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教員採用で心理テスト、背景にある問題

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性的指向や宗教観を問う質問が含まれる心理テストを実施

昨年、行われた教員採用試験で、山梨県や山形県などの少なくとも4自治体で性的指向や宗教観を問う質問が含まれる心理テスト(適性検査)が実施されていたとして問題視されています。

この心理テストは、「ミネソタ多面的人格目録検査(MMPI)」と呼ばれ、1943年に精神疾患の有無を判定するためにアメリカで開発されたもので、作られたのが半世紀以上も前ですので、現代にそぐわない内容もあるテストのようです。

公務員では、民間よりも採用の自由度は低い

労働基準法では、労働者の国籍・信条又は社会的身分を理由とする労働条件の差別的取り扱いを禁じています。しかし、これは採用後の禁止事項であって、一般的に民間企業がどのような人材を採用するかにあたっては、ある程度の自由が保障されています。

地方公務員である教職員にも、法律により、人種、信条、性別、社会的身分、門地等により差別されない権利が保障されています。ただ、採用を判断する材料はあくまで採用試験の結果であって、公共の福祉に反する等のよほどの事由がない限りは、信条等を理由として差別的な取り扱いをすることはできません。民間よりも採用の自由度は低いと言えるでしょう。

教職員採用試験で、性的指向や宗教に関する項目が含まれる心理テストが実施されたことが物議を醸しているのは、こういった理由があるからです。

少しでも精神疾患リスクの高い人を避けたいという思惑も

では、そもそも、なぜ教員採用試験でMMPIが使われたのでしょうか?一つは、昨今、教職員の精神疾患罹患数が上昇していることが背景にあるように思います。文部科学省によれば、平成22年度の教職員の精神疾患による休職者数5400人を超え、平成13年度に比べ約2倍になったというデータが出ています。おそらくは、教育現場の激務が原因だと推測されますが、採用する都道府県側としては、心理テストを活用して少しでも精神疾患リスクの高い人を避けたいという思惑がなかったとは言えないのではないでしょうか。

さらに、山梨県などの一部の自治体が、MMPIの性的指向や宗教観を問う設問を削除せずにそのまま利用したことについても(これらの設問を削除してテストした自治体もあります)、日本ではLGBT(性的マイノリティー)や特定の宗教に対して、まだまだ理解があるとは言えない状態であるため、採用後の特別な配慮やトラブルを未然に防ぎたいといった心理があったのかもしれません。

公務員である教職員採用において、性的指向や宗教などの特定の信条等を理由とする不合格はあってはならないことですが、自治体も民間企業と同様に、限りある人材で仕事をこなしていかなければならないのは同じです。今回の心理テストによるスクリーニングの是非を、一概に決めることはできないように思います。

(大竹 光明/社会保険労務士)

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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