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ミャンマーの子どもたちのためにKDDI財団がアートクラスを開催。カンボジアの子どもたちとの絵を通した交流も

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カンボジアに続く教育支援の対象国として

日曜日だというのに小学校に集まった子どもたち。みんな、出来上がったばかりの絵を、うれしそうに掲げている。場所は、ミャンマー・ヤンゴン近郊のペンコーネン村。生まれて初めて、絵の具を使って1枚の絵を描き上げた子どもたちだ。ミャンマーで美術普及に取り組むNGO「New Zero」とカンボジアで子どもに絵画を教えている「小さな美術スクール」の協力を得て、KDDI財団がアートクラス(お絵描き教室)を開催したのだ。

2014年1月、カンボジアの首都プノンペンから南に100㎞余りのところにあるカンポット州プノンタウ村で、第9校目のKDDIスクール、Phnom Touch (プノンタウ)KDDIスクールの開校式で、子どもたちに文房具をプレゼント

KDDI財団は、情報通信の恩恵を社会に広く還元し、世界の調和ある健全な発展に寄与することを理念に設立された公益財団法人だ。調査研究への助成のほか、情報通信分野における開発途上国からの研修員受け入れ、デジタルデバイド(ICTを利用できる者とできない者の間に生じる格差)解消プロジェクト、海外コンサルティングなどの国際協力に取り組んでいる。

KDDI財団が取り組む国際協力事業のひとつが、開発途上国における教育支援事業だ。およそ20年間にわたる内戦で疲弊し、学校も教師も圧倒的に不足しているカンボジアで、NPO、World Assistance for Cambodiaと協力して2004年から学校の建設・寄贈を開始。以後、毎年1校のペースで、カンボジア各地に、小・中学校を建設している。これらの「KDDIスクール」は、インターネットが利用でき、パソコンや英語教育も行っている。また、情操教育の観点から、伝統芸能であるスバエクトム(影絵芝居)の鑑賞会やワークショップを開催したり、カンボジアに移り住んだ日本人美術教師・笠原知子氏が主宰している子どもたちのための無料絵画教室「小さな美術スクール」を支援している。

カンボジアでの教育支援事業を開始して10年目に当たる今年、新たな教育支援先として、ミャンマーを加えた。日本に留学していたミャンマー人から、美術振興に力を入れているミャンマーのNPO、New Zeroを紹介してもらったことから、教育支援の可能性が見えてきたのが、そのきっかけだ。

ミャンマーでは、美術そのものが一般的でなく、学校でも美術や音楽の教育はカリキュラムに入ってこないことが多い。New Zeroは、現地の有名アーティストであるエー・コー氏をリーダーにしたアーティスト集団で、ミャンマーで現代美術の普及を図るため、アーティストに展示スペースを提供したり、若いアーティストを対象にしたワークショップや子ども向けの美術教室を行っている。

今回のアートクラスは、New Zeroのアレンジで、ミャンマーの子どもたちに、小さな美術スクールの笠原先生による授業を提供することで、ミャンマーにおける美術教育の発展を支援するとともに、ミャンマー、カンボジア両国の子どもたちの交流の機会を設けることを目的にしている。

初めての本格的なお絵描きに熱中するミャンマーの子どもたち

ミャンマーにおけるアートクラスは、10月4日、5日の2日間にわたって実施された。参加したのは、ペンコーネン村の小学校3年生と4年生計60人ほど。1日目には、まず笠原先生が、鉛筆の削り方から絵の具の使い方、色を混ぜて別の色を作る方法などを話した後、いよいよお絵描きに。子どもたちには、あらかじめ、テーマに沿った絵の下書きを描いてきてもらっていたが、これをそのまま絵にするのではなく、そのなかで描きたいところを大きく描き直す。選んだ題材は、樹木に囲まれた村らしく木が多かったが、家、森、魚、花と、さまざまだ。

続いて絵の具で色を塗っていくのだが、なにしろ絵の具も筆もパレットも初めて使う子どもたち。最初は先生がパレットの持ち方から実演してみせる。「パレットに絵の具を全部出して」「水をつけて薄めて」「濃く塗りたいところは水は少なめで」と、先生の説明を受けて、子どもたちが色を塗り始める。空が赤かったり雲が青かったりと、みな思い思いの色を塗っていくが、先生は”正しい色”を押しつけるのではなく、子どもたちの表現に任せる。「絵に間違いも失敗もない、思い切ってどんどん描いて」と言いながら、表現方法だけを教えて、子どもたちには極力自由に絵を描いてもらうというのが、笠原先生がカンボジアで見つけた、子どもたちの才能を引き出す指導方針だ。

先生が子どもたちの絵を見て回りながら、別の色の絵の具を足したりクレヨンで上塗りしてみたり、筆の使い方で絵に表情を付ける方法を教えると、子どもたちが集まってきて、あっという間に真似をし出す。最初は通訳を介して子どもたちに話しかけていた笠原先生だが、次第に、手を動かしながら日本語で話しかけるだけで、子どもたちもうなずいて、どんどん絵に表情がついていく。言葉がなくても伝えられる絵の教室ならではの光景だ。

生まれて初めて絵の具で描き上げた絵を掲げるミャンマーの子どもたち

2日目は午前・午後の2グループに分かれて絵を仕上げる。ミャンマーの子どもたちは、もともと授業中に私語をしたりはしないそうだが、どの子も黙々と絵を描いている。途中で「少し休憩しましょう」と声をかけても、誰一人休まず、「続けたい」と、熱心に描き続けた。そして最後に、一人一人、絵を持ってみんなの前に出て、全員で鑑賞会。画用紙いっぱいに鮮やかな色彩が広がる力強い絵の数々。とても初めて描いたとは思えない腕前に驚かされるが、「色遣いがよかったね」「描くものの選び方がすごかったよね」「細かく細かく描いた描き方がうまかったよね」と、笠原先生は、それぞれの絵のいいところを挙げて、全員の子どもの絵を褒めていく。子どもたちは満面の笑みを浮かべ、「楽しかった!」「また描きたーい!」と声を揃える。

アートクラスのためにKDDI財団が用意した画材は学校に寄付されたので、今後は、子どもたちが絵を描く機会も増えるだろう。会場となった学校の校長先生は、「今までは、絵の描き方も教えられないし道具もないので何もできませんでした。今回、みんなたくさん絵を描いて、描けるようになったことが分かりましたから、これからは地区の絵画コンテストにも応募したい」と喜んでいたという。

子どもたちが描いた絵は、1月17日から1週間、ヤンゴンにあるNew Zeroのギャラリースペースで展示し、各国大使館員なども招いて、作品のチャリティー販売も行う予定だ。初日には、ミャンマーの子どもたちとカンボジアの子どもたちとをSkype(テレビ電話)でつないで、ワークショップも行う。今回、アートクラスに参加した子どもたちは、クルマでわずか1時間ほどの距離にあるヤンゴンに行くのも初めて。カンボジアの子どもたちとの間でどんな会話が交わされるのか、自分の周りのことを描いた絵から、どんな交流が始まるのか。支援した大人たちも大きな成果を期待しているが、国境を越えた出会いを一番楽しみにしているのは、当の子どもたちかもしれない。

ミャンマーにおける教育支援のテストケースともいえる今回のアートスクール。KDDI財団では、その成果を見極めながらも、今後も、ミャンマーでの国際協力の可能性を探っていく予定だ。

参考情報(外部サイト)

KDDI財団
小さな美術スクール
キボウノカケハシ カンボジアの小さな美術スクール

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