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出生率1.8をどう実現するか

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【原英史・株式会社政策工房 代表取締役社長】 

 「地方創生」の戦略を検討する「まち・ひと・しごと創生会議」(民間人有識者12名で構成)では、年内に「長期ビジョン」と「総合戦略」を策定することになっており、11月6日、それらの骨子案が提示された。

 「地方創生」に関する重要論点のひとつが人口問題だ。このまま推移すれば、人口縮小、地方からの人口流出によって、相当数の自治体が消滅してしまうというのが、政府の問題意識の出発点のひとつだ。
 

 今回の「長期ビジョン」骨子案では、この人口問題について、以下の「目指すべき将来の方向」が示された。

1)「50年後1億人」を確保すべく、人口減少に歯止めをかける。このため、出生率1.8程度(OECD諸国の半数以上が実現している水準)への改善を目指す。

2)東京一極集中を是正する。

 

 ここで、2)の「東京一極集中の是正」が出てくるのは、「東京一極集中が出生率低下を招いている」との認識に基づく。

 だが、現状ではたしかに都市部での出生率が地方を下回るが、各国との比較からも、「都市部では出生率が低い」という必然性はない。むしろ、都市部で適切な少子化対策を講じれば、人口問題の解決は可能なはずであり、「東京一極集中」が是正すべきことなのかどうかは、別問題だ。

 
 「東京一極集中」の問題については、改めて論ずることとし、本稿では、「出生率」の問題を取り上げたい。

 

 フランス(2.01)、イギリス(2.00)、スウェーデン(1.98)、アメリカ(1.93)など(いずれも2010年データ)、多くの国で出生率1.8以上がクリアされており(特にフランス・イギリス・スウェーデンでは、この10~20年で相当程度の改善)、我が国(1.4程度)に改善の可能性があることはそのとおりであろう。

(参考)内閣府資料(19ページ)

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/souseikaigi/dai1/sankou.pdf

 ただ、問題は、いかにして実現するかだ。

 

 現状のデータを分析すると、

(1)結婚した夫婦の理想の子供数・現実の子供数は、ここ30-40年ほど大きな変

化はない(図1)。                                                  【図1】            
                  (出所:平成26年版少子化社会対策白書)
 
(2)一方、30代未婚率は、ここ30年で平均7%程度から30%程度まで急増(図2)。
   これが、少子化を進行させている大きな要因である。                          【図2】
                    (出所:平成26年版少子化社会対策白書)
 
 これを踏まえ、少子化対策としては、以下の2点の解決を図ることが有効と考えられる。

(1)理想の子供数を、多くの夫婦が経済的理由であきらめていること(図3)。
                                【図3】     
              (出所:平成26年版少子化社会対策白書)

(2)不安定であるが故に結婚に踏み切れない人(特に男性)が、未婚率を高めている

こと(図4)。                                         【図4】 
                    (出所:平成26年版少子化社会対策白書)
                    
 具体的には、

・子育て給付拡大、税制などを通じ、育児のコスト低減、

・待機児童解消など、保育環境の整備(株式会社と社会福祉法人のイコールフッティング、保育士配置基準の見直しなど)、

・雇用改革(同一労働同一賃金を軸として若者の雇用環境改善、いちど出産で仕事をやめても復帰して活躍できる環境整備など)

といった対策が必要だ。

 とりわけ、予算措置だけにとどまらず、「保育」「雇用」の分野で、いわゆる岩盤規制に切り込むことができるかどうか。「出生率1.8」を口先だけの目標にとどめず、実現できるかどうかの試金石だ。

 

 

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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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