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マグロ養殖に志願者日本一 近大にビジネスのヒント多数あり

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 作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏にとって、「近大」の取材は驚きの連続だったという。今、最も勢いのある大学のひとつとされるのはなぜなのか。

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 あの「近大マグロ」を気軽に食べることができる時が、いよいよ到来した? 12月1日、即席カップ麺「近畿大学水産研究所監修 近大マグロ使用 中骨だしの塩ラーメン」がコンビニやスーパーで発売されたとたん、人気に火がついた。

「150万食の販売が目標でしたが、この勢いだと年内に売れ切れてしまうかもしれません」と担当者は慌て気味。「近大マグロ」への関心の高さからなのか。

 ご存じ、「近大マグロ」とは近畿大学が世界で初めて完全養殖に成功したクロマグロ。その「近大マグロ」を提供しているのが、料理店「近畿大学水産研究所」(大阪と東京の二店舗)。連日行列ができてランチはたちまち売れ切れ、夜の予約は1か月先まで埋まっている。つまり、「近大マグロ」に興味はあっても、そうそう簡単には食べられない状態なのだった。

 今回のカップ麺が、「一度は味わってみたい」という多くの人々の好奇心に「刺さった」、ということかもしれない。

 それにしてもなぜ、「近大マグロ」がカップ麺になったのか。「近大マグロ」は希少価値が高いから皮も身もすべて料理に使う。しかし、骨だけは廃棄せざるをえなかった。「惜しい」と考えた近大水産研究所。エースコックに再利用の検討を要請し、今回の商品化が実現したという。

 中骨からエキスを抽出してカップ麺に活用することで、「捨てることなく全てを食べ切ることができ資源利用・保護にもつながります」。利に適ったコラボ。「長い時間をかけた研究成果の近大マグロを、手軽に味わっていただきたい」と関係者は意気込む。

 さて、そのお味は? クロマグロの中骨を炊き出した塩味のスープ。さっぱりしているわりに、奥行きのある旨みとコク。食べ終わるとふと、カップ麺のフタの裏側に目がいく。「卒業証書」とある。

「あなたは近畿大学の水産研究所養殖過程を優秀な成績で卒業され、お客さまの舌を唸らせる近大マグロエキスに加工されたことをここに証します」

「近大マグロ」の証としての卒業証書だ。シャレが効いている。

 実は、近大から生まれ出たマグロの「異種」は、カップ麺だけではない。一冊の書籍『なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか』(光文社)。ひょんなことから、この私自身が取材し執筆することになった。

 正直に言って、東京生まれ東京育ちの私にとって「近大」なんてほとんど知らない大学、遠い存在だった。国立大学か私立かすら、判別がつかなかった。

 ある日、小学館の月刊誌『SAPIO』で連載中の「ヒット商品は主張する」において、「近大マグロ」を取り上げることに。取材のために、近大マグロを育てている和歌山県串本町の研究所へ足を運んだ。海上に浮かぶ巨大なマグロの生簀(いけす)。苦節32年、血の滲む努力の結果、「困難」とされてきたクロマグロの養殖技術を確立した、その現場を取材した。 

 取材の中で、私は初めてもう一つの事実を知ることになる。近大の入試志願者数が「日本一」だという、びっくりするようなことを。

 1位? 早稲田や慶應、上智といった首都圏人気私立大学や関西の「関関同立」をも抜いて、全国トップの志願者数を獲得している? 4年間連続して1位だった明治大学は、不覚にも近大に首位の座を譲ることになったと聞いた。

 まさか、本当に? いったい、なぜ? 近大が志願者数日本一になったのには、どんな「理由(わけ)」があったのだろうか。

 難しいとされてきたクロマグロの養殖技術を、32年間の努力の積み重ねで達成してしまったように、志願者数日本一になったということも、近大の取り組みの中に明快な理由が横たわっているのだろうか。その「理由」を探しに、私は再び近大キャンパスへ取材に入った。

 マグロの完全養殖、行列ができるレストランの経営、カップ麺に志願者数日本一。イキのいい成果を次々に生み出していく近大のパワー。何が源泉なのか。

 探っていくうちに、私は気付かされた。これは、大学経営だけの話ではない。少子化社会の厳しさの中を生き抜くためのビジネスのヒントがいくつも隠れている、と。ビジネスの現場を取材し、「ヒット商品は主張する」という記事を月刊誌に連載している私が、近大についての本を書くことになったのには、たしかに「理由(わけ)」があったのだ。


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