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「学生には何にも知らないという強さがある」 音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録

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「学生には何にも知らないという強さがある」
音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録

 コンサートプロモーターズ協会(ACPC)と東京工科大学メディア学部が提携して開講している寄附講座「ライブ・エンタテインメント論」。この第10回となる12月2日の講義に音楽プロデューサーの松任谷正隆氏が登壇。「学生だからできること」をテーマに、松任谷由実「SURF&SNOW in Naeba」「POP CLASSICO TOUR」帝国劇場「あなたがいたから私がいた」等、松任谷氏と東京工科大学の学生との取り組みについて語られた。

関連リンク:
・寄附講座「ライブ・エンタテインメント論」 ・コンサートプロモーターズ協会(ACPC) ・東京工科大学

2007年から始まった東京工科大学とのプロジェクト

ライター 松木直也(以下 松木):松任谷先生は、これまでメディア学部の学生たちにプロの現場に参加する道をたくさんつくってくださっています。学生の中でそのチャンスを活かして、電通のクリエイティヴやテレビ朝日に入社した方もおられるそうです。

松任谷正隆(以下 松任谷):最初はこのシリーズの特別講義の一ゲストとして呼んでもらったことがきっかけで、僕らは苗場で毎年一回「SURF&SNOW in Naeba」というイベントをやっているのだけれど、そのイベントだったらテスト的にできるんじゃないかと思って、2007年に参加してもらったのが始まりです。

佐々木和郎 メディア学部 メディア学科 教授(以下 佐々木):参加した初年度には、当時の学生から松任谷由実さんのコンサートをお客さんにスイッチングしてもらって観れるようにしたらどうですか? という提案がありました。

松任谷:この当時は、インターネットの環境って今ほど良くなくて、当然画質も悪かったんだよね。送り出しも凄く小さかったからこういう色んな遊びができた時代だった。

佐々木:もう一つ、無謀にも無告知でゲリラライブをやるという提案を採用していただきまして、これも実現させました。翌年からゲリラライブはゲレンデの中腹で本格的に行うようになりました。

松任谷:学生たちのアイディアがベースにあって、それにちょっとだけアレンジを加えてバージョンアップしていった感じだね。

佐々木:2010年の「SURF & SNOW in Naeba」30周年の年には、雲母社(きららしゃ・松任谷由実さん、松任谷正隆さんの所属事務所)におじゃましまして、トーク番組を制作しました。

松任谷:最初の頃は不思議な信頼関係があったんですよね。学生ってノウハウを知らないじゃないですか。そこが僕には面白かった。だけど面白くても信頼しないとその次の一歩には進めないじゃないですか? だから学生を信用してやった記憶があります。

松木:こういったプロの仕事に参加できるチャンスってなかなかありませんし、すごく大きな経験だったと思います。

松任谷:学生には何にも知らないという強さがあるわけですよ。例えばどうやったらイベントがもっと楽しくなるだろうかって考えたときに、「ゲリラライブをやりましょう」という話しになって、いつやるかと聞くと、「シーズン終わった翌日にやりましょう」と。「翌日じゃ人帰っちゃうでしょ?」って言ったら「じゃあシーズン中にやりましょう」って。「シーズン中に同じことやったもつまらないでしょ」「じゃあ外でやりましょう」「えっ外で? バンドのメンバーも何て言うか分かんないよ?」って言っても「外がいいです」って言うんですよね。それを僕は面白いかもしれないなって思うわけですよ。

松木:学生たちのアイディアは、新鮮だったり非常にユニークだったりすると思うんですけど、現実的に機材をどうするかとかそういったハードな部分に対してのフォローは大変じゃなかったんですか?

松任谷:最終的にできなければやらなきゃいいだけで、まず最初にアイディアが必要でしょ? コンサートばっかりやってるスタッフはできることが分かってるから、その中でやろうとするじゃないですか。だから絶対新しいことはできない。何をやるにしても奇抜さはとっても大事だと思う。

松木:それでは引き続きまして、「SURF & SNOW」ライブ以外で学生が参加しているプロジェクトがありますので、それを見てみましょう。

佐々木:2009年に松任谷由実さんが発売したアルバム「そしてもう一度夢見るだろう」の楽曲データを、まだレコーディングの最中にも関わらず学生に使わせてくれると仰って頂いて、「ハートの落書き」「Flying Messenger」「黄色いロールスロイス」の3曲のデータを元に、東京工科大のメディア学部と多摩美術大学の総合デザイン学科の学生のコンペでPVを制作しました。「ハートの落書き」で1位に選ばれた作品はオフィシャルPVとして採用されました。

松任谷:無謀なことやりましたね(笑)。

松木:学生のアイディアが実際PVとして採用になったんですね。どんな点が良くて採用になったか覚えてらっしゃいますか?

松任谷:わりとオーソドックスに、曲をどういうふうに理解してるかっていうのが分かるようなものでした。テクニカルが先行していないと言うか。

佐々木:「黄色いロールスロイス」の1位の作品は、2009年のコンサートツアー「TRANSIT」で採用されまして、セットの後ろの巨大スクリーンに映像を投影しました。「TRANSIT」ツアーでは、「14番目の月」という曲で映す映像も学生に撮影させて頂きました。このとき力不足というか打ち合わせが悪くて「全然違うんだ」と松任谷さんに指摘を受け、撮り直して徹夜で編集して翌日仕上げたんですよね(笑)。

松任谷:そうですよね(笑)。でも学生たちの機動力ってすごい。プロがこれでいいでしょっていうところを、学生は最後までやってくれる。

撮り直しで徹夜作業も、松任谷由実ツアーを演出

「学生には何にも知らないという強さがある」 音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録(2/6)

「学生には何にも知らないという強さがある」
音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録

撮り直しで徹夜作業も、松任谷由実ツアーを演出

佐々木:もう一曲、「Forgiveness」この歌の背景にはたくさんの子どもたちを映像に使ってます。子どものコーラスと映像、これも学生がつくりました。子どものコーラスは、松任谷さん、由実さんのスタジオにお邪魔しまして、工科大の機材を持って小さい子どもたちに集まってもらって録音してそれを何倍にも増やしました。このようにツアーに参加させて頂きました。

松木:現場では厳しく接しているんですか?

松任谷:そうでもないですよ。基本は遊びから始まってますから。遊びの要素がなかったらプロでやればいいっていう話しになる。

佐々木:また、昨年から今年にかけて行った「POP CLASSICO」ツアーでは、由実さんの影を使った演出も学生が撮影して、素材を作りました。

松任谷:この演出は非常に複雑で、撮影のとき本人が風邪をひいていて動きが緩慢だったんですよ。だから本番はそれに合わせなくちゃいけなくて、それが大変でしたね。

松木:どんなイメージでこの演出を考えられたんですか?

松任谷:簡単に言うと曲の中の二つの別の人格を影で表現したんですね。

松木:松任谷さんはその考えを学生に伝えるわけですよね。そのとき学生は松任谷さんに質問したりとか、そういったコミュニケーションはあるんですか?

松任谷:この時はなかったです。幽体離脱するように影が分かれていくっていうシンプルなストーリーができてたから。ただ、撮るときに、本人を撮るか影を撮るかというディスカッションはしたけど。

松木:では学生たちはそういったわずかなお話の中で仕上げていくわけですか。

松任谷:佐々木先生のご指導の元に(笑)。

松木:素晴らしいですね。

佐々木:この作品を担当した学生はテレビ朝日に就職しまして。こういう経験談を面接で話せたんだと思うんですけど。

松木:やっぱり現場での体験は面接とかで活きるんでしょうね。

佐々木:学生にも話しているんですけど、苦労した年に当たった学生が大手に就職しているんですよ。「POP CLASSICO」では学生にやらせていただくところと、プロにお願いするとろと織り交ぜながらやらせていただきました。

また、松任谷さんが脚本・演出を手がけられた帝国劇場での由実さんの音楽劇『あなたがいたから私がいた』で、今回はプログラムを使った映像もやらせていただいて、これからは現場でリアルタイムにお応えできるような形も開発していきたいなと思っています。

松木:今回の帝国劇場の演劇『あなたがいたから私がいた』は、コンサートツアーとは心持ちが違うような仕事なんでしょうか?

松任谷:そうですね。やはり脚本を書くのは違いますね。あと、役者に演出を付けるというのは、プロの演出家じゃないし、年寄りだけど新人に近いから(笑) 気を使うというのはありますね。

松木:今回のストーリーはずっと温めていたものなんですか?

松任谷:2年前にやった演劇(純愛物語 meets YUMING『8月31日〜夏休み最後の日』)の途中に考えちゃいましたけど、書き始めたのは今年の4月です。

松木:では半年くらいかけて書かれたんですか?

松任谷:いや、2日で書いたんだけど(笑) そこから直して直して。

松木:脚本を書いているときに、同時に映像や音楽は浮かんでいるんですか?

松任谷:浮かんでるけど、実際に役者が演じた映像とは違う映像を浮かべていたと思うんですよ。だから実際に稽古が始まると「ちょっとイメージと違うな」とか「これも面白いな」と思ったこともありました。

松木:ツアーですと数ヶ月かけて全国をまわるじゃないですか? 演劇は多いときには日に2回。それが1ヶ月続きますが、どのようにエネルギーを維持するんですか?

松任谷:僕はツアーには参加しない(笑)。できちゃったらあとはメンバーが全国をまわって、大阪とか名古屋は観に行くけど、その程度ですね。帝劇はもうちょっと責任を負ってる部分が多いので、わりと毎日いましたね。

松木:楽屋にもおじゃまさせていただいたんですが、例えば役者さんの名前の入った木の札があったり、ああいったところはちょっと趣きが違いますね。

松任谷:あそこは独特の場所だよね。

「『学生が撮りました』なんてエクスキューズにならない」— SURF&SNOWでライブとオリジナル企画を配信

「学生には何にも知らないという強さがある」 音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録(3/6)

「学生には何にも知らないという強さがある」
音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録

「『学生が撮りました』なんてエクスキューズにならない」— SURF&SNOWでライブとオリジナル企画を配信

松木:では、続きまして「NET MAGAZINE IN NAEBA【Y MODE】」の学生のプレゼンテーションを振り返っていきたいと思います。

学生:「Y MODE」を簡単にご説明いたしますと、「SURF&SNOW in Naeba」のコンサート期間中にインターネットでコンテンツを楽しむことができる有料サイトとして2008年からスタートしています。本ライブの配信の他にも様々な企画コンテンツを配信しています。企画・立案から撮影・編集・配信まで行っているんですが、まず、企画案出しを学生が行い、お世話になっている制作会社の方と雲母社の方とブラッシュアップを行います。ブラッシュアップを経て、自信のある企画を松任谷さんにプレゼンし、採用していただいたものから具体的な構成を立て、撮影に臨むといった流れになっています。

これは「ダーツライブ」という企画で、前回の「Y MODE 2014」のときに大変好評だったものです。映像コンテンツには、松任谷由実さんとバンドメンバーの方々、そして正隆さんにご登場いただき、とても盛り上がりました。「ダーツライブ」は、楽曲、アレンジ方法、アレンジャーをダーツで選び実際にライブで演奏するというものです。

松任谷:これだって、普通僕らの中からは絶対出てこないですよ。だって、この曲を演歌でやってください、なんて怖くて言えないじゃないですか(笑)。

松木:その強みはありますよね。

松任谷:もうこれは学祭のノリですよ(笑)。面白かったですね。

学生:この「ダーツライブ」は撮影も面白かったんですけど、コンテンツにして配信した結果、ファンの方に好評をいただいたので、今年も制作したいと思っています。

松木:「ダーツライブ」はどのようにして誕生したんですか?

学生:「ダーツライブ」は企画案としてたくさん出たものから、ブラッシュアップしていって行き着いたという感じですね。

松任谷:ディスカッションすることの面白さは、そこからどう流れていくかわからないところだよね。

学生:次は本ライブの「SURF&SNOW in Naeba」配信ですが、これも私たち学生がプロの方々と共に撮影・編集・配信を行います。前回の2014年は、生配信と編集してからのオンデマンド配信がありました。

松任谷:普通のプロが撮った綺麗な映像より、荒いんだけど、なんかエネルギッシュな映像とか、そういうのを期待しちゃう。これを撮るにあたってプロパガンダ・フィルムズが撮ったライブ映像とか観てもらったよね。

学生:そうですね。正隆さんに言われて、5本以上みんなで見ながら「これはどう撮っているんだろう?」とか「この歌詞にどう合わせていこう?」とか、感想を言い合いました。

松任谷:プロパガンダ・フィルムというのはアメリカのLAにある映画制作会社で、ドキュメンタリーとか撮っているんですが、そこが撮ったフィルムを研究してもらって。1曲ごとに違うタッチで映像を撮ってねとオーダーして、この曲はずっとワンカメで、ある曲はカメラのアングルまで変えて、動きをつけてという。とにかく一個一個のアイディアをきっちりやるために、「これはこういう風に撮りました」という報告を出せと。

松木:みんなで見て、どうしたんですか?

学生:この当時は、どう撮るのかではなく、上手く撮ることから始めなくてはいけなくて、練習をしながら会議をして、「どんな風に撮らなくてはいけないのか?」試行錯誤しながら、1曲ずつ「どう撮ろう?」と考えながら撮りました。

松任谷:でも、これはプロとやるよりも面白いと思って。

松木:そうですか。どんなところがですか?

松任谷:プロの場合、こうやって撮ったらこう撮れると知っているわけです。そうなるとそこからはみ出さないわけ。でも、はみ出したら面白い場合もあるじゃないですか。例えば、ワッとフレームアウトしちゃったら、逆にスピード感が出たり、そういう偶然性とか、そういったものがある。

松木:そんなトレーニングを続け、学んだことをどのように松任谷さんにお伝えするんですか?

学生:レポートを提出させて頂きました。

松任谷:それを受け取るんだけど、半分は信用していない。信用していないというより、できあがったものが全てだから、それで確認していますね。

松木:なるほど。ちゃんと途中経過を報告して、レポートを出す頃には自信がある感じですか?

学生:そうですね。自信を持って提出しています。

松任谷:でも、そこまでやってくれたから、ここまでできたんだと思う。で、年々ハードルが高くなっているので(笑)。なぜかというと昔は画質が良くなかったの。でも、今はどんどん画質が良くなっているから、それこそそのままYouTubeに上げられちゃったら、ずっと流されちゃうわけでしょう? そこで「これは学生が撮りました」なんてエクスキューズにならない。

松木:では、映像を作ってOKをもらわなくてはいけないわけですね。

学生:そうですね。そして出来上がった映像を「Y MODE」で配信しました。これを2015年2月の「SURF&SNOW」でもやらせていただきます。

松木:今年で「SURF&SNOW」はなんと35回目ですね。どんなイメージかはもうお話し頂けるんですか?

学生:ちょっと・・・まだですね。

松任谷:コンサートの企画が決まっていないから。それを僕が彼に伝えないと、まだ考えられないんだよ。だから、今回は時間との闘いになると思う。

松木:そのへんは覚悟しているんですか?

学生:はい。

学生の企画を松任谷氏が評価、採用企画も続々

「学生には何にも知らないという強さがある」 音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録(4/6)

「学生には何にも知らないという強さがある」
音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録

学生の企画を松任谷氏が評価、採用企画も続々

松木:気合いは十分ですね。ここからは新しい提案を5人の学生さんにやっていただきます。では、ステージに来てください。

学生:宜しくお願いします。私は「夢を叶えましょう」という企画を提案したいです。ファンの方から夢を投稿してもらい、サプライズで由実さんが夢を叶えてあげるという企画です。例えば、デュエットしたり、一緒に歌いたいという夢を実際の曲で叶えたら面白いと思いました。

松任谷:ファンとのデュエットはやったことがある様な気がするなぁ。でも、デュエット企画は全然OKですよ。

学生:ファンの人が書いた曲に、一緒に歌詞を書いて貰うとか。

松任谷:おお! 大胆だね(笑)。それ面白いかもね。ただし、クソみたいな曲だったらどうするの?

会場:(笑)。

学生:そうですね・・・それでもファンの人の願いだったら。

松任谷:そのファンは面白いと思うけど、他の人たちは? オーディションがあればいいのかな。じゃあ、こういうのはどう? 「この歌を歌ってください」企画。「この歌を歌ってください」とネット上に公開して、他の人たちの投票で何票以上いったら必ず歌う。それって一人で何票も入れられたら困るので、そこが上手くコントロールできれば面白いね。採用してみよう。

松木:採用!

松任谷:タイトルだけは考えておいて。「あなたの曲歌います」とか(笑)。

松木:タイトルと松任谷さんに言われたことをもう一度考えてください。ありがとうございます。では次の方お願いします。

学生:私が企画しますのは「実食!オリジナルクッキング」というもので、一般家庭の人でもオリジナルの組み合わせで美味しい料理があると思います。例えば、うちの学食にあるんですが、スパゲティーにカレーをかけるとか、納豆とかは多いと思うんですが、それをメンバーが提案してみんなに食べてもらって、「★三つ」とかで評価してもらう。

松任谷:食べるのは由実さん一人でいいんじゃないかな? それで判定させて。いつも食べ物のことで思うのが、「アイスクリームのてんぷら」ってあるじゃない?(笑) あれを考えた奴って凄いなと思うんだよね。ちゃんと成立しているじゃない? つまり、「これとこれを組み合わせたらとんでもなく気持ち悪いだろう」と思う、振れ幅のデカイ組み合わせで由実さんに食べさせて、美味しいと言ったら、そいつが優勝。どう?

松木:これはメンバーが作るの?

松任谷:いや、これは学生のだよね。学生のレシピが面白いと思った。

松木:想像もつかないくらい、とんでもないものが出てきてほしいわけですよね。

松任谷:ドッグフードは嫌だな(笑)。基本はお腹を壊さないような食材。納豆クリームぐらいの、相当嫌なやつ(笑)。

松木:納豆は相当使えますよね。

松任谷:ただ、何かに何かを足してというのはテレビ番組とかでもうあるから、もっと完成されたものがいいなと。

松木:これ結構難しいね。

松任谷:それを、学生たちが考えてプレゼンする。それを由実さんが食べて判断する。

松木:松任谷さんは食べないのですか?

松任谷:僕は食べないですよ。

松木:(笑)。

松任谷:美味しかったら食べても良いけど(笑)。でもさ、例えばレシピを考えるだけって、この中でやっても良いなと思う人は何人くらいいますか? 私が考えたい、みたいな人。…数人はいるな。これ、やろっか。数人いるし(笑)。

松木:じゃあ、今手を挙げた人は参加してください。

会場:(笑)。

松任谷:例えばそれで賞品が出たらどう? そうしたらもうちょっと参加する人が増えるんじゃないかな。

松木:そうですね、ではレシピ次第で賞品ありで。

松任谷:やろう。採用(笑)。

松木:では、「実食!オリジナルクッキング」採用ということで。

学生:ありがとうございます。

「学生服を着ている僕達というのだけはイメージできたよ(笑)。」(松任谷氏)

「学生には何にも知らないという強さがある」 音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録(5/6)

「学生には何にも知らないという強さがある」
音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録

「学生服を着ている僕達というのだけはイメージできたよ(笑)。」(松任谷氏)

松木:では3番目の方お願いします。

学生:僕が今回持って来たのは、「あの頃に戻ろうよ ユーミン」です。由実さんのライブには、私たちのような若い学生よりは、40〜50代の方が多いと思うんですけど、その方々が学生の頃って何があったかなと考えたときに「8時だョ!全員集合」が思い浮かびました。テーマは学園ということで、主にコントをやってもらいたいなと。由実さんはアーティストなので、加藤茶さんとか志村けんさんみたいにテーブルでガタンみたいなことがないと思うんですけど、そういうのを由実さんにやってもらえたら面白いんじゃないかなと思って。入場条件は学生服。お客さんにも学生服を着てもらって、一体感を作るというのもまた面白いんじゃないかなと考えました。

松任谷:学生服を着ている僕達というのだけはイメージできたよ(笑)。

松木:恐ろしい風景が浮かびますね(笑)。

松任谷:由実さんもセーラー服着るわけ?

学生:そうですね。セーラー服。

松任谷:(笑)。しかし、これの一番のポイントは構成作家がとっても才能のある人でないとお笑いというのは書けないんですよ。誰が書くの? 僕は無理だよ(笑)。

松木:入場条件が学生服、というのは惹かれるんですけどね。あそこは苗場のリゾートなのでそこに合うように品良くお笑いを書ける作家がいれば。

松任谷:ドリフターズって、実は最初は分かる人にしか分からない、高度な音楽劇だったのが、だんだん子ども受けにシフトしちゃうんですよ。すると、だんだんつまんなくなっていっちゃうんだけど。

松木:毒気があって。そういうのが視聴率と共に。

松任谷:これをやるためには、そういうハイセンス&ペーソスがあり、なおかつ面白いというすごい才能が必要だよ。

松木:やっぱりユーモアというのは難しいですよね。

松任谷:多分、それが書ける人は1万人に1人、いるかいないかじゃないか。

学生:書くのは難しいですけど、それが成功すれば…

松任谷:面白いかどうかはきっと本を見た段階ですぐ分かると思う。もう1つ大事なことを忘れているんだけど、それは出る人が由実さんだったり、バンドだったり、僕だったりする。この中で、笑いを取れる才能のある人がいるかというところ。そこは君たちがもの凄くシビアに判断しなきゃいけない。普通に考えると、僕達はどうやっても才能がない。才能がないやつをこういう風にやったら面白いという逆転の発想があればできるかもしれない。もう少し頑張ってみよう。

学生:はい。ありがとうございます。

松木:どんどんいきましょう。4番目の方どうぞ。

学生:私が企画したのは「Dearユーミン」ということで、ファンとの繋がりを大切にしたものを発表します。ファンから由実さん宛にミニファンレターを書いていただくというものです。コンサート会場にパネルを設置。手のひらサイズのシールに、例えば今まで訊けなかった質問など由実さんへ宛てたメッセージを書いていただきます。そのメッセージを貼ったパネルを後日由実さんに見ていただいて、その様子を撮影しつつ、質問に答えてもらったり、ファンにメッセージを伝えるという、直接ファンへ向けた企画となっています。

松任谷:これに似た企画は以前学生が出していて、それはネット上の質問で答えていくというのはあったけど。それとは若干違う?

学生:直接由実さんの言葉で言ってもらうという。今まではファンレターを出して返事が来ても、自分だけだったり、その周りの人たちしか分からないので、ファンのみんなが思っていることをパネルに書いて、ファン全員へ向けてもそうだし、個人にしても、全員が得するように。

松任谷:質問が死ぬほどあったらどうしよう。

学生:それは、シールをデコレーションしたり、由実さんに目をつけていただけるようなファンのセンス次第です。

松任谷:では、読まれないものがあっても良いと。

学生:そうです。

松任谷:それだったらできるかもね(笑)。

松木:ボードがあって、そこにみんな貼ってある?

松任谷:神社みたいにしちゃうというのはどうかな? 結んでさ。いっぱいぶら下がっていて、それをランダムに見られる。

学生:いいですね。面白いです。

松木:面白いかもしれない。見始めたらハマるんじゃないですか?

松任谷:見始めたらハマるけど、同じ質問が何個も結んであったら嫌だな。

松木:結んであったら読めないですからね。

学生:おみくじだったら裏をデコレーションして目立たせる。目立つというのが重要です。

松任谷:目立つのが大事? 難しいなあ。

松木:なかなかアウトプットが難しい。

松任谷:ファンの質問に答えるというのは、割とどこにでもある。ラジオのリクエストだってそうだし、インターネットの書き込みでも。だからそこに至るプロセスの面白さでしょ。もう一声で採用になるんだけど。もう一声何かあると面白いね。

学生:はい。ありがとうございました。

これからは“エイジレス”、アイディアを持っている人が引っ張っていく

「学生には何にも知らないという強さがある」 音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録(6/6)

「学生には何にも知らないという強さがある」
音楽プロデューサー 松任谷正隆氏「ライブ・エンタテインメント論」特別講座 採録

これからは“エイジレス”、アイディアを持っている人が引っ張っていく

松木:それでは最後の方お願いします。

学生:私が考えたのは「飯処 松任屋」という簡単に言うと由実さんと松任谷さんの料理対決です。食材は一人暮らしの学生の冷蔵庫に入っている食材をスタジオで再現して、即興で料理を作っていただくという。

松任谷:分かった、さっきのと反対だな。僕達が作ってどっちが美味しいか、ブラインドテストで優勝を決めるとか。

学生:そうです(笑)。

松任谷:それをやると大抵僕が勝つんだよ(笑)。今までの統計から言うと、本人のやる気がなくなるという(笑)。今までも近いパターンがあったんだよね。でも、これはこれでありだと思う。

学生:ありがとうございます。

松木:それでは残りわずかですが、学生からの質問です。

学生:企画の意図やコンセプトを伝えるために、企画書を作って、全体の意図を定義させてからグループ全員に共有させて、制作をするというように決めているのですが、松任谷さんが音楽を制作するときに、形として見えにくいものだと思うのですが、グループ全員で共有させて世に出すというプロセスの中で、どのように全体へ意図を伝えているのか訊かせてください。

松任谷:これは面白い質問だよね。バンドとかをやると、リーダーがどうやって決まっていくのかというのと同じだよね。一番やる気がある人とか、音楽的に一番この人の言うことだったら聞いてもいいやという人がリーダーになっていくでしょう。さもなければ、いっぱい曲を書く人。だから、イニシアティブを取っていく人というのは、大抵がそれと同じ立場の人だと思います。

学生:その人の言葉で引っ張ってもらって共有する。

松任谷:世の中は何となくそんな風になっているんじゃないかなと思うけど。

学生:そうですね(笑)。

松任谷:そういうプレゼンを黙って聴きながら、「俺だったらこうするぜ」と後でプレゼンする人もいるけどね。

学生:やっぱり制作グループの中で、信頼関係を重要視されているところがあるんですか。

松任谷:最終的には信頼しなければ、その仕事は上辺だけで終わる。だからそこに自分のアイデアも乗っけていった方がよりプロジェクトへ愛着が持てるようになるかもしれない。いいなと思ったらそれに乗る、そうでないと思ったら自分が引っ張っていく。

学生:分かりました。ありがとうございます。

松木:では、最後に私の方から質問をさせていただきます。これからの世代に期待することはどういうことでしょう。

松任谷:これからの世代。変な話だけど、エイジレスに向かっているような気がする。僕は63歳だけど、みんなは10代、20代でしょ。これが全部、パラレルで仕事をしていくような時代になる。今までだったら年功序列とか、例えば経験を積まないとだめとか。そうではなく、全部が同時に走っている。何でもそうだけど、音楽の配信なんかも、もう誰でもできるようになったりとかしている。プロは今まで自分たちの特権だったものが、それによって崩れて、みんな同じだけチャンスがある。すべての仕事はそうなっていくだろうなと。だから、先ほどの質問にもありましたが、アイディアを持っている人が年寄りを引っ張ることだってある。

松木:エイジレス。年齢の違いのある人々が1つの大きな輪っかのような形でしょうか。ちょっと深く考えたいですね。どうもありがとうございました。

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