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「ネット選挙」未だ残る課題

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ネットを通じた投票の実現も検討されていくべき課題の一つ

12月14日は衆議院議員総選挙の投票日です。昨年の公職選挙法改正で、いわゆる「ネット選挙」が解禁されてから初めての衆院選となります。

ネット選挙といっても、インターネットを通じて投票ができるようになったわけではありません。単純にいうと、選挙運動にネットを使用することについて、ある程度、明確化されて解禁されたということです。投票所に行って投票することは変わりありません。国民が投票しやすくなるためのネットを通じた投票の実現も、今後、検討されていくべき課題の一つだと思います。

ウェブサイト等での情報発信も全面的に解禁されたわけではない

さて、選挙運動においては、配ることのできる文書図画が非常に限定されています(公選法142条)。改正前は、ウェブサイト等での表示や電子メールは、この文書図画に該当して規制の対象となるおそれがありました。そのため、候補者や政党が公示・告示後の選挙運動期間中にはサイト等の更新を控えたり、電子メールを選挙運動に利用できないということが問題視されました。

改正により、このウェブサイト等を利用する方法での情報発信が頒布の枚数規制から除外されることになりました。ただし、全面的に解禁されたわけではないので注意が必要です。

安易な規制論に走らずに状況を見極めていくべき

また、ネット選挙解禁で誹謗中傷や候補者のなりすましなどの問題が増えるのではないかという指摘があります。解禁前から、誹謗中傷は、刑法の名誉毀損罪や侮辱罪、候補者の虚偽事項公表罪(公選法235条)の対象になりえます。改正により、選挙運動・落選運動のウェブサイトには電子メール等の表示義務が課されています。誹謗中傷・なりすましは、選挙の自由妨害罪(公選法225条2号)にも該当する場合があります。

しかし、選挙でどのようにネットが利用されていて、どのような問題が生じているかについては、安易な規制論に走らずに状況を見極めていくべきでしょう。

国民の選挙運動に関しては実質的に自由が保障されるべき

そもそも、公選法は、選挙の公正や、お金のかからない選挙のためとして、選挙運動を複雑に規制しています。このため、国民の選挙運動が萎縮してしまっている面もあるのではないでしょうか。ネットも普及し、ネットを使ったサービスも日々進歩していることや、国民の政治参加・ボランティア意識も変化していることからすれば、ネット選挙解禁は、旧来の公選法の規制に対する「弥縫策」のように思われます。

選挙運動として「できること」は何かを悩まなければならない現行の公選法から、「できないこと」がシンプルに明記された、国民にわかりやすいものに変えるべきであると考えます。国民には、憲法で保障された選挙権や表現の自由があるのですから、選挙運動に関しても実質的に自由が保障されるべきです。

最後に、ネット選挙解禁に関しても選挙の公正を確保しようとするのは大切なことです。しかし、いくら選挙運動を公正なものにしたとしても「選挙区選挙の1票の価値の不平等」が解消されていないままでは、選挙の結果が全体として正当なものとはいえません。解決が急務である「1票の不平等」の課題も残されたままです。

(林 朋寛/弁護士)

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