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トヨタ『アクア』のCMで『ドラクエ』のあの曲が使われてるからドラクエIIIの思い出話をしてみる

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※本記事は『ドラゴンクエストI』から『III』までのネタバレを多少含みます! 未プレイの方、ご注意ください!

トヨタのハイブリッド車『AQUA(アクア)』の新作CMに『ドラゴンクエスト』の超有名曲が採用された。『冒険の旅』という『ドラクエIII』フィールドでのBGMなのだが、プレイをしたことがある人はもちろん、知らない人も思わずテンションが上がるような曲調だ。

多くの人は「なぜ車のCMでドラクエの曲が?」という違和感も手伝って、ついつい画面に見入ってしまったのではないだろうか。


1986年、初代『ドラゴンクエスト』の発売当時、日本にはまだ“ロールプレイングゲーム(RPG)”はゲームジャンルとして定着していなかった。そんな中発売されたファミコン版初代『ドラゴンクエスト』のパッケージデザインは、紫と黒と青が基調となったなんとなく地味な印象。ゲーム画面も緑色のフィールドに主人公がぽつんといるだけだ。

「ドラゴンクエストって知ってる?」「あー、あれね。兄ちゃんがやってる」「面白いの?」発売当初はさほど話題にならなかった『ドラクエ』も、その面白さに気付いたクラスメートを中心に、徐々に名前が広がっていった。

翌年には『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』が発売。初代が一人だけでラスボス竜王を倒しに行くストーリーだったのに対し、『II』では主人公だけでなく、仲間2人が加わった3人パーティーでの冒険が可能になっている。

初代は、RPGに慣れていないユーザーのために“まずひとりで冒険に出て”“敵を倒す”“装備を固める”“自身を成長させる”というRPGの概念を学習してもらうことからスタートしたと言われている。そして、『II』では初代主人公の子孫たちによるパーティープレイができるようになり、“RPGのパーティープレイ/役割分担の楽しさ”を盛り込んだ。

こうして、『ドラゴンクエスト』は、ゲームの中のキャラクターだけではなく、実際のプレイヤーも成長させてきたタイトルなのだ。

『II』の翌年である1988年2月には、いよいよ『ドラゴンクエストIII』が発売される。“キャラクターが職業を選択できる”“夜や昼の概念がある”などのシステム面の新要素が盛り込まれ、前評判も非常に高かった『III』は全国で長い長い行列を作り出す。ゲームのために徹夜で並ぶ、という出来事をこの規模で引き起こしたタイトルはおそらく『ドラクエ』が初めてだろう。

世界地図をモチーフにした『III』の世界は、『I』や『II』をしのぐスケール感であった。ちなみに『I』のころのプログラム容量は64キロバイト、『III』で256キロバイトという大きさだった。これは容量的にガラケーの待ち受け画面程度の大きさ。そこに膨大なストーリーを詰め込んだため、開発陣は最終的に容量不足との戦いを強いられる。『ドラクエIII』では使わないカタカナデータを削除し、オープニングタイトルからもロゴデータや音楽を削った。するとスタート画面は無音で真黒な背景に「DRAGON QUEST III」とテキストで打たれただけの非常にシンプルな画面に。

しかしこの従来のファミコンゲームらしくないオープニングは、結果的にまるで映画のような始まりを“演出”していた。

母親の呼びかけで目覚める主人公は、16歳の誕生日に王の任務を遂行するために城へ赴く。準備を経て、冒険に必要な“仲間”たちを酒場で集め、いよいよ城から世界に飛び出す。すると、すぎやまこういち先生作曲の『冒険の旅』がBGMとして轟く。

ここからすべての冒険が始まり、壮大なストーリーが紡がれていく。それを象徴したこのBGMは、単なるゲーム音楽の枠を超えたといえよう。同年にはNHK交響楽団の演奏によるCD『交響組曲 ドラゴンクエストIII』も発売された。今でこそオーケストラでゲームの曲を演奏するのは珍しくなくなったが、こうした前例を築いたのは『ドラゴンクエスト』であった。

CMの映像に話を戻そう。

今回の『アクア』は「LONG DRIVE with HYBRID」をテーマにしており、この映像では東京都交響楽団の演奏による『冒険の旅』をBGMに、『アクア』に乗って長編RPGの冒険に出る感覚を連想させる。古い町、そして城から4台の車がフィールドへ“旅立つ”。草原、海辺、山、森の奥と、パーティーの隊列のごとく進んでいく様は、『ロト三部作 完結編』である『ドラクエIII』そのものだ。


4台は豊富なカラーバリエーションから選んだ青、赤、水色、緑という配色。おそらくパーティーは勇者、戦士、僧侶、魔法使いという王道的な組み合わせであろう。水色が賢者である可能性もあるが、賢者は“ダーマの神殿”以降での登場となる。旅立ちをイメージしたこのCMは物語の序盤であると勝手に推測したので、今回、賢者は外してみた。ただし水色が遊び人のレオタードの色でもあり、緑が武闘家のカラーリングでもあるため、勇者、戦士、遊び人、武闘家という非常に玄人好みなパーティーである可能性も捨てきれない。

乗用車のCMにこれだけ『ドラゴンクエスト』という世界観がシンクロするというのもなかなか奇妙な話だが、本当によくできている。撮影された“ドラクエっぽい”場所の選定がハマっているとも言える。

『ドラクエ』という時代を共有した人には、特に響く映像だと思うので、テレビからあのBGMが聞こえたら是非チェックしてみてほしい。

アクアTVCM LONG DRIVE 冒険篇 30秒(YouTube)
http://youtu.be/BHmybb3bL2g

ちなみにCMの別バージョンでは『モンスターハンター』のテーマ曲『英雄の証』が使われている。

アクアTVCM X-URBAN 狩猟篇 30秒(YouTube)
http://youtu.be/M13gwyK1XCk

toyota.jp アクア
http://toyota.jp/aqua/

※画像は『トヨタ AQUA』CM映像、および『ドラゴンクエスト ポータルアプリ』(http://www.dragonquest.jp/dqpteaser/)公式ページより引用

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記者:

「予備校生のような出で立ち」で写真撮影、被写体(スチル・動画)、記者などできる限りなんでも、体張る系。 「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」などの特殊な性質がある。 好きなもの: 食べ物の写真、昔ゲーム(の音)、手作りアニメ、昭和、穀物

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