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今週の永田町(2014.10.28~11.5)

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先週10月28日には派遣労働者の柔軟な働き方を認める「労働者派遣法改正案」が、31日には女性の採用・昇進機会を増やす取り組み加速を企業などに促すための「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」が、衆議院本会議での趣旨説明と質疑が行われ、審議入りとなった。

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。

  衆議院インターネット審議中継参議院インターネット審議中継  
【派遣法改正案、委員会審議入りでも混乱】

労働者派遣法改正案は、一部の専門業務を除き企業の派遣受け入れ期間の上限規制(最長3年)を撤廃する一方、派遣労働者一人ひとりの派遣期間の上限は原則3年に制限し、派遣会社には3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置を義務づける内容だ。

 

28日の衆議院本会議で行われた質疑では、同法案に反対する民主党や共産党、社民党などは「企業が派遣を使い続けることができるようになり、雇用が不安定な派遣労働者が増える」「格差が固定化され、低賃金労働者を増大させかねない」などと批判して徹底抗戦の構えをみせた。

これに対し、安倍総理は、正社員になるための教育訓練を派遣元企業に義務づけていることや、正社員になったり別の会社で働き続けられたりする措置を同法案で義務付けていることなどを挙げて「派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化している」と説明し、「派遣労働者の雇用の安定を図り、多様な働き方の実現をめざすものだ」と理解を求めた。

 

臨時国会中に成立させたい与党は、安倍総理がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席など海外出張する前の7日にも、安倍総理出席のもと衆議院厚生労働委員会で締めくくり総括質疑を行う方針だ。参議院での審議入りは、安倍総理が外遊から帰国する19日以降になるとみられている。

ただ、閣僚の「政治とカネ」問題で審議入りがずれ込んで国会日程が窮屈なものとなっているうえ、衆議院厚生労働委員会での審議も遅れが生じている。

31日の衆議院厚生労働委員会で実質審議入りする予定だったが、野党側が強く反発しため、委員会が流会となった。公明党が、廃案に追い込みたい野党側の主張を取り込んで同法案の成立に道筋をつけるねらいから、派遣就業が臨時的・一時的なものとの原則を考慮するよう厚生労働大臣に求めると明記した修正案骨子を、厚生労働委員会理事会で提示したからだ。民主党などが「法案に問題点があることを認めた」「修正するなら政府が法案を出し直すべき」「野党の質疑も一巡していないのに修正案の提示はおかしい」などと抵抗したのである。

 

野党の反発により実質審議入りが持ち越されたことで、4日、公明党が円滑な国会審議を優先して、修正案撤回を厚生労働委員会理事懇談会で申し出た。しかし、野党側がこれに納得せず「欠陥法案は出し直すべき」などと主張したため、協議は平行線をたどった。このことから、渡辺博道委員長(自民党)は、労働者派遣法改正案の質疑を5日に行うことを職権で決定した。

野党側は、委員会開催を職権できめたことに5日の厚生労働委員会理事会で抗議するものの、5日の審議には応じるという。ただ、衆議院での審議・採決日程は流動的で、これまで以上に、会期内成立が危うくなっている。

 
 

【女性活躍推進法案ではその実効性が焦点に】

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案<2016年度4月1日から10年間の時限立法>は、従業員301人以上の大企業、国・地方自治体に、採用者や管理職に占める女性割合、勤続年数の男女差などを把握したうえで、各企業の自主判断で最低1項目の数値目標を盛り込んだ行動計画を作成・公表するよう義務付ける内容となっている。国に虚偽報告などを行った場合の罰則が設けられており、国は必要に応じて助言や指導、勧告はできるとしている。

 

ただ、同法案は数値目標を設定・公表しない企業への罰則はなく、企業の自主性を重んじて一律の数値目標が設けられていない。また、従業員300人以下の企業は、数値目標を盛り込んだ行動計画の作成・公表について努力義務にとどまっている。野党は、こうした点に注目して、実効性が担保されるかどうかについて追及していく方針だ。また、女性の正社員化などの施策がないことについても取り上げるという。

 

 

【地方創生関連2法案は衆議院通過へ】

安倍内閣が最重要課題と位置付ける、地方創生の基本理念などを定めた「まち・ひと・しごと法案」、地域支援をめぐる各省への申請窓口を一元化するとともに活性化に取り組む自治体を支援するための「地域再生法改正案」は、11月5日の衆議院地方創生特別委員会で締めくくり質疑と採決を、翌6日の衆議院本会議で採決を行うこととなった。地方創生2法案は、委員会および本会議でそれぞれ与党の賛成多数により可決され、参議院に送付される見通しだ。

 

 これに対し、野党側は、政府が提出した地方創生関連2法案について「中身がなく取り組みとして不十分」「地域主権の理念を欠いている」などと批判しており、採決を急ぐ与党側を牽制している。

31日には、民主党・維新の党・みんなの党・生活の党は、政府案の対案として「国と地方公共団体との関係の抜本的な改革の推進に関する法律案」を共同提出した。同法案は、民主党が主張する地方自治体への一括交付金の復活や、維新の党・みんなの党が求める道州制導入に向けて権限・財源の移譲など法制上の措置を講ずることや、国の出先機関の統廃合なども含めた国・地方の役割分担の見直しなどが盛り込まれている。交付金のバラマキとならないよう、各省庁に分かれていた申請窓口を内閣府に一元化することや、自治体に事業の目標設定や効果の検証を求めることなども明記されている。

 

 このほか、土石流や地滑りなどで住民の命に危険が生じる場所を土砂災害警戒区域に指定に先立って基礎調査を実施し、その結果公表を都道府県に義務付ける「土砂災害防止法改正案」が4日の衆議院本会議で全会一致により可決した。
 また、東京電力福島第一原発事故の除染で発生した汚染土などを保管する中間貯蔵施設に関することや、安全確保など国の責任を明記して30年以内に福島県外で最終処分を完了させることなどについて規定した「日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案」も賛成多数により可決した。両案とも参議院での審議を経て臨時国会中に成立する見通しだ。

 

 

【参院選改革案、一本化できない自民党に批判続出】

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐっては、31日、参議院の各党代表者で構成する選挙制度協議会(座長:伊達・参議院自民党幹事長)の会合が開催された。自民党と民主党は、それぞれ参議院選挙制度改革案を提示した。

 民主党は、脇前座長が示した隣接22府県を11選挙区に合区する案をベースに、東京選挙区を2選挙区に分割(23区内が改選数4、23区外が改選数2)するなど、23都府県を13選挙区に再編する案を提示した。

 

一方、自民党は、(1)改選2人区のうち人口の少ない3県(宮城・新潟・長野)を1人区にし、北海道・東京・兵庫の改選議席を1議席増やす「6増6減」および比例代表の定数を削減して選挙区の定数を割り振る組み合わせ案、(2)人口の多い選挙区の一部を人口の少ない選挙区に加える選挙区域調整案、(3)人口の少ない隣接選挙区を統合する「合区」案、(4)「6増6減」案および人口の少ない選挙区同士を合区する組み合わせ案、の4案を提示した。

29日、自民党の溝手議員会長は、党所属参議院議員の総会で4案を提示して、理解を求めた。出席者からは「抜本改革案を示すべき」「4案の提示は無責任」といった意見も出されたが、最終的な対応を溝手議員会長に一任することとなった。当初、選挙区域調整案や合区案について対象地域を明示することも検討されていたが、党内からの反発に押されて見送った。

 

 こうした自民党案に、民主党など野党各党は、31日の協議会会合で「なぜ一つの案ではないのか。議論が進まない」「自民党にはまとめる気がない。第一党としての責任で一案にすべき」などの批判が続出した。議論が紛糾したことから、伊達座長は、次回会合(11月14日)までに再検討するよう自民党に要請して、その場をおさめた。

協議会は年内に意見集約し、来年の通常国会で関連法を成立させることをめざしている。しかし、参議院自民党執行部は「一本にまとめるのは困難」(溝手議員会長、29日の参議院議員総会)とみているうえ、与野党の歩み寄りも期待できない状況にある。今後の調整作業は、難航しそうだ。

 

 

【消費税率引き上げ判断のための点検会合がスタート】

 2015年10月に消費税率10%への引き上げを実施するか否かを安倍総理が最終判断するのを前に、政府は、11月4日から日本経済に与える影響などを検証する「今後の経済財政動向等についての点検会合」をスタートさせた。

 

点検会合は、11月18日までの間に計5回開催する予定で、政府からは麻生財務大臣や黒田日銀総裁、甘利経済再生担当大臣らが出席する。ヒアリング対象の有識者には、経済界・消費者団体・労働組合の各代表のほか、中小企業の経営者、自治体首長、学者や民間エコノミストら計45人が出席する予定だ。有識者は、経済の現状評価のほか、消費税率引き上げの場合と引き上げない場合のそれぞれの影響、再増税時の景気対策などについて意見を述べる。

4日の初会合では、須田善明・宮城県女川町長、三村明夫・日本商工会議所会頭、古賀伸明・連合会長、荻上チキ・シノドス編集長、河野康子・全国消費者団体連絡会事務局長、伊藤隆敏・政策研究大学院大教授、加藤淳子・東京大学大学院教授、安倍総理の経済ブレーンの浜田宏一・内閣官房参与から意見聴取した。三村会頭や古賀会長、伊藤教授ら5人が再増税に賛成・容認(条件付き含む)、浜田氏や荻上氏、河野事務局長の3人が慎重(先送り)・反対を表明した。

 

安倍総理は、17日に内閣府が発表する7~9月期の国内総生産(GDP)速報値などの経済指標のほか、点検会合でのヒアリング結果も踏まえ、12月上旬にも最終決断する予定だ。

消費低迷の長期化や円安などに伴ってエネルギー価格が高騰していることもあり、政府内では、景気を下支えするための補正予算案の編成が浮上している。点検会合と経済指標を踏まえつつ、安倍総理が、11月中旬にも経済財政諮問会議などの場で、経済対策を盛り込んだ補正予算案の編成を麻生財務大臣ら関係閣僚に指示する方向で調整中だという。安倍総理が消費税率10%への引き上げを決断した場合には、2015年当初予算で駆け込み需要の反動減対策を盛り込むことも検討しているようだ。

 

 一方、消費税率引き上げの凍結を主張している維新の党・みんなの党・生活の党は、11月4日、消費税増税凍結法案(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案)を衆議院に共同提出した。自民党・公明党と消費税率引き上げで合意した民主党は、共同提出への参加を見送った。

同法案は、2012年に成立した消費税増税法を改正して増税条件を厳しくすることで、消費税率引き上げを事実上延期するよう政府に求める内容となっている。消費税率の引上げにあたり、「経済状況の好転」を判断する指標として「経済成長率」「物価動向」「実質賃金」「完全失業率」などを確認することを求めるほか、引き上げの新たな条件として、(1)国会議員の定数削減、(2)国会議員の歳費及び期末手当の削減、(3)歳入庁の設置、(4)特別会計の見直し及び国の不要な資産の売却その他歳出の削減及び歳入の増加を図るため必要な措置を講ずることの「身を切る改革」も明記している。

 

 消費税率引き上げをめぐっては、政府・与党内でも賛否が分かれる。また、閣僚の政治とカネ問題の追及などで共闘を模索する民主党や維新の党なども、政策的な溝が横たわっている。安倍総理の12月上旬の最終判断を前に、賛成・容認派と慎重・反対派の論戦、水面下での駆け引きなどが活発になっていきそうだ。

 

 

【主要法案の審議の行方に注目を】

 10月30日に開かれた衆議院予算委員会での集中審議や、11月4日に開かれた参議院予算委員会での集中審議、衆参両院の本会議・委員会審議で、民主党などが、江渡防衛大臣や宮沢経済産業大臣、西川農林水産大臣、望月環境大臣、有村女性活躍担当大臣らの「政治とカネ」問題や閣僚の資質問題、安倍総理の任命責任を追及し続けた。

 その一方で、民主党の枝野幹事長、大畠前幹事長、政治とカネ問題を追及してきた近藤衆議院議員のほか、維新の党の江田共同代表ら野党側でも、政治資金収支報告書での不適切な記載・不明瞭な会計処理などが発覚し、収支報告書の訂正が続いた。与野党が国会内外で議員スキャンダルを追及しあう、引く引けない応酬合戦となっている。

 

 臨時国会の会期(11月30日) が残り1カ月を切った。限られた審議時間のなかで、安倍総理が最重要法案と位置づける「地方創生関連2法案」「女性活躍推進法案」や、与野党対決法案の代表格である「労働者派遣法改正案」などの主要法案が、今度、どのように審議・採決が進んでいくのだろうか。水面下での与野党の駆け引きも含めたそれぞれの審議状況をみておくことが大切だ。

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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