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待機児童多い地域でも子供の声を理由に保育園建設できぬことも

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 保育園を必要としながら入れない、働きたいと思いながら働けない、そのような女性が2万人以上もいる日本社会の現実。「子供の声」を理由に保育園新設の理解が進まないケースも出てきた。そんな現状を、保育の問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子氏がリポートする。

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 整備された静かな住宅街が広がる世田谷区。すでに開園しているところでも、「子供の声がうるさい」という近隣の苦情によって、園庭を使えるのは午前中だけと制限をしたこともある園や、窓を開けられない園もある。それは世田谷区だけではない。私が把握しているだけでも杉並区や大田区で、来年4月に開園予定だった保育園が地域住民の反対で延期になっている。

 地域住民の反対で開園予定が延期になった、都内で複数の保育園を経営するある社会福祉法人の理事長はこう語った。

「反対運動はある程度予想できたんですが、予想外だったのは、そのことで工事業者の入札がなかったこと。五輪や震災復興で需要があるから、わざわざ反対しているところの工事をやろう、という業者が少ないのです。

 うちの区では近隣住民への対処も法人に任せっきり。保育園が必要だという保護者のかたからの応援もいただきますが、このままでは撤退せざるを得ないです」

 待機児童数1109人、全国ワースト1が続いている東京・世田谷区。その世田谷区では、保育課の職員が中心になり、地域住民からの反対にも対応している。しかし調整はなかなかスムーズにいかない。保坂展人区長はこう苦渋を明かした。

「管轄の職員からは、『保育園を作りたいという区長の気持ちはよくわかるけれど、対応する現場の職員はつらいんですよ』という声も入ってきています。地域住民への対応の難しさについても言われています」

 現在の法律では、保育園を建設をするときに地域住民に説明をする義務は、業者にも自治体にもない。横浜市に住む男性が言う。

「自宅マンションの隣の土地に建設確認の看板が出て、初めて保育園ができることを知りました。看板に書かれた法人の名前を見て、どんな保育園か調べたところ、庭でたき火をしたり、動物を飼ったりするなんていうことがたくさん書かれていました。静かな環境だからここを選んだのにすごく心配で…。保育園が足りないのは知っていますし、反対するつもりもない。でも、突然こういうことになると、こちらも何か対応策を考えないといけないかと思ってしまいます」

 9月には国分寺市の保育園の前で、騒音を訴える近隣住民が斧を振り回すという事件も起きた。兵庫県では訴訟も起きている。

 それに対して東京都議会では、「騒音条例の対象の中から子供の声を除外する」という動きもあるが、子供嫌い社会は変わるだろうか。保坂区長が語る。

「昔は子供の数も多く、住宅街の路地は子供の遊び場でした。ベーゴマや缶蹴りなどをして遊んだことがある大人は大勢いるんじゃないでしょうか。でも、いつからか、日本の社会は子供の声を聞かない社会になってしまった。それをもう一度、子供の声が聞こえる社会にしていくことは大変です。泣きながら保活をしている親御さんたちを見ていると、どうにかしなければ、と思うのですが…」

 少子化と待機児童問題を解決するためには、国でも自治体でもない、実は地域住民の理解がまず大前提なのだ。選挙権もない子供たちの力は弱い。そんな彼ら彼女らが大きくなった時、果たしてこの社会で子供を産み育てたいと思ってくれるだろうか。

※女性セブン2014年11月20日号


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