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安倍自民のTVへのお願い文書は批判封殺の「言論ファッショ」

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 為政者が報道機関に対し露骨な言論統制を敷き、批判的意見を封殺する。メディア側もその意向に沿って、権力者の言葉ばかりを垂れ流す――。どこかの国の話ではない。いま日本で起きている現実である。

 その言論統制工作の第一弾が「萩生田文書」である。衆院解散前日(11月20日)、安倍首相の側近中の側近で、「親衛隊長」の異名をとる萩生田光一・自民党総裁特別補佐が在京民放キー局の自民党記者クラブキャップを個別に呼び出し、各局の「編成局長」「報道局長」に宛てた文書を手渡した。

 受け取ったキー局側は、そうした報道圧力を受けたことをひた隠しにして、文書の存在を自ら明らかにしようとはしなかった。

「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」と題するその文書は、

〈衆議院選挙は短期間であり、報道の内容が選挙の帰趨に大きく影響しかねない〉と警告したうえで、具体的に〈出演者の発言回数〉〈ゲスト等出演者の選定〉に注文をつけ、さらに〈特定政党出演者への意見の集中がないよう〉〈街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう〉と細かく指示して〈特段の配慮〉を求めている。

 どう読んでも、「安倍批判を放映するのは許さない」、「番組に目を光らせておくぞ」という恫喝である。

 選挙報道の公平中立はどのメディアにも求められる。しかし、自民党は政府が「放送免許」という生殺与奪を握るテレビ局だけに文書を出した。BS11報道局長を務めた政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏が語る。

「これまでもテレビ局に対して『公平中立な報道を』という要請はあったが、ここまで細かい注文をつけるのは異例です。公平中立な報道かどうかはメディアが自主的に判断すべきで、そのために放送倫理・番組向上機構という組織がある。権力側、それも一政治団体でしかない自民党が公平中立の中身をどうだと決めるのはおかしい。テレビ局側も一意見として処理すればいいだけの話です」

 正論だろう。ところが、テレビ局は唯々諾々と従った。

 表面化したのがテレビ朝日の『朝まで生テレビ!』(11月29日放送)のゲスト出演拒否事件だ。選挙をテーマに討論したが、同局は出演予定だった評論家の荻上チキ氏、小島慶子氏らのゲストに「質問が特定の党に偏る可能性などがある」と伝えてキャンセルした。

 出演拒否の理由まで「萩生田文書」そのままであることを見ると、効果は絶大だったのだ。

 安倍晋三首相は「アベノミクスの是非」を選挙の争点に掲げている。そうであれば政権与党に質問や批判が集中するのは当然であり、報道の公平中立を脅かすことにはならない。そもそも総選挙は「政権」に対する有権者の審判を問うものだ。

 それを承知で言論を封殺した安倍親衛隊の行動は民主主義の否定であり、権力の圧力に屈したテレビ局も国民を裏切ったことになる。

 安倍首相は批判を封じさせておきながら、各局に単独出演して「アベノミクスで賃金は上がっている」とウソを並べて自己アピールに努めた。萩生田文書に従うなら、各局は他党の党首も同じだけ出演させなければならないはずではないか。自分の主張は言いたい放題で、批判は封殺する。それを「言論ファッショ」という。

※週刊ポスト2014年12月19日号


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