は、与党税制改正大綱を1月9日に決定することで合意していた。ただ、来年4月12日・26日に統一地方選(都道府県・政令市の首長、地方議員)が控えていることもあり、与党候補を後押しするためにも、遅滞なく執行ができるよう予算の年度内成立は必須との見方が出たため、決定時期を前倒すこととなった。

 

 与党税制改正大綱では、法人実効税率(現在、約35%)の引き下げ幅について焦点となっているほか、2014年末に期限を迎える不動産取得税の軽減特例の延長、ふるさと納税制度の控除上限額の倍増と手続き簡素化のほか、若手世代への資産移転を後押し消費促進・子育て支援の強化を図るための贈与に係る新制度の導入などが検討されている。

贈与関連では、2014年末に期限を迎える住宅資金贈与の非課税枠を最大1500万円に拡大のうえ延長する。また、再生可能エネルギー関連機器の購入費用の贈与を非課税にする「緑の贈与税制度(仮称)」の2015年度から導入される予定だ。さらに、2015年度から3年間、祖父母や親が信託銀行などの金融機関で子や孫の名義で口座開設して結婚・出産・子育て用の資金を一括で預け、子や孫が使用した分の贈与税(1人あたり1000万円まで)が非課税となる制度を2015年度に導入することなども検討されている。

 

政府・与党は、2月中旬に補正予算を成立させ、年度内に来年度予算と予算関連法を成立させるシナリオを描いている。ただ、予算審議の日程は窮屈なものとなる見通しで、国会審議の行方次第では来年度予算の成立が4月以降にずれ込む可能性もある。

特に、消費税率10%への引き上げ時期を1年半延期するための税制改正法案をめぐって、与野党が対決しかねないからだ。安倍総理は、経済情勢が悪いときに消費税率引き上げを先送りできる景気弾力条項(付則18条)を削除する意向を示しているが、民主党や維新の党などは同条項の削除に強く反対している。

政府・与党は、来年度予算の年度内成立ができなかった場合でも、暫定予算を編成したうえで、4月12日までには成立させる方向で国会審議を進めていきたいとしている。

 

 

【地方創生の長期ビジョンと総合戦略、年内取りまとめへ】

このほか、政府は、「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長:安倍総理、副本部長:菅官房長官、石破地方創生担当大臣)を27~29日の間に開催して、2060年に人口1億人程度の維持を見据えた展望を示す「長期ビジョン」と、地方での魅力ある雇用創出や結婚・出産・育児の環境整備などを着実に実施するよう客観的指標を盛り込む平成27年度からの5カ年計画「総合戦略」を12月中に取りまとめる方向で調整する。

当初、12月上旬にも総合戦略と長期ビジョンを取りまとめる予定だったが、衆議院解散・総選挙によりスケジュールがずれ込んだ。その影響を最小限に抑えるべく、年明け以降に取り組みを加速させていくとしている。

 

今後5年間の国の施策の方向性や基本目標を示す総合戦略には、地域活性化や少子化対策など自治体の取り組みを支援する新たな交付金創設の検討を明記するほか、企業の地方移転を促す法人税の優遇措置なども盛り込まれる予定だ。

 新たに創設する交付金は、2015年度中に都道府県・市町村が策定する「地方版総合戦略」に盛り込まれた事業を財政面で後押しするもので、補正予算案でその財源を計上する予定となっている。自治体に交付金の自由な活用を認める一方、その事業の政策効果を検証するしくみを導入するよう求めている。

 このほか、地方移住の関連情報を一元的に提供する全国地方移住促進センター設置、政府関係機関の地方移転促進、都市住民が過疎地などの活性化に取り組む地域おこし協力隊の隊員を2020年までに4000人に拡大なども盛り込まれるという。

 

 

【政府・与党内での検討動向に注目】

 来週24日の第3次安倍内閣発足を前に、政府・与党は、緊急経済対策の策定とそれを裏付ける補正予算案の編成、与党税制改正要綱の取りまとめ、来年度予算案の編成などの作業が急ピッチで進められている。また、地方創生の長期ビジョン・総合戦略の取りまとめに向けた動きも加速している。

このほか、今年7月に閣議決定した憲法解釈変更による集団的自衛権の限定行使容認を含む安全保障法制の整備に向けた動きも本格化する。自民党と公明党は、近く与党協議を再開し、議論を加速させていく方針だ。

 予算編成と経済対策の策定のほか、地方創生、安全保障法制など重要課題の検討・取りまとめ作業が政府・与党内で活発に進められている。どのような政策が検討されており、最終的にどう決まるのか。それぞれの政策動向についてきめ細かくウォッチしておくことが重要だろう。

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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