歩道とガードレール、頼めば設置してもらえるの?

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歩道とガードレール、頼めば設置してもらえるの?(写真撮影:嘉屋恭子)

小さな子どもを連れて歩いているとありがたさを実感するのが、歩道とガードレールが整備されていること。でも、住宅街などでは歩道がない道路もあり、ひやっとした経験がある人も多いはず。では、歩道とガードレールは頼めば設置してもらえるのだろうか? 整備されている道路と、されていない道路の違いとは? 身近なギモンを横浜市に聞いてみた。市民の要望があれば、歩道やガードレールが設置されることも

ひと口に道路といっても国道や県道、市町村道路までさまざま。ただ、多くの国道や幹線道路ではほぼ歩道が整備されている一方で、生活道路と呼ばれるような小さな道路、路地では歩道がある道路は少ないようだ。実際に横浜市の場合、管理する一般市道と呼ばれる道路のうち、歩道がある道路は2割に満たない(図1)

【図1】横浜市の資料をもとに筆者作成

【図1】横浜市の資料をもとに筆者作成

では、利用者が多い道路にもかかわらず、歩道やガードレールがない場合、要望することで設置してもらうことはできるのだろうか。

「歩道やガードレール、またはカーブミラーを設置してほしいというリクエストは、学校やPTAなど、多方面からあがってきます。ただ、財源は税金ですので、本当に必要かどうかの調査も行いますし、他地域との公平性を保つ必要もあるので、必ずしも設置できるわけではありません」というのは、横浜市道路局施設課担当係長の矢口さん。

つまり、時間はかかるものの必要と認められれば歩道もガードレールも、設置してもらうことが可能なようだ。また、近年、通学路で事故が多発していることを受け、「市内の小学校近くの重点箇所(21カ所)で歩道の整備を進めています」(矢口さん)という。しかし歩道の整備といっても、歩道をつくるための土地はどうするのだろうか。

「街ができあがってから歩道を整備するのは容易ではありません。すでにお住まいの方などと交渉が必要になりますが、行政が買い上げるのは歩道分の土地のみ。場合によっては応分の補償をしたうえで建物を壊す必要もありますし、粘り強く交渉してお願いします」と矢口さん。

特に歩道部分が分譲マンションなどに該当してしまうと、住民全員の同意が必要になり、膨大な手間が必要となる。想像しただけで胃が痛くなりそうな仕事だ。ちなみに歩道を整備するのに必要な日数と費用を聞いてみたところ、

「歩道の整備に必要な日数は、距離にもよりますが早くても4年〜6年程度、長ければ10年くらいかかることもあります。金額ですが歩道整備にかかる物理的な目安はありますが、用地買収にかかる費用がさまざまなので条件が異なるため、一概には言えません」(矢口さん)

ちなみに、ガードレールは「川沿い」「崖地」などには設置しなさいという指針はあるものの、明確に「ここに設置する」という基準はなく、「危険そうだな」と多くの人が考える場所に設置しているのだという。

「ただし、歩道が整備されている道路では、歩道と車道に15cmの段差があるので、基本的に道路を走っている車は乗り越えられないんです。ですからガードレールがあるとより安全に感じますが、それは感覚的なもののようです」と教えてくれた。

【画像1】歩道があっても十分な幅員がなく、人が車道にはみだしてしまうことも(写真撮影:嘉屋恭子)

【画像1】歩道があっても十分な幅員がなく、人が車道にはみだしてしまうことも(写真撮影:嘉屋恭子)どうして歩道が整備されていない道路があるの?

さらに歩道のある道路とない道路の違いを聞いてみたところ、「実は明確なコレという基準はないんですよ」(矢口さん)と前置きしつつも「道路はかつて農業道路として使われていた道だったり、人馬や荷車が行き来してできた道だったりと、自然発生的にできたものが多いんです。横浜市のように戦後、急激に都市化が進んだ街ではこうした道路が整備されたため、歩道の整備が追いつかなかったんです」と解説してくれた。

そして歩道とガードレールの整備に影響するのが、宅地の開発許可だという。一般に100棟、200棟といった大規模開発、横浜市でいうと港北ニュータウンのような開発なら、都市計画が徹底され、道路にも他エリアとつなぐ主要道路、子どもが通学路で利用する道路などと性格付けられ、主要道路には歩道とガードレールを整備する『歩車分離』が徹底できるが、小規模開発だとこうはいかないという。

「宅地開発で整備する道路が幅員8.5m以下なら、歩道の整備がなくても開発許可はおります。小規模開発が各地で随時行われた結果、道路を利用する人は増えたのに歩道がない道路が増えていった背景があります」と矢口さん。すべての道路に歩道やガードレールが整備されている必要はないものの、歩行者の数と道路の規模・整備が吊り合っていないと、やはり安全な道路とは言いがたいようだ。

また、近年、生活道路の安全性を高めるものとして、注目を集めているのがカラー舗装だ。道路にアクセントをつけることで車がスピードを落とすため、交通事故を抑制する効果が認められている。用地買収なども不要なので、最短で次年度に整備することもできるという。

できてしまえば当たり前になってしまうが、なければ不便さや怖さを感じる歩道&ガードレール。あらためて都市計画の大切さと難しさを実感する取材となった。

【画像2】住宅街にあるカラー舗装。視覚に変化をもたらすため、車がスピードを落とし、交通事故を抑制する効果があるそう(写真撮影:嘉屋恭子)

【画像2】住宅街にあるカラー舗装。視覚に変化をもたらすため、車がスピードを落とし、交通事故を抑制する効果があるそう(写真撮影:嘉屋恭子)
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/12/12/74937/

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