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Webサービス「KitchHike」が運ぶ、世界の食卓で味わう幸せ

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左から浅利泰河さん、山本雅也さんと藤崎祥見さん

旅を通して新しい港を探す、TRiPORTライターのLetiです。

あなたは誰かのために料理を作ったことがありますか? うまくできなくて落ち込んでも、「これ、めっちゃ美味しい!」と言ってもらった瞬間に思わず嬉しくなるでしょう。あるいは、誰かがあなたのために心を込めて作ってくれた料理なら、食べるだけで元気になれそうです。誰かと一緒に食卓を囲って食べる、たったそれだけのことが幸せを運んでくれます。

浅利泰河さん、山本雅也さんと藤崎祥見さんは、旅を通してこのような幸せに出会いました。そして、同じ食卓を囲むだけで国境を超えて、人と人はつながるのでは、と気づきました。

今日は世界のキッチンにから幸せを提供するサービスKitchHikeのコアメンバー3人に話を伺いました。

なぜ世界のキッチンを回るのか?

── まず、KitchHikeが誕生した、いきさつを伺いたいです。なぜこのようなサービスを作ろうと思いましたか? 宿泊場所を提供するCouchsurfingAirbnbが既にある中で、なぜ「食卓」に注目したのでしょうか?

藤崎: もともと皆旅行が好きで、海外で現地の文化を楽しむことに興味があったんです。世界遺産を回るよりは、旅先の人と仲良くなったり、文化を知ることに興味があったんです。

例えば浅利はインドでリキシャのドライバーに「どこ行く?」と聞かれたら「おまえの家につれて行け」と無茶ブリをして、その家でご飯を食べたりしていました。振り返ってみると、観光名所を回ったことよりも、人と出会って、人の家でご飯を食べたことが旅のハイライトだったんです。

現地の人と仲良くなることは、皆にとっても楽しいんじゃないかと思って、より簡単に交流できるようにKitchHikeを作りはじめました。

── 山本さんはKitchHikeのブログの中では「KitchHikeに辿り着くきっかけになった4つの出来事」について語っていますが、もう一度そのきっかけになった出来事について話していただけませんか?

山本:「旅先の現地の人の家で、一緒にごはんを食べることは、旅のスタンダードになる」と僕らは思っています。そもそも、どうやったら人はもっとつながれるのかをよく話していたんですね。僕は内田樹さんの文章が好きで、その中に『個食の幸せ』というエントリーがあり、「人が共同体を立ち上げるときに、必ず車座になってご飯を一緒に食べるという習慣がある」ということを言ってるんです。この習慣をもたない民族や人種はひとつもない、と。つまり、人間は仲良くなるのに必ずご飯を一緒に食べるプロセスがあるということが書かれていました。

それを読んで、「じゃあ、人とつながるには、一緒に家でご飯を食べればいいのか。」というシンプルな答えに辿り着いて、家で一緒にご飯を食べる場を僕らが提供すれば、世界中の人がどんどんつながるんじゃないかというのがきっかけの1つです。

2つ目は、僕が2009年にバーニングマンというネバタ州のイベントに行ったことです。何もない砂漠に5万人ぐらいの人が世界中から集まって、一週間だけのテンポラリーな村というか、コミュニティを作るアートフェスです。参加者が何かを表現したり、作ったモノを展示したり、まぁ遊んだり。面白いのが、お金が一切使えないんです。必然的に「与える」ということに興味を持った人たちが集まるんです。

そこで僕が見たのは、「give&give」の世界観でした。いつかはコスト以上のリターンがあるということを、身体的にわかっているのです。見返りは求めないけれど、自分たちに返ってくるものが大きいという感覚を覚えて、「これ面白いな」と思いました。ペイ・イット・フォワードですね。

KitchHikeも、料理を作るマッチングなので、もてなすのはAirbnbと比べたら手間がかかるし、コストもかかるんですけど、そこから生まれる体験とか、身体的な満足感がもっと深いものなんだろうなという風に思います。


Photo Credit: KitchHike Magazine

3つ目のきっかけは副業でした。副業をしていると会う人種が本業と違うから、見える景色も違います。別のレイヤーで社会や物事を見ることができるんですね。

KitchHikeを始める前に、ライターとAirbnbのホストもやっていて、本職も合わせて3レイヤーで世の中を見る時期が1年間ぐらい続きました。複数の支店を持って生活して社会と繋がれるのは、すごく面白くて、「これは皆やったほうがいいな」と思ったんですよ。でも普遍的な方法じゃないと簡単に取り組めないので、できるだけわかりやすくて、誰でも参加できるようなレイヤーを作りたいと思ったんです。それが料理でした。

最後に4つ目のきっかけは、韓国人の奥さんと結婚したことです。

ニュースでは日韓問題や反日デモが流れていますが、メディアに乗る情報は、多かれ少なかれその時代の権力者に都合のいいように、何らかの操作が行われていることがあります。

僕と妻の家族はとても仲良しですし、奥さんとももちろん仲がいいですし、個人と個人は仲がいいのに、どうして国と国同士になると軋轢が生まれるのかなと思っていました。でも、逆にいえば、個人同士でもっとつなががれば、その輪が広がっていくと思ったんです。個人が国を超えてつながる方法こそ、一緒にご飯を食べることだったんです。めっちゃシンプルでしょ。だからKitchHikeは、国際交流というか、個人と個人が自分と違う人とつながるための具体的な方法論なんです。

閉じていた「食卓」をあえて開放することで得るものとは?

── KitchHikeは去年の5月にローンチされましたが、この一年の間にKitchHikeを通してどのような食卓に出会いましたか?

浅利:僕は今のプロジェクトで日本に住んでいる外国人にインタビューすることが多いのですが、自国の料理を日本人に紹介したいと思っている外国人の方は沢山います。

食というのは自分のルーツと深く結びついていて、自分が食べて育った料理を、異文化の人達にも広めたいという気持ちが誰にでも共通しているのだと思います。それこそ「美味しいものを食べたい」という欲望は全人類に共通ですし、それを「他の人にも伝えたい」という気持ちを持っているのも不思議ではありませんよね。

山本:日本ではクック(※1)としてKitchHikeを使っている人は限られています。日本って忙しすぎて、誰かのために料理を作る時間がないのだと思います。でも、逆に言うと、せっかくおいしい料理が作れて食べたい人も大勢いるのに、忙しすぎて食事を振る舞えない働き方や生活って、なんかおかしくないかな?と思うようになってきました。

海外では子どもを保育園に預けずに一緒にいながら料理を作って家で上手く働く方法を見つけて、自分の生活をコントロールしている人たちもいました。興味はあるけど忙しすぎて、KitchHikeできない暮らし方をしている人は、とてももったいないなと思います。ライフスタイルをまず見直して、自分の求める生活を模索すれば必ず形になると思います。

(※1)KitchHikeの使い方としては二つある。世界中からの人に自分の家庭料理を食べさせたい場合は「クック」、世界を巡って、家庭料理を食べたい場合は「ハイカー」としてサービスを利用できる。

── 異国の人と同じ食卓を囲む行為と、異文化に対するステレオタイプを超える行為は、どのようにつながっていると思いますか?

浅利:例えば一対一で会って話している場合でも、ただ机に座ってする会話と、ご飯を食べながらする会話は全然違いますよね。
ご飯が真ん中にあるだけでほんわかして、だからこそいろんなことを自然に、フラットに話すことができる。会議だとタブーや常識で固まって話せないことも多いですが、両者の真ん中にご飯を据える(できればお酒も 笑)ことで、内容も話し方自体も変わると思います。

KitchHikeが広まれば広まるほど世界中で会話が生まれ、それに伴ってステレオタイプが壊れていくんじゃないでしょうか。知識としてある国のことを理解していると思っていても、実際にその国の人と食卓を囲んで話す経験はなかなかできません。KitchHikeは「食卓」という閉じられがちな場所を開放し、お互いを深く知り合う場を提供するためのものです

山本:食べ物その物の美味しさって、限界があると僕は思います。「この料理はこれ以上美味しくなれないな」と思うことがあります。そうなったら、美味しいと感じるかどうかは、どういう場で誰と食べるかによるんです。

たとえば、天気のいい日に外で仲良しの人や、あるいはKitchHikeで新しく出会った人と一緒に食べたほうが満たされるものも大きいと思います。楽しく食べたほうが絶対に体にいいです。

自分と違うものを食卓で発見

── KitchHikeを使う際に「旅先の家庭でご飯を食べる」、「日本に住んでいる外国人の母国料理を食べる」と「ご近所の美味しそうな家庭料理を食べる」という3つのケースがあります。それぞれどのような哲学がありますか?

藤崎: 一番目は、日本に限らず、海外旅行に行った先でいっしょに家庭料理を食べるというケースです。言葉にすると国際交流とか、異文化交流とかなんですけど、僕たちはそれが絶対に良いことだと考えています。

僕らは「文化の再分配」と呼んでいますが、交流することでこれが起きる。KitchHikeの後ろにはまさにそういう哲学があるんです。また、資本の再分配もあります。

簡単にいうと、ガーナにKitchHikeのクックがいますが、その方は10ドルでご飯を提供しています。その方が住んでいる村には、共有水道は2つしかなくて、ガスもなく、かまどでご飯を作っているわけです。その村にとっては、旅行者が払う10ドルはかなり大きなお金です。そういったことで、少しずつ世界の所得格差を変えていければと思います。

浅利:いつも生きている日常から飛び出した非日常で得られること、自分の人生への影響は計り知れないと思います。僕もいろんな旅行をしてきたからこそ日常に甘えるんじゃなくて、刺激をもっと求める人生になったと思います。でも日本では飛び出す人はとても少ないです。現実的な問題があると思うんですが。

じゃあ海外に行けない日本人は異国を体験できないかといえばそうではなくて、日本の中にも実は異国がある。隣の部屋は異国かもしれない。もちろん海外旅行と比べたら刺激が少ないかもしれないけど、その代わりに楽に体験できるんです。

だから非日常へ思い切って飛び出したい人は、ぜひ自分の近くに住んでいる人の家にKitchHikeしてもらえればと思います。いろんな国の人に会って、いろんな国のことをどんどん知ってもらいたいです。

山本:3番目のケースは近所の人とか、日本同士というケースです。この使い方については、アイデア募集中ですね。実はこのケースは最初からKitchHikeのプロジェクトに入っていなかったんですけど、国内でこういう使い方をする方が時々います。

基本的に同じ日本人同士ですが、国際交流とか文化の配分という話の相似形で、結局自分と違う人に興味があるということだと思います。外国人だとその違いがわかりやすいですが、実際に日本人同士でも絶対に違うわけです。違いの差は少ないかもしれないんですけど、皆お互いに興味があるんだと思いますね。

KitchHikeを通して、自分とは違う文化やバックグラウンドを持っている人たちと食卓を囲んでみてほしい。いろいろな国や背景を持つ新しい人との出会いを通じた、自分自身の中の新しい発見もあるはずです。

(聞き手:Letizia Guarini、赤崎えいか、撮影:赤崎えいか)

[KitchHike:世界中の食卓で料理を作る人(COOK)と食べる人(HIKER)をマッチングさせるオンラインプラットフォームである。 現在、日本/フィリピン/韓国/インドネシア/タイ/マレーシア/中国/トルコ/フランス/インド/アメリカ/カナダなど、世界25カ国約300の食卓が登録されている。
ウエブサイト:KitchHike
ブログ:KitchHike Magazine]

*Keisuke Asami「カルカッタ
*Alex Topporcz「Valley of Fire, Nevada

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