銀行が「内定者向けローン」取り扱い開始 専門家は「カネがないなら卒業旅行はガマンしろ」と警告

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銀行が「内定者向けローン」取り扱い開始 専門家は「カネがないなら卒業旅行はガマンしろ」と警告

10月1日の内定解禁日を受けて、新社会人をターゲットとした商品が出始めている。東京都民銀行が10月1日から扱っている「大学卒業予定者ローン」も、そのひとつだ。

4月以降の勤務先が決まっている学生に対し、卒業旅行や運転自動車免許取得などの「健全な生活設計資金」に充てることを条件に、最大50万円まで無担保で融資をするというサービスだ。
利用者の主張「親に甘えず自分で借りて返したい」

東京都民銀行HPより。

ウェブサイトによると、この商品の金利は年8.8%。契約時にクレジットカードを申し込むと0.5%下がり、就職後に給与振込先を東京都民銀行の口座に指定するとさらに1.0%ダウンする。実質7.3%というところだ。

他のローンと少し違うのが、申し込み時の書類だ。普通預金通帳や印鑑だけでなく、学生証などの在学を証明する書類と「内定通知書の写し」が必要になる。勤務先の規模の大小は問わないが、原則として東京やその周辺に事業所があることが条件になる。

東京都民銀行の広報担当者によると、この内定者向けローンは90年代半ばにサービス開始。例年利用者がいるという。審査時には使い道を聞くといい、他の借金の返済や投資目的など「健全」ではないものはダメだ。やはり卒業旅行などが多いという。

「利用者は、真面目な学生が多い印象ですね。社会人で独立するにあたって、『親に甘えるのではなく、自分でお金を借りて返したい』という学生もいました」

通常、学生は安定した収入がないために、銀行でローンを組むことができない。消費者金融の学生ローンなどでは、金利が15%くらいになることもある。こうしたものと比較すると大学卒業予定者ローンの8.8%という金利は低いという。

似たような学生向けローンは他銀行にもある。武蔵野銀行の「むさしの新卒予定者応援ローンROOKIE」では、内定先が決まっていて、その他の条件を満たす学生に30万円まで貸し出している。金利は8%だが、クレジットカード契約や給与振込口座の指定をすると6%まで下げることができる。
ファイナンシャルプラインナーは「給料出る前に借金作るな」

就職活動中はアルバイトがしにくく、内定が出た後に、いざ卒業旅行と思っても金欠という事態もある。学生のニーズをうまく読み取ったサービスと言えなくもない。

ただ、専門家の中にはこうした内定者向けローンに否定的な人もいる。ファイナンシャルプラインナーのA氏は、「学生は利用してはいけません」と強く主張している。

「最近は多くの学生が奨学金を借りており、社会人になって返済に苦労する人も増えています。それなのに、実際に給料が出る前に新たに借金を作っていいのでしょうか?」

日本学生支援機構が今年2月に発表した調査結果によると、奨学金を受給する学生の割合は年々増えており、2012年度は大学の昼間部で過去最高の52.5%となった。

社会人になれば給料が入ってくるから大丈夫、と思うかも知れない。しかし最近は社宅や家賃補助のない会社も多く、仕送りを受けてバイトもしていた学生時代の方が経済的に余裕がある事態もありえるため、返済がきつくなる可能性があるとする。

「7~8%の金利も高いです。お金がないのなら自分でアルバイトすればいいし、卒業旅行などは諦めればいい。親元にお金があるなら『なぜお金が必要なのか』をプレゼンして、親から借りましょう」
ローンは「プロモーション」も兼ねている

A氏は、将来学生の負担になりかねないローンを銀行が取り扱うことに疑問を感じるとし、次のようにも語っていた。

「そもそもこのローンの目的は、クレジットカードの加入を促し、自行を給与振込口座に指定してもらうことだと思われます。プロモーション的な目的に、立場の弱い学生向けのローンをくっつけるのはいかがなものでしょうか」

社会人になることで、経済的な責任は一気に高くなる。どんな金融商品も自分なりに情報を集め、リスクとメリットを慎重に考えて利用すべきだろう。

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