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鉄腕アトムのような未来がやってくる!? 「さがみロボット産業特区」ってなに?

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横浜のココがキニナル!

「さがみロボット産業特区」ってどういうもので、なぜこの地域が選ばれたの?この特区指定のメリットは?さがみ縦貫道路は茅ヶ崎が始点なので依頼してみます。(こさくさん、狐猫さん)

はまれぽ調査結果
政府認定の地域活性化総合特区で「県民のいのちを守るロボット」実用化のため、開発・実験する企業を誘致。企業には法緩和や補助金などメリット

「さがみロボット産業特区」とは?

いつ発生するかも分からない自然災害や急速に進む高齢化に伴う医療・介護の担い手不足問題など、現代社会には多くの課題がある。そして、これらの諸問題に対応し、解決するためには、人間の力だけでは行き届かないケースが生じることが多々ある。

「県民のいのちを守るロボット」を作る。

これこそが、「さがみロボット産業特区」に期待される役割だ。


さまざまな役割が期待されるロボット(フリー素材より。画像はイメージ)

政府は2013(平成25)年2月15日、地域活性化総合特別地域制度を活用し、神奈川県内の9市2町(厚木市、綾瀬市、伊勢原市、海老名市、座間市、相模原市、茅ヶ崎市、平塚市、藤沢市、愛川町、寒川町)を生活支援ロボットの実用化・普及を進めるための拠点となる「さがみロボット産業特区」に認定した。


「さがみロボット産業特区」の概要

では、具体的に「さがみロボット産業特区」とはなにか。特区に認定されるメリットは何か。特区認定から1年半以上経過した現在は、どのような取り組みがなされているのか。また、今後の取り組みは?
さまざまな疑問について、神奈川県産業労働局産業・観光産業振興課さがみロボット産業特区グループの渡部力(わたなべ・つとむ)グループリーダー(以下、GL)に聞いた。


残念ながら写真はNG

まず、出迎えてくれたのは、アニメ『鉄腕アトム』をイメージしたポスター。
渡部GLによると、2014(平成26)年1月から「さがみロボット産業特区」のイメージキャラクターとして起用しているのだそう。


神奈川県庁の特設ホームページ*1も「鉄腕アトム」が!

*1:『ROBOT TOWN SAGAMI さがみロボット産業特区』
http://sagamirobot.com/

現在は前述の11市町に加え、2014年3月に大和市が追加認定されたため、12市町で「災害対応」、「介護・医療」、「高齢者らへの生活支援」の3つのテーマで生活支援ロボットの実用化・普及を目指し、日々の研究や実験に取り組んでいる。


「さがみロボット産業特区」のイメージ(神奈川県HPより)

なぜ、このエリアなの?

この地域が特区に選ばれた理由については、JAXA(宇宙航空研究開発機構の施設が相模原市にあり、その部品を手掛けるモノづくりの技術が高い中小企業が 多いこと、県内の研究開発(R&D)人口の約半分が集中しているということに加え、2014年度中には「さがみ縦貫道路」が全面開通し、物流が広域化・迅 速化することなども挙げられる、と渡部GLはいう。


全面開通が待たれる「さがみ縦貫道路」(神奈川県HPより)

また、実証実験を行う際に「神奈川県総合リハビリテーションセンター」(厚木市)があることも大きな要因だ。

特区でのメリットは?

日本では少子高齢化に伴い、要介護者の増加だけでなく、介護する側の人手不足や負担増大が深刻な問題なっており、人の手以外を活用した介護サポートが求められている。

また、2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災の教訓から、放射能の影響がある場所への立ち入りや土砂の下敷きとなった人への災害支援などに対応したロボットの利用のニーズが高まっている。

「さがみロボット産業特区」は、こうした社会を取り巻く諸問題の解決や、地域産業活性化を期待して政府が認定した経済特区だ。

この中でロボット開発を進める企業などに対しては、政府から税制や法的規制緩和、補助金など、さまざまな優遇措置がある。


「さがみロボット産業特区」のメリット(神奈川県HP)より

例えば、土砂やがれきの下敷きになった人を探索するロボットを開発するにはマイクロ波レーダーを使用するが、このレーダーは電波法の規定によって屋外使用ができない。
しかし、特区ではこの規制が緩和され、マイクロ波レーダーを使ったロボットの実験ができるようになる。

また、公道を使って車いすの実験を行うためには煩雑(はんざつ)な道路使用許可を申請しなければならず、一度の申請で期間は3日。しかし、特区では一度の申請で14日まで公道を使えるようになる。

このほか、生活支援ロボットの実用化に向けて研究開発又は実証実験などを実施する事業者が必要な資金を金融機関から借り入れる場合に、国から利子補給を受けることができる。


金利や補助金など多くのメリットがある

このほか、一つのロボット開発のために必要な技術を持った複数の会社をマッチングするなどの取り組みも行っている。

目指すは「鉄腕アトム」!

「さがみロボット産業特区」では、前述の3テーマを細分化し、具体的なロボット開発を進めている。
さらに、『鉄腕アトム』の主題歌に出てくる「七つの威力」になぞらえて、

(1)「10万馬力(=リハビリ支援ロボット)」
(2)「サーチライト&カメラ(=無人走行できる災害状況撮影ロボット)」
(3)「聴力1000倍(=マイクロ波レーダーによって、がれきなどに埋もれた生存者を探索するロボット)」
(4)「人口声帯(=会話可能なコミュニケーションロボット)」
(5)「電子頭脳(=自動運転技術を搭載した自動車)」
(6)「人の心を感じる力(=視覚障害者の先導を行うガイダンスロボット)」
(7)「空飛ぶジェットエンジン(=災害現場の情報収集・監視用飛行ロボット)」
の7分野で生活支援ロボットの開発を行っている。


ハンドルを離しても自動運転が可能だったり(写真提供:神奈川県)


重機を無人で操縦できるロボットなど黒岩祐治知事も視察(写真提供:神奈川県)

そして、特区認定から約1年半を経て、2014(平成26)年6月3日(火)、「さがみロボット産業特区」での商品化第1号が誕生した。
厚木市の複数の中小企業で組織する「株式会社エルエーピー」の「LLPアトムプロジェクト」による「パワーアシストハンド」だ。


エルエーピーの「パワーアシストハンド」(写真提供:LLPアトムプロジェクト)

「パワーアシストハンド」は、神奈川工科大学(厚木市)・山本圭次郎教授の研究成果をもとに、神奈川県七沢リハビリテーションセンター(同)で実証実験を実施。
脳血管疾患などでまひが残って動かすことができない手指の曲げ伸ばしをサポートする福祉ロボットで、開発期間は着想から約5年。総開発費は1億円ほどにのぼるという。

空気圧を利用し、まひしている手の甲側に蛇腹の付いたグローブを装着してもう片方の手でスイッチを押すと、空気圧によって手が開閉するようになる。

「特に苦労したのはグローブの生地選択と指関節位置に合わせた蛇腹の装着、また手のひら側を開放させ装着しやすくした点」なのだそうだ。


パワーアシストハンドの使用イメージ(写真提供:LLPアトムプロジェクト)

価格は29万8000円(税別)で、6月の販売開始から10月中旬までで海外を含めて122件の受注があったという。

アトムプロジェクトの北村代表は「進化バージョンも開発中で、できるだけ早く商品化し、高齢化社会に役立つ介護ロボットを提供していきたい」と、さらなる意欲を語ってくれた。

また「ここ神奈川の『さがみロボット産業特区』が世界の介護ロボット拠点都市になる日を夢みて活動を続けていきます」と話してくれた。

さらなる普及に向けた取り組み

神奈川県では「さがみロボット産業特区」の取り組みによって、生活支援ロボットを実用化・普及させることで、県民の「いのち」を守ることができる安全安心の実現を目指しており、今年度も13件が採択された。



採択された案件の一例

このほか、県は3ヶ所(厚木市妻田西、相模原市中央区向陽町、横浜市緑区長津田みなみ台2丁目)にロボット体験施設ショールーム*2を設置。一般の人にも「ロボットのある暮らし」を身近に感じてもらうことで、生活支援ロボットの一層の普及を進めたい考えだ。

*2:「ぞくぞく誕生! ロボット体験施設 -体験施設の巡回がスタート! 体験にご協力いただける施設も大募集!-」 2014年8月14日 『神奈川県ホームページ』
http://www.pref.kanagawa.jp/prs/p829621.html


食事支援ロボットや本のページめくり機、パワーアシストハンドなどが体験可能

渡部GLは「起業支援など、さまざまな施策によって企業は集まってきている。今後は、以下に一般の人に生活支援ロボットを認知させていくかが重要。『ロボットとともにある社会』実現ために、県としても全力で後押ししていく」と話してくれた。

取材を終えて

政府はロボット技術をイノベーション(技術革新)の象徴と捉えている。そのことは、2014(平成26)年6月に公表した「日本再興戦略」でも触れられており、医療、介護などさまざまな産業において革新を起こすことを明文化したことからもうかがえる。

また、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までにロボット産業の市場規模を製造分野で現在の2倍、サービス・非製造業分野で同20倍にすることも盛り込んでいる。

「七つのチカラ」を持った鉄腕アトムのような生活支援ロボットが身近にある世の中が来るのも、そう遠くない未来なのかもしれない。

―終わり―

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記者:

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