野党が「抵抗路線」に転換した2つの理由

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【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】

 女性閣僚のダブル辞任を受け、国会の審議が停滞し始めた。野党は閣僚交代を理由に、21日の衆院本会議で法案審議を拒否。労働者派遣法改正案など重要法案の審議日程を先送りさせた。「是々非々」を名乗っていた野党はなぜ、抵抗路線に転換したのだろうか。

 
 小渕優子経済産業相と松島みどり法相は20日、政治資金問題や公職選挙法違反疑惑の責任をとって辞任。安倍晋三首相は後任にそれぞれ宮沢洋一氏と上川陽子氏を充てることを決め、2人は翌21日の認証式を経て正式に就任した。

 
 21日は元々衆院本会議が予定され、土砂災害防止法改正案が審議入りするはずだった。しかし、野党各党はそろって「閣僚の認証式の日に審議入りした例は聞いたことがない」と反発。本会議への出席を拒否する姿勢を示し、同法の審議入りを23日に先送りさせた。

 
 参院の外交防衛委員会では、片山さつき委員長(自民党)が政府の答弁を事前に入手していたことが発覚。野党は「中立性が疑われる」と主張して審議を拒否し、結局そのまま審議を途中で打ち切った。

 野党側の狙いは重要法案の成立を阻止すること。本会議は定例日が決まっており、衆院の場合は火曜、木曜、金曜の3日だけ。特別な理由がない限り、月曜や水曜、はたまた週末に開くことはない。本会議は全議員が出席対象となるため、定例日であっても国会や政府の重要な案件と重なれば開催は見送られる。

 
 21日(火)での審議を拒否すると、次は最短で23日(木)の本会議となる。そうなると本来、23日の審議入りが想定されていた労働者派遣法改正案が玉突きで28日に先送りとなる。民主党は支持母体である連合の強い要請で派遣法改正案に反対しており、今国会での時間切れに追い込みたい。他の野党も重要法案の成立を遅らせ、安倍政権の求心力を低下させたい思惑がのぞく。

 
 「是々非々」や「建設的野党」を名乗り、安倍政権への協力姿勢を打ち出していた維新の党やみんなの党まで日程闘争に転じた理由とは何か。一つはなかなか党勢が上向かないことへの焦りだ。

 
 
 産経新聞とFNNが今月18~19日に実施した世論調査によると、内閣支持率は2.7ポイント下落の53.0%。小渕優子経済産業相の辞任が取りざたされていたにも関わらず50%台を維持。自民党の支持率も38.1%と高い水準を保った。

 
 対する野党は民主党の6.6%が最高で、維新の党4.4%、共産党3.3%、みんなの党1.4%と「どんぐりの背比べ」状態。半年後に統一地方選、来年夏にも衆院選が見込まれるという状況で、与党の失策をなるべくアピールし、自分たちの支持率を上げたいという本音がちらつく。

 
 二つ目の理由は日程闘争や審議拒否といった手法が有効であるという現実だ。民主党は政権を担う前の野党時代、小沢一郎氏を先頭に徹底して「抵抗野党」を演じた。ねじれ国会を存分に利用し、審議拒否や参院での法案たなざらし、国家同意人事の反対、物理的な本会議の開会阻止などあらゆる手を使って自公政権の邪魔をした。

 
 その結果が「決められない政治」であり、批判の矛先は民主党ではなく与党に向かった。政権の求心力は低下し、官僚たちも離れていった。政府・与党の支持率はどんどん下がり、2009年の総選挙で与党は惨敗。民主党に政権の座が渡ったのは周知の通りである。

 
 ただ、国民もバカではない。「非自民」として選択した民主党政権が失敗したのは記憶に新しいし、「牛歩戦術」などを繰り返した社会党のような、前近代的な抵抗路線に嫌悪感を持つ国民は増えている。

 
 野党が21日の本会議を拒否した理由など、国民にとっては到底理解できない話。片山さつき委員長の不祥事も稚拙ではあるものの、審議を止めなければならないほど深刻な問題とは思えない。野党が抵抗すれば、国民生活にとって重要な法案まで成立が先送りされていく。

 
 国民不在の国会闘争に明け暮れていれば、野党の支持率が伸びるどころか、無党派層が増えるだけという結果になりかねない。 

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