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THE NOVEMBERSがドロップする新作アルバム「Rhapsody in beauty」で描いたマーケティングの全貌(Part1)

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posted by 高野修平

THE NOVEMBERSがドロップする新作アルバム「Rhapsody in beauty」で描いたマーケティングの全貌(Part1)

THE NOVEMBERSが10月15日にニュー・アルバム「Rhapsody in beauty」をリリースします。今回のアルバムは「美」と「ノイズ」がテーマとして創られています。

同時に「パラレルワールド」というものが重要なモチーフとして作品を支えています。そして、この「パラレルワールド」は音楽を届ける、伝えるという部分においても大切なコンセプトとして僕らチームの中で共有されていました。

今回、5月に発売したシングル「今日も生きたね」に引き続き、「Rhapsody in beauty」に関わるすべてのクリエイティブディレクター、コミュニケーションデザイン、PRプランナー、コピーライターとして担当させていただきました。

作品の意図や世界はヴォーカルである小林祐介くんのインタビューやブログなどで感じて頂ければと思いますが、僕はコミュニケーションとマーケティングという観点から、「Rhapsody in beauty」を描いていきたいと思います。

ただ、施策がとても多いので連載形式に述べていきます。今回はアルバム発売前のおはなしのPart1です。

◆「パラレルワールド」というコンセプトから生まれるコミュニケーションデザイン

そもそも「パラレルワールド」とは、ある時点を境に分岐した“ここ”とは別の並行世界を意味する言葉です。現在とは別の未来、別の可能性を意味するものです。

これから綴っていく「Rhapsody in beauty」のマーケティングコミュニケーションは、すべて「パラレルワールド」を軸に展開していくこととなります。つまり、あらゆる施策にふたつのバージョンが存在する、もしくは二段構えのプランニングになっています。

小林祐介くんは「パラレルワールド」について以下のように述べています。

「Rhapsody in beauty」は僕にとって、ある時を境に分岐したTHE NOVEMBERSにとっての“パラレルワールド”を“現在”として仮説的に表現した作品です。

ニュー・アルバムをリリースするにあたって、当然ながらフィジカルのアルバムが売れることがひとつの目的として定めるわけですが、THE NOVEMBERSの場合、リリース直後から始まるツアーもあるので、ライブに人が来てくれることも重要な目的にあたります。

同時に今回のニュー・アルバム発売とツアーに向けて「いかにTHE NOVEMBERSへの関与度を高めるか」「THE NOVEMBERS最近良く見るなあ」という空気をファンとファン以外に作れるかがポイントでした。

そのためには「終わらないニュースの創出」つまり、戦略PRをうまく活用していくことが要としてありました。シングル「今日も生きたね」もどれだけニュースを生み出せるかがコミュニケーションデザインを考える上で、重要でした。

「アルバムが出ます」「ツアーやります」「広告出稿します」「アルバム出ました」ではなく、アルバム発売前からアルバム発売、そしてツアーへと中長期的なロードマップを戦略的に描きながら考える必要がありました。

そこに必要となるのは、物語/文脈を作り出すことであり、点と点をつなげて線にし、圧を高めることです。そして、人々の言の葉にのっていくかどうかです。

◆施策1:アートディレクターtobirdによるニュー・アルバムのジャケット公開

7月のツアーファイナルを実施した六本木EXシアターでの最後に新しいアルバムとツアーを発表し、後日ニュースにもなったので、布石はありましたが、物語は9月から始まりました。

まずは「Rhapsody in beauty」のジャケット公開のニュースです。もちろん、このニュースはTHE NOVEMBERSファンの中で盛り上がることが目的でした。物事の影響範囲を大きくしていくときには必ず「盛り上がりの種」を蒔かなければいけません。そして、その「盛り上がりの種」はファンからではないと発芽しないのです。

THE NOVEMBERSのジャケットはこれまですべてアートディレクターであるtobirdが制作しています。モノクロに描かれた世界と幻想的で寓話的なイラストはTHE NOVEMBERSの世界を構築する重要な役割を担っています。

それが、シングル「今日も生きたね」のジャケットの際に初めてTHE NOVEMBERSのジャケットに「色」が加えられました。同時にそれは「ノベンバがジャケットに色を使った!」というファンにとっては、Talk-ableなものでした。

そして、今回ついにTHE NOVEMBERSが全面カラーのジャケットを公開しました。これが本作の連動していくマーケティングコミュニケーションの始まりの狼煙です。

tobirdの描く「Rhapsody in beauty」は海の中に浮かび上がる開かれた本の中に、ヴォイニッチ手稿のように、不思議なイラストや文字が描かれ、まるでここではない世界を表現しているようなデザインになっています。これもひとつのパラレルワールドです。

そして、このtobirdの描いたジャケットは、まだ続きがあります。それはもう少しお待ちください。

◆施策2:上條淳士先生による新しいアー写

上條淳士先生といえば、有名な漫画家さんです。「TO-Y」「SEX」などの名作を世に生み出した方にTHE NOVEMBERSの新しいアー写を描いていただきました。

もともとはTHE NOVEMBERSの小林祐介くんと上條淳士先生ご本人同士の交流から生まれたものであり、それは奇跡のような出来事でした。そして、結果的に上條淳士先生に絵を描き下ろしていただくことで、実写と絵という「パラレルワールド」が世に生まれ出ることになりました。

また、一般的にアー写というのは、本人の写真がメインになります。しかし、それが絵であることで再びファンの中でのTalk-ableな要素を創出し、「盛り上がりの種」に水をやることになり、やがて種は「Rhapsody in beauty」の発売に向けて芽を出し、熱を高めていきます。

同時に上條淳士先生ファンのトライブが今作のコラボレーションによって、流入するということも可能になります。そして、上條淳士先生との物語もまだ続きます。こちらもお楽しみに。

◆施策3:雑誌「音楽と人」の文脈に合わせた広告「レターアド」

10月4日に発売した雑誌「音楽と人」にTHE NOVEMBERSは広告を出稿しています。音楽雑誌の広告というと、新譜のジャケットに楽曲名やツアー名を入れるのが一般的かと思います。

雑誌広告はお金を払って購入しているわけですから、ターゲットつまり読者の音楽への関与度は高いといえます。しかし、だからといって11月号の「音楽と人」とでいえば、雑誌購入者の何割がTHE NOVEMBERSを知っているでしょうか。何割が興味があるでしょうか。

雑誌広告の他に小林祐介くんのインタビューも掲載されているので、そちらはいいとしても、せっかくお金を払って広告を出稿しているのですから、ファンはもちろんファン以外にもアテンションを作れるかはポイントです。

そこで、今回雑誌「音楽と人」への広告は通常の広告形態ではなく、「音楽と人」というアーティスト自身という人にフォーカスを当てた媒体属性を活かし、小林祐介くんが手書きの広告を出稿するという「レターアド」を実施しました。

小林祐介くんは「音楽と人」での「レターアド」についてこう述べています。

”僕が変わっていく様子、あるいは変われない様子を、一歩踏み込んだドキュメントのように取材してくれる「音楽と人」。とりわけ“個”/パーソナルな物事に焦点を当てるこの雑誌で、僕は対の“個”として、読者その人に語りかけるようなことができないか考えました。そこで思いついたのがレターアド。「音楽と人」をきっかけに、僕とあなた、二つの“個”の新しい出会いが生まれたり、その絆を深められたら嬉しいです。
せっかく関わりを持つなら、媒体の持つ個性や思想に合わせた特別なことをやりたいと僕たちは考えます。一生のうち、何回会えるかわからないうちの奇跡のようなその一回、一夜、一瞬を楽しんでもらえたら嬉しいです”

ただただ雑誌広告を出稿するのではなく、その媒体の趣向や思想に合わせて物語や文脈を設計して世の中に届ける。広告が昔のように効かなくなってきた時代において、アテンションを獲得するために、雑誌「音楽と人」とでは「レターアド」を展開しました。

「音楽と人」で実施したレターアドは、広告という“公のもの”と、手紙という“私的なもの”の対比THE NOVEMBERSを取り巻くそういった対比によって、「パラレルワールド」を表現しました。

瞬間で読み飛ばされてしまう雑誌広告の価値を変えたい。雑誌広告の既成概念にとらわれず、ファンはもちろん、新しいファンを作り出すきっかけづくりとして「レターアド」が意味すればと思っています。

キレイに並べられたフォントの中で、突然現れる手書きのメッセージ。一瞬でも「おや?っ」と思ってもらえることで、読んでもらう動機付けを生み出せればと思いました。

同時に「音楽と人」の小林祐介くんのインタビューページでは「Rhapsody in beauty」の楽曲をいくつか試聴できる仕様になっています。

そして、この雑誌広告の新しい展開の仕方は違うアイデアで、「MUSICA」でも実施されることとなります。

◆施策4:Spotifyによる世界先行配信

さて、これまでは主にビジュアル中心の施策であり、ファン向けの施策でした。音楽を届ける上でファンを中心にコミュニケーションすることは当たり前ですが、それだけでは当然スケールアップしません。新しいファンないし、新しい顕在層やライトファンを創出していかないと必ず先細りになり限界を迎えてしまいます。

そこで、4つ目に実施したのがSpotifyによる世界先行配信です。もともとTHE NOVEMBERSというバンドは海外に目を向けていたバンドですし、今年のフジロックに出演したときの反応であったり、facebookページやSoundcloudの反応を見るに海外の方々にも通じる可能性を肌で感じることが多くなっていたという背景もあります。

世界視点で動いていく際にやはり音源を届けるのは大切です。そこで、世界でも最も人が利用し、話題にしているSpotify限定で世界先行配信することで、世界に音楽を届ける。そして、Spotifyをフックに国内にニュースを創出し、新しい訴求ポイントを生み出すことが目的でした。

THE NOVEMBERSファンだけでなく、その近くに存在するトライブだけでなく、THE NOVEMBERSをかけらも知らない層へSpotifyとSpotifyのニュースを通して点を作っていきます。それはテック層であったり、広告、マーケティング業界のトライブを想定していました。

現にニュースバリューとしては非常に高く、クチコミを分析してみても、明らかに今までにいない層が語りだしているという状況が生まれました。

また、このSpotify世界先行配信についても、海外と日本という「パラレルワールド」は軸として存在し、「パラレルワールド」に則ったカタチで、つまり、物語/文脈を作り出し、一連の施策である点と点をつなげて線にし、圧を高めます。そして、人々の言の葉にのっていくかどうかもコミュニケーションプランニングの中には含まれています。

◆施策と施策のあいだを埋めるセカンドニュース

ここまで実施した4つの施策はすべて10月15日に発売するニュー・アルバム「Rhapsody in beauty」のマーケティングコミュニケーションです。しかし、やはりそれだけではあまり意味がなく、今後控えるライブツアーも含め、「Rhapsody in beauty」には直接関係ないセカンドニュースの存在もなくてはなりません。

一旦、Spotify世界先行配信までの時期の中で、THE NOVEMBERSとして発信したニュースは

女王蜂×Chara THE NOVEMBERSのライブ&レポート

LEGO BIG MORL全国ツアーの対バンのニュース

ヴォーカル小林祐介くんがパパになったニュース
PLASTICZOOMS、Lillies and Remainsと主催するライヴ・イベント『BODY』とタワーレコードがコラボしたキャンペーン『BODY × TOWER RECORDS』

「YEBISU MUSIC WEEKEND」のライブ出演

上記のようなニュースが「Rhapsody in beauty」に紐づくファーストニュースのあいだに、セカンドニュースとして世の中に発信することで、ファンとファン以外が交錯する機会を作り出し、THE NOVEMBERSへの関与度を高めていくことを目指しています。この4つの施策のあいだでは上記がセカンドニュースでしたが、これからも続く施策のあいだにも当然セカンドニュースを設計しています。

つまり、セカンドニュースがハブとなり、ファンとファン以外の接着面の位置づけとなり、THE NOVEMBERS自身及び「Rhapsody in beauty」の強度を高めていく役割があります。

同時にニュースだけでなく、特に対バンはリアルという【共鳴】を最も起こしやすい場ですし、リリースやツアーが控えている時には有効です。

一般的にはリリースやツアーなどの動きのない時期での対バンというのは、ファンの流入というのは「そこまで」生まれませんが、その「そこまで」の中で刺さった新しいファンに対してリリースやツアーが控えていることは、熱量が高まっている状態での訴求なので通常の動きのない対バンよりも効果的になります。

THE NOVEMBERSの「Rhapsody in beauty」のマーケティングコミュニケーションPart1はここまです。次回のPart2は、まだまだ続くこのあとの「Rhapsody in beauty」を届ける物語を伝えていければいいなと思っています。

実はまだ一連の「Rhapsody in beauty」のマーケティングコミュニケーションは、ここまででまだ3分の1程度でしかありません。次回はアルバム発売日当日までのおはなしです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

■記事元http://takanoshuhei.com/2014/10/rhapsody1/

記事提供THE GREAT ESCAPE

高野修平
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