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国際協力は、恩を贈り合う終らない旅 トジョウエンジン発行人 三輪開人さん

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トジョウエンジン発行人であり「e-Education」の代表理事の三輪開人さん

「発展途上国」という言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。貧しくて、不便な国? もしくは、秘めたる可能性を持つ、熱意のある人々の住む国、でしょうか。

子供たちの教育支援を行うNGO「e-Education」が運営するWebマガジン「トジョウエンジン」を読んでいると、発展途上国という言葉の定義が覆る思いがします。
今回は「トジョウエンジン」の発行人、三輪開人さんに「国際協力」に挑む姿勢と、旅を通して世界を知る楽しさについてお話を伺いました。

一緒につくりあげる「わくわく」を感じて欲しい

── 今日は宜しくお願いします! 三輪さんは前職でJICAに勤務されていたということでしたが、e-Educationにコミットすることにした理由を教えてください。

2つ、あります。ひとつは途上国の人のために何かをするというよりは、途上国の人たちと何かをしたかったから。e-Educationは発展途上国の子どもたちに映像教材を届けていますが、教材を作るとなると絶対現地の人の視点と、手数が必要です。教育という宝物を、現地のひとたちと一緒につくりあげることって凄いことだなと思います。一緒に作り上げることの素晴らしさは、旅から学んだことでもありますね。

もうひとつは、国際協力をもっと楽しくてわくわくするものにしたいという思いからです。例えば、受験の合格発表日の緊張感と高揚が、国際協力の活動にもあっていいのではと思ったんですね。

というのも、大学生だった頃、アジアを半年旅をしている間に、インドで高橋歩さんたちが学校を作っている現場に居合わせたことがありまして。すごく楽しそうに学校を作っている姿を見て、こういう方法もあっていいんだって気づきました。国際協力と言うと貧しい人たちのために身を犠牲にしている献身的な感覚の人もいるとは思うんですけれど、私としては、わくわくしながら、しかも現地の人たちと力を合わせて世の中を変えていく感覚は、旅から得たもので、e-Educationにも繋がっています。

── アジアを回った旅というのは、何か目的があって行ったのでしょうか。

国によってテーマを変えていました。中国の北京から入って、ラオス、カンボジア、ベトナム、タイ、インド、ネパール、ブータンという流れで半年かけて回りましたが、中国なら大自然、ラオスは人、というふうに。

ラオスの子供達と一緒に

── 途上国に滞在している最中は、どういう姿勢で現地の人と交流されていますか。

中国を旅行していた時は、観光を介した顧客とサービス提供者っていう関係でしたが、ラオスに行ってから、接し方がかわりました。

ちょうどラオスに行ったとき、「ロケット祭り」というユニークなお祭りが開かれていたんですが、そのお祭りは誰でも無料で参加できて、お酒も飲み放題だったんです。そこで、現地の人達のペースに合わせて飲んで歌って踊っているうち、気を失ってしまいまして。バックパックとか荷物をぜんぶお祭り会場に忘れてしまったんですが、起きた時、ラオスの家族の方が自分の荷物を家まで運んで看病してくれていたんです。その日は一日全然動けませんでしたが、そのときから、ですね。看病してくれた人たちが、お父さんやお母さんに見えましたし、言葉や生活風習は違うものの、結局みんな同じ「人」なんだと思えました。

旅の目的は 日常をどう生きるかを考えること

── そういう文化や言葉の違いを、どうしたら三輪さんのように楽しめるんでしょうか。

「旅の恥はかきすて」という文句があるように、恥をかくことかなと思いますね。恥は、旅をおもしろくするひとつのスパイスみたいなものです。現地の人たちに、無理やり、いつも使わないような満面の笑みで話してみたり、いつもの自分とは少し違う大胆な自分で接してみると、意外と現地の人たちも親しみを感じてくれるんじゃないかと思います。

ただ、一度失敗をしてしまったなと思うことがひとつありまして。「ありのままの自分」でいいんだと思って何も調べずに、現地へ行っていたことがあったんですが、そのせいで相手に不快な思いをさせてしまったことがありました。インドで、左手を使って食事をしてしまって。旅や異国の人たちと交流する上で、最小限の国の知識は入れておくのがマナーかと思います。e-Educationでも必ず事前に、相手国の文化や生活習慣を調べるようにしています。

── 半年間の一人旅を経て、他に「旅」という行為に対する気づきはありましたか?

旅は終わりのないものなのだと思います。目的がないというか、旅の先に目的があるんじゃないかなと。私自身、どこかへ行って楽しい想い出を作ることはすごく好きですが、アジアを回っている時に常に考えていたのは「日本に帰ったら、自分はどうなるんだろう?」ということでした。最後の方は、日本に早く帰りたいと思っていましたしね。旅行が非日常を楽しむ行為だとすれば、旅は日常をどうおもしろくするかを常に考えることなのかもしれません。

旅も国際協力も、恩を贈り合うことで繋がっていく

── 異文化に触れる、という意味で言うと他の国でもできることですが、なぜ、途上国なのでしょうか。

うまく表現できないのですが、「途上」ということばが好きなんです。これから伸びていくというおもしろさを感じませんか。e-Educationで教材を届けている国の大学生や高校生たちは「この国を変えることだ」とか「この国の教育制度を変革することだ」という夢を持っていて、その向上心や野心を持っている姿が、うらやましいなと思うことはありますね。

タイのフリースクールでのボランティア

── 彼らの前向きな姿勢は、日本の人が東南アジアに惹かれる理由にもつながる気がしますね。

私自身、「何かを学びに行く」というスタンスですし、むしろ盗んでやろう、くらいに思っていますよ。例えば、地方の過疎化問題は、本当に重々しく考えることしかできないのかな、と。バングラデシュの農村と日本の過疎地って人口は対して変わらないのに、バングラデシュの村で暮らすおじいちゃんたちは、すごく幸せそうですし、村全体が生き生きしているように感じます。日本の問題を、他の国に置き換えて考えたとき、日本人にもやる気に火をつけるきっかけが作れるんじゃないかなとも思いますね。

──「旅」が日常をどう過ごすか考える行為であるならば、国際協力はどういうものなのでしょうか。

世界では、日本ほど途上国から先進国に最短で世界経済第2位になるほど成長した国は、おそらくないと思います。そういう圧倒的な成長をした経験を、途上国に還元していくことが、日本人だからこそできる国際協力なのかなと。

ただ、もっと全体的なことを言うと、私は「協力」という文字が好きなんです。力が4つ集まって「協力」。これって受け手と届け手の双方の力が必要になってくるということだと思うんです。

忘れもしない2011年3月11日の震災後、e-Educationのメンバーや教材を使っていた生徒さんが、ダッカの中心街で募金活動をしてくれたんです。しかも、ストリートチルドレンの子たちが、2タカ(日本円で約2円)くらい募金してくれたそうなんです。これってすごく国際貢献だと思います。金額の問題ではなく、助け合いというのは、何かのきっかけで起こりうるんです。

例えば、ラオスで私が酔いつぶれた時に看病してくれた人のうち一人は、実は昔、青年海外協力隊にお世話になった一人だったそうです。息子さんの名前が「じろう」なんですが、これも日本人に助けてもらったから付けたのだと教えてくれました。こういう協力は、実は意外と続いていて、交換しあっているのかなと思います。

現地メンバーと一緒にビデオを撮影している様子(バングラデシュ)

一期一会ですから、そのまま目の前の相手に、すぐ恩を返すことはできないかもしれません。でも、恩を贈ることはできる。一度受けた恩は、次にどんどん継がれていくと信じています。

── 今後e-Educationとしてチャレンジしていきたいことがあれば教えてください。

途上国の人たちに、もっと日本に興味を持ってほしいと思っています。私たちのパートナーの国の人達が「日本てどんな国なの?」と関心を持ってくれるのは非常に大きいです。課題解決はあくまで切り口で、本当の意味で国を理解し合うことは今後も加速していくと思います。そういう意味で、国際協力自体は、終わらない旅のようなものです。

そして途上国のひとたちと関わるには自己犠牲は避けられない、という固定観念があるなら、そこはしっかり壊していきたいです。どれくらいやりがいと幸せが感じられるのかを見せるのが、e-Educationのひとつのミッションだと思っています。そういった意味で、わくわくや楽しさには特にこだわっていきたいですね。

(聞き手:堀江健太郎 撮影:赤碕えいか 構成・編集:立花実咲)

[三輪開人:早稲田大学法学部を卒業し、JICAに入構。東南アジア・大洋州の高等教育案件を担当。 2013年、JICAを退職し、e-Education Project代表理事に。]

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