城繁幸、やまもといちろう、宮台真司が「非正規格差がカワイソウなら、正社員の待遇下げろ」で一致

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城繁幸、やまもといちろう、宮台真司が「非正規格差がカワイソウなら、正社員の待遇下げろ」で一致

12月14日に行われる衆議院選挙を前に、TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」が有識者を集め、5つのテーマについて連続鼎談を放送した。「景気」「国防」「高齢化」「女性活躍推進」に続く最終日のテーマは「雇用」だった。

12日の放送には、コンサルタントの城繁幸氏と、投資家でブロガーのやまもといちろう氏、それに番組レギュラーでもある社会学者の宮台真司氏の3人の論客が参加し、日本雇用の展望について議論した。特に熱を帯びたのは「終身雇用」に論が及んだ部分だ。
宮台氏「能力のないやつに給料を与え続けるのは反公共的」

今回の選挙戦では「アベノミクス検証」が中心とされ、重要な政策課題である「雇用改革」に言及されることは少ない。しかし都市部で働く人々にとっては、最大の関心事といってもいいだろう。ラジオで紹介された街の声でも、正社員はボーナスや時間外手当が出るのに、アルバイトには一銭も入らないと不満を漏らす人がいた。

この問題に対して、民主党のテレビCMのように「夢は正社員」という理想に向かうべきという論調もある。しかし投資家のやまもといちろう氏は、ボーナスや終身雇用といった正社員の恵まれた待遇は「そもそも幻想だったんでござる」と断言した。

「いつまで高度経済成長の気持ちでいるんだ、って話。これからは同じ会社に何年もいられるとは限らない、という人生設計じゃないと難しいと思います。たとえば住宅ローンを組むとか、いい加減にしろって話ですよ」

そして、これからは正社員と非正規雇用の垣根がなくなり、「正規雇用の側が非正規雇用の側への(待遇の)引き下げ」が起きるという。不合理な格差を解消するために正社員化が進むのではなく、正社員の一部が非正規に近づいていくということだ。

社会学者の宮台真司氏も、終身雇用にしがみついて働かない正社員の存在は、高度経済成長時代の短期間を除けば「許されるものではない」と手厳しい。

「温情とか仲間意識をベースにして、能力のない足を引っ張っている連中に席と給料を与え続けるのは『バカ左翼』のやること。そんなことをしていると、会社が沈んでいくんですよ。反公共的なんです」

城氏は「プロ意識」と「セーフティネット」を強調

終身雇用を否定する論調の中で、司会の荒川強啓氏は、会社に愛情を持ち生きがいを求めて会社の発展に貢献するために身を粉にして働くことは「意味がないってことですか?」と疑問を投げかけた。

これに対して人事コンサルタントの城繁幸氏は、「忠誠心とプロフェッショナリズムは別」と指摘。個人は解雇されたら、別の会社にスキルを売ってお金を稼ぐのが「プロ」だという。

これからのビジネスパーソンは、スキルを磨いて「プロ」になるしかなく、全員がいままでの正社員のような働き方をするのは「もう全然ムリ」だという見方を示している。

「会社に入れば年金支給開始まで面倒を見てもらえたのは、たまたま恵まれた一部の方だったというだけ。皆でこれを目指し、企業に強制しようとすると、企業は海外に拠点を移して失業者が増えるだけです」

そのような厳しい実力主義の世界を提示する一方で、城氏は「多くの人が安心できる時代にあった政策やセーフティネットを作るべきだ」と主張する。たとえば病気や介護で離職した際でも復活できる「ブランクが問題にならない、流動的な労働市場を実現する政策」がいいのではと提案した。
やまもと氏「再出発を社会が応援するEUに学べ」

セーフティネットのあり方について、やまもと氏はEUの事例を挙げ、「(時代にあったスキルアップができるような)離職者への職業訓練」や「(同じスキルであれば)他の会社でも同じ待遇が得られるようにする」といった議論に日本でも取り組むことが大事だという。

「ハローワーク通ってると、指さされたりするじゃないですか。あの人クズだよねみたいな。でもその人にとっては再出発なんだと。それをどう社会が応援するのか? というふうに皆が変わっていかなければいけない」

宮台氏は「フェア(公平)であること」が重要だと強調し、同じ仕事に対して同じ賃金が支払われる社会が実現すれば、正規雇用者の賃金が下がり、非正規雇用者の賃金が上がる制度が望ましいとした。

「城さんが3年位前に、非正規雇用が問題なのではなく『正規雇用が存在するのが問題』という本を出した時に度肝を抜かれましたけど、いまこういう議論ができるというのは、随分と世の中が変わったということです」

非正規社員の格差の問題が、正社員の座を脅かすとは思っていなかった人もいるかもしれない。特に20代から30代前半の若いビジネスパーソンたちは、いつか他の会社に移ることを想定しながら、自分なりの強みを磨いていくしかないのだろう。

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