痴漢を疑われたら…取るべき適切な行動は?

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痴漢を疑われたら…取るべき適切な行動は?

痴漢冤罪被害は、誰にでも起こり得る

電車内で女性に痴漢をしたとして京都府迷惑行為防止条例違反に問われた同府内の40歳代の会社員男性に対し、京都地裁は無罪判決を言い渡しました。

痴漢冤罪被害は、誰にでも起こり得ることです。平穏な生活を送っていたはずなのに、ある日、突然、やってもいない痴漢の犯人として逮捕されてしまい、気づいたら有罪判決。会社はクビになり、家族は離れていく。

こんなことにならないために、痴漢を疑われた場合に取るべき適切な行動についてお話しします。

「とにかく逃げろ」は逮捕されるリスク増加

電車に乗っていて、女性から「この人、痴漢です」と腕を捕まれた場面を想定します。気が動転してしまうかもしれませんが、まずは毅然とした態度で「していない」ということを伝えてください。また、できることなら女性や周りの人(中には目撃したという人も現れるかもしれません)とのやり取りを携帯電話で録音しておくと良いと思います。当初から一貫して痴漢容疑を否定していたという事情は、後の裁判の際にも有意義です。

痴漢冤罪の対処法として「とにかく逃げろ」と説明する専門家もいますが、私はお勧めしません。もちろん、それで逃げ切れれば結果オーライかもしれません。しかし、このご時世、いたるところに防犯カメラがありますし、もし取り押さえられてしまえば、「痴漢をしたから逃げたんだ」という印象を与えてしまいます。また、逮捕されるリスクも増加します。

逮捕された場合は、できるだけ早急に弁護士を呼ぶ

痴漢行為を否定したにもかかわらず、駅員や警察が駆けつけ現行犯逮捕となってしまった場合でも、必ず「やっていない」という言い分を貫いてください。そして、できるだけ早急に弁護士を呼ぶよう伝えてください。知り合いに弁護士がいれば、その人に連絡を取るよう警察官に伝えましょう。もし、知り合いに弁護士がいなくても、「当番弁護士」を呼ぶように伝えてください。

そして、弁護士が来るまで供述調書は作成しないようにしてください。当番弁護士は、出動要請があると1回に限り無料で原則24時間以内に弁護士が会いに来てくれるという制度です。家族や勤務先への対応も、ある程度はこの当番弁護士がやってくれるはずです。しかし、継続的な対応はできませんので、勾留されてしまえば弁護人を選任するようにしてください。そして、勾留に対し準抗告を申し立てて身柄の釈放を求めてください。

もし、あなたの言い分が「その女性に触れていない」というものであれば、駆けつけた警察官に対して繊維鑑定を要求するという方法も適切です。繊維鑑定と は、触られたと主張する女性の衣服(下着等)の繊維が犯人扱いされているあなたの手に付着しているかどうかを調べるものです。鑑定の結果、女性の主張が間 違いだったことが判明すれば、不起訴となる可能性があります。

取調官に自白調書を作らせない。取り調べの可視化要求も効果的

逮捕勾留され、容疑を否認していると取り調べは厳しいものになります。想像してみてください。ただでさえ狭い取調室で腰にひもを結ばれ椅子に括り付けられた状態で、最長一日8時間、23日間、あなたを痴漢の犯人だと決めつけている人と面と向かって座っているだけで気がおかしくなるような状況です。その上、取調官によっては、「認めればすぐに帰れる」「家族にもこれ以上迷惑かけたくないだろ」「会社クビになっても良いのか」などと違法な取り調べを行う人もいるかもしれません。

しかし、自白調書を作成してしまえば、あとで裁判になった際に覆すことはほぼ不可能です。あなたの冤罪を晴らすためにできることは、取調官に自白調書を作らせないことです。取調官に違法な取り調べをさせないために、「取り調べ状況を可視化(録画録音)してくれないと何も喋らない」と言うことも効果的です。

具体的な状況によって対処法は変わってくると思います。とにもかくにも冤罪で逮捕されたらまずは弁護士を呼ぶ。弁護士と相談するまでは調書にサインしない。これらをしっかりと守ってください。

(河野 晃/弁護士)

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