“霊幻道士”がダーク・ホラーに! 『キョンシー』制作・清水崇「自分が死んだことを想像して悲しく恐くなる映画」[ホラー通信]

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ジュノ&清水監督1

一世を風靡した「霊幻道士」が、ダーク・ホラーとして復活! 『呪怨』の清水崇制作、ポップ・シンガーであり、ファッションデザイナーであり、映画俳優、監督、脚本家、プロデューサーをこなす多才なクリエイター、ジュノ・マックが監督を務めた『キョンシー』。25日から開催中の『シッチェス映画祭 ファンタスティック・セレクション2014』の目玉作品として上映がスタートしています。

筆者は昨年の東京国際映画祭で鑑賞しましたが、頭にお札を貼ってピョンピョンと飛び跳ねるあのキュートなキョンシーとは大違い!(notテンテン!)。これまで観たことの無い暗くて美しい映像と、全く先が読めない展開にハラハラしてしまいました。この映画を作るきっかけやこだわりなど、ジュノ・マック監督と清水崇さんにお話を伺ってきました。

キョンシー_メイン_CGI_Still_TwinGhosts (2)

Q:日本でキョンシーといえば、可愛いイメージがあるので、今回作品を拝見してイメージが全く異なり驚きました。なぜキョンシーを題材にして、また、ダークホラーとして映画をつくろうと思ったのでしょうか?

ジュノ・マック監督:より大人の方に観ていただきたいキョンシー映画をつくりたかった。キャストはオリジナルの霊幻道士シリーズに出演した方たちをできる限り集結することができました。しかし、さすがに30年くらい経っているわけですから、物語も純粋なホラーというよりは、“忘れ去られることへの恐怖”というものを核に、よりダークなストーリーに仕上げました。それはとても普遍的な感情なのではないかと思います。キャスト自身も歳を重ねて様々なことを経験してきて、人生の中にもアップダウンがあって、だからそういった実際の彼らの経験も含めて、何か今までとは違うキョンシー像をつくりたかったのです。

Q:キョンシーといえば、四角い帽子を思い浮かべますが、今回のキョンシーは今までのビジュアルとは随分違いますね。なぜこのようなビジュアルにしたのでしょうか?

ジュノ・マック監督:霊幻道士やキョンシーを知っている方は、そのジャンプの仕方やファッションなど見慣れている部分があるし、アイコンとして強く意識に刻まれているので、ついユーモアと結びつけてしまうところが多いと思うんです。しかし、最初にお話したように、よりダークな世界観をつくろうと思ったときに、やはりウケるようなことをしたくなかった。これまでのキョンシーもので使用された小道具などを我々なりに研究して、「あ、なんかこれ見たことあるな」と思うんだけど新しい、そういうものを作りだすことが必要でした。具体的には、キョンシーが首にかける“銭”をどういう風に使用したらよいかと研究していたときに、たまたま糸が切れて床にバラバラと落ちてなってしまったのを見て、とても美しいなと思ったんです。それで、じゃあこれをモチーフにそれが同じ力を持ちながらカムのさえぎれる霊力をもつ表現にしてみたらどうだろうと発想していきました。そうすると、なんとなく見たことがあるようで、見たことがないものに仕上がってきました。

清水監督:キョンシーは中国でのゾンビで、飛び跳ねるのは死体だから間接が硬直しているから。ただこれがすごいのは、魂を失った抜け殻の死体だけが動くというのだけでなく、肉体を失った幽霊の魂が同じ世界観にでてくる。本当は相反するものなので、すごいなと思いました。この前一緒に違う企画を僕とやっているプロデューサーが、「魂と抜け殻が一緒に出る映画はないだろ!これをやったらどうだ清水!」と言われて、「いやいや既にやっている映画あるよ、観に来れば?」って言って(笑)その人もこの映画を観て大絶賛していましたね。

Q:今回清水監督と組まれることになったきっかけを教えてください。

ジュノ・マック:元々清水監督のファンというところもあるのですが、今回の映画のムードみたいなものが、何か監督と通ずるものがあるのではと思いました。また、当時清水さんに観ていいただいた段階では三時間近いものでした。特に初監督作品ということで、道をガイドしてくれるような、新しい声を求めた結果、是非相談してみたいと思ったのがきっかけです。やはりどうしても自分で脚本の執筆、監督、編集と全て行っていると、自分の作品に固執しすぎてしまい、どうしようもなくなってしまう、道が見えなくなってしまうということがあります。そんな中で、何か導いていただけないかということでご相談したかった。また、キョンシーという映画については、清水さんとコラボすることによって、二人のケミストリーのようなものが起きるんじゃないかという予感がありました。また、今回は香港のキョンシーものということで、コメディやアクションなど、“キョンシーはこうあるべき”という思い込みが香港の映画人であればさらに強くなると思い、あえてスタッフは香港以外の方をスタッフィングしているんです。その中でも、清水さんには参加していただきたかったですし、新しいビジョン、道というものに気づきたかったんです。

清水監督:彼は元々俳優をやっていて、そのときに知人からの紹介で面識はあったのですが、初監督をすると聞いてどんな作品をつくるんだろうと思っていました。まさか“キョンシー”をやるとは思っていなかったですね。しかも、彼の中で企画内容がしっかり固まっている製作途中の段階で急に僕に話しがきて、サポートをしてくれと言われたので何故だろう?思っていました。たけど、彼が日本まで来て説明をしてくれたり、映像のラフカットを見せてくれたり、色々理由を聞く中で全く新しく違った“キョンシー”ものに果敢にチャレンジしていることを知りました。僕もちょうど、『魔女の宅急便』というホラーのイメージからファンタジーといったイメージチェンジを計っていた時期だったんですね。なので、そういった新しい何かに挑戦する人、しかも初監督でそれをやろうとするところにすごく感銘を受けて、自分で何かサポートができるなら是非にということで、引き受けました。

Q:清水監督は今回プロデューサーという立場で関わられていますが、具体的にどのように関わられていたのでしょうか?撮影現場にも足を運ばれましたか?

清水監督:僕は自作『魔女の宅急便』の準備に追われていたので、撮影現場には行くことが出来なかったんです。なので、オリジナルの霊幻道士に出演している名優たちが本作にも出演するのは聞いていたんですが、僕が、彼らに直接プロデューサーとして会えたのは、香港でのプレミアの時で。撮影現場には顔を見せれていないので、きっと誰だ、この日本人…と思われるだろうと踏んでいたんですが、皆さん、非常に心よく迎えてくださって感激しました。僕も子供のときから映画で観ている人達ばかりですから、映画作りの世界で生きてきて良かった!と思える瞬間でしたね。
今回はクリエイティブ面のプロデューサーとして関わらせてもらいましたが、具体的には、ホラーの演出としてこういう場面ではどうしたらいいかということを聞かれて、こういう音はどうだろうだとかのアドバイスをしました。経験値の問題だけなので、逆にアドバイスというと偉そうなんですが(笑)初監督の人ほどパッションをもっているので、逆に僕はジュノの情熱に刺激されました。大手のエンターテイメント会社やプロデューサーの仕組みでやろうとすると、やりたくでも許されないこともでてきたり、当たり前のことを求められるようになるから、今の内に好きなようにした方がいいという想いもありました。

Q:スタイリッシュな映像が印象的ですが、意識された作品、影響を受けた作家などいらっしゃいますか?

ジュノ・マック監督:この作品をつくるにあたって観た作品はないですが、この映画のテイストは本来自分が好きなものです。色んな作品が好きだから悩むけど、『シャイニング』など急に驚かすのではなく、ゆっくりとした語り口の中で恐怖がじわじわと滲むような作品は好きですね。好みが反映されているという点においては、キョンシーのデザインがそれにあたります。水中で撮影することになったあの流れるような動きやダークなドレープの多いファッションなどは、自分の好みが反映されています。

Q:一番こだわった部分やお気に入りのシーンを教えてください。

ジュノ・マック監督:パウ・ヘイチンさんの周りを霊が囲むシーンで、カメラがぐるっと囲みながらの撮影が一番大変だったのでそれを挙げたいと思います。

清水監督:亡くなった夫に蘇ってほしいと願い、キョンシーにしてしまうことになる夫婦のやりとりをするシーンはじっくり観てほしいですね。ずっとカメラが回っているだけで、彼女が死体の夫に話しかけるシーンはこの映画の前後関係何にも知らなくても、彼女の演技が上手すぎて泣けてくるんですよね。

Q:ジュノ・マック監督は俳優としてもご活躍されていますが、清水監督ご自身がこの作品を監督するとしたら、彼にどの役を演じさせたいですか?

ジュノ・マック監督:僕は役者として清水監督の作品に参加したいです。なんでもいいです。どんな役でもいいです(笑)

清水監督:本当?!じゃあ水中でジャンプさせようか(笑)ジュノはすごいかっこいいから、スマートでクールで人を殺すようなとんでもない悪い男なんだけど、普通の人が当たり前に持っている何かが抜けていて、それが笑えるといった役はどうかと(笑)

ジュノ・マック監督:じゃあ来月入りましょう(笑)

清水監督:でも忙しいでしょ(笑)

ジュノ・マック監督:時間つくります(笑)

Q:今回日本では「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2014」での目玉として上映されますが、日本で上映されることについてのお気持ちを伺えますでしょうか?

ジュノ・マック監督:やはりとても嬉しいですね。東京国際映画祭で清水さんにも来ていただき、何回かお見せすることはできましたが、日本の方も霊幻道士シリーズやキョンシーを好きな方がいて、その方たちが非常にフレンドリーな形でこの作品を受け止めてくださいました。当時劇場公開の話をしていましたが、あっという間にその時間が訪れ、遂に観ていただけるということで非常に楽しみに思っています。

清水監督:次回作はいくつかあるのですが、どれもまだはっきりしていないんです。シンガポールやアメリカで撮影予定ものやタイトルがはっきりしないものも、はっきりしているけれどまだ話しては駄目なものなど色々あります。ホラー映画を撮りたいといいながら、ゾンビ映画もあるし、ホラーもミステリーもありますよ。

Q:これからご覧になる方へメッセージをお願いします。

ジュノ:観たことがない映画だと思います。是非楽しんで観てください。

清水:自分が死んだ後のことを想像して、悲しく寂しく無気力になることを怖くなるような映画なので、新しい怖さだと思います。これでキョンシーを初めて知った人も昔のキョンシー映画を知っている人も観た後にオリジナルを観てほしいですね。いかに違うか、いかにこの新しいキョンシーがすごい映画かということを知ってほしいです。

「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2014」 
2014年10月25日(土)~
東京:ヒューマントラストシネマ渋谷 大阪:シネ・リーブル梅田 名古屋:シネマスコーレ 福岡:福岡中洲大洋にて6作品一挙公開!!
http://www.shochiku.co.jp/sitgesfanta/

『キョンシー』、『ボーグマン』は特集上映終了後も通常興行として上映予定!

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藤本エリ

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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