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「週刊誌、オマエが言うなよ……」〜週刊誌ガセネタ誤報列伝(第2回/「週刊文春」篇)〜

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「週刊文春」が報じた創価学会・池田大作名誉会長の「病状」

連載第2回は、「週刊新潮」と同じく朝日新聞攻撃の急先鋒に立つ「週刊文春」がやらかした、恥ずかしいガセネタ誤報を紹介したい。

「週刊文春」(2011年10月27日号)に〈衝撃スクープ 池田大作「創価学会」名誉会長 担当していた元看護師が語る「厳戒病室」本当の病状〉という記事が4ページ大々的に載った。

池田名誉会長は一般メディアにはめったなことでは登場しないため、その動静を詳しく知らない読者は多い。「週刊文春」記事では、名誉会長の担当看護師を務めていたという女性が匿名で登場する。その自称・看護師が、名誉会長の「本当の病状」とやらを赤裸々に語っているのだ。自称・看護師はこう証言する。

「私がお側で世話をした数カ月前には、歩くこともままならず、読み書きや他人と話すことも難しい状態でした。(略)いつ何があってもおかしくない状況だったのです」

「先生が車椅子に乗ってらっしゃったとき、突然、奇声を上げてご自分の著作や写真を投げ始めたのです。慌(あわ)てて、秘書や看護スタッフでお止めしました」

もし創価学会のトップリーダーの看護をするとなれば、看護師としても一信仰者としても選(え)りすぐりの人間が担当に選ばれるに違いない。危機管理と情報漏洩(ろうえい)防止のために、名誉会長と創価学会に不信をもつ人間が担当につくはずがなかろう。

ではなぜ、「週刊文春」で自称・元看護師がこのような証言をするに至ったのか。彼女はこう理由を説明する。

「幹部の方々は、心配する我々学会員に対して『先生は元気です』とアピールするばかりです。しかし、それは学会員を欺(あざむ)き、池田先生を冒瀆(ぼうとく)しているのと同じではないでしょうか。
 末端の学会員にも先生の現状をお知らせして、先生のために大勤行(ごんぎょう)会を開いたほうがいいと思うのです。それが、今回、私がお話しした理由です」

まるで見てきたかのような自称・看護師の証言

自称・元看護師は、池田名誉会長が暮らすという病室内の様子を、実に事細かに描写する。警備体制の人員、ベッドや枕など家具の仕様も詳しく明かす。

「先生の病室にはキングサイズのベッドがあり、シーツ、掛布団カバー、枕は全て金色のペーズリー柄でした。ベッドの側には、小さなテーブルと椅子が置いてあり、お元気なときには、そこでよく筆ペンを手にとって和歌を詠(よ)んでいらっしゃいました」
「一般の病室とは全く違い、外国の洋館みたいなお部屋なのです」
「病室の天井は折上天井になっていて、蛍光灯が何十本も取りつけられていました」

と、口がたいへん滑らかだ。

「週刊文春」が放った渾身(こんしん)のスクープ記事は、「一刻も早い真実の開示が待たれる」と締めくくられる。

この自称・元看護師が、池田名誉会長の担当でなかったどころか、実際に看護師であったかどうかさえ定かでないというのだからひっくり返る。「衝撃スクープ」と大々的にぶち上げた「週刊文春」の4ページ記事が、虚報・誤報のオンパレードだったのだ。

「週刊文春」編集長がコソッと載せたナンチャッテお詫び文

虚報スクープが世に放たれてから2カ月後、「週刊文春」(2011年12月29日号)の巻末にお詫び文がコソッと掲載された。島田真編集長は、次のように虚報・誤報を訂正する。

〈〔編集長から〕
 小誌10月27日号に掲載した「担当していた元看護師が語る 池田大作『創価学会』名誉会長『厳戒病室』本当の病状」の記事につき、創価学会より「該当する看護師は存在せず、証言は事実無根である」との抗議がありました。これを受けて小誌は再取材を行いましたが、証言者が看護師であるとの確証を得るに至りませんでした。病状についての記述を取り消し、ご迷惑をおかけした関係者にお詫びいたします。〉

当該のガセネタ記事の広告は、日本中の新聞や電車の中吊り広告で喧伝(けんでん)された。記事そのものを読まなくても「へ〜〜。創価学会の池田さんはずいぶん重い病気なんだな」という印象を抱いて今に至る人も多いだろう。

上記のお詫び文は、読者投稿欄の脇にたった17行載っているだけである。4ページの「スクープ記事」をぶち上げ、大きく宣伝しまくったわりには、ずいぶんとお詫びと訂正の声が小さい。しかもガセネタの形跡は、「週刊文春」ウェブサイトのバックナンバーコーナーから消されることもなく、目次の脇に訂正も載っていない。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/394

これではインターネットを使って検索をかけた人が、今からミスリードされることだってあるだろう。

「朝日新聞が死んだ日」(2014年9月18日号)とか「朝日新聞メルトダウン」(2014年10月2日号)とか楽しそうに朝日新聞叩きに狂奔する「週刊文春」編集部こそ、ガセネタでメルトダウンして死に体なのではなかろうか。

ガセネタを載せた同じ号で他誌のガセネタを批判する「週刊文春」


興味深いことに、池田名誉会長に関するガセネタが載った「週刊文春」の同じ号(2011年10月27日号)には、もう一つのスクープ記事が載っている。作家の黒川博行氏(2014年に直木賞を受賞)が、「週刊現代」の連載記事によってグリコ・森永事件の犯人に仕立てあげられたと抗議の手記を寄せているのだ。

「週刊現代」では、ジャーナリストの岩瀬達哉氏が合計20回にわたって連載を書いている(2010年12月18日号から2011年10月15日号まで)。この連載では、見る人が見れば黒川博行氏と思しき人物がグリコ・森永事件を逃げ切った真犯人だとわかる。

岩瀬達哉氏と「週刊現代」が黒川博行氏を犯人と決めつける根拠は主に5点あり、このうち少なくとも3点が完全な事実誤認であることを、黒川氏は具体的に指摘する。たとえば〈脅迫テープに言語障害を持つ子供の声が録音されており、黒川氏の妹の息子にも言語障害がある〉という点について、氏は次のように論破する。

〈帰宅した妹の呼びかけに唸(うな)り声で応えたのは、おそらくジャックラッセルテリアの「ぺぺ」という飼い犬でしょう。(略)妹の呼びかけに応じた犬の鳴き声を“野太いうめき声”と勘違いしたのは、私が21面相だと思い込んでいた妄想の結果でしょう。(略)あまりにも馬鹿馬鹿しくて信じられないかもしれませんが、それが彼らの取材の実態なのです。〉(「週刊文春」2011年10月27日号)

その後、黒川氏は「週刊現代」や岩瀬達哉氏に名誉毀損・プライバシー侵害の民事裁判を起こし、583万円の支払いを命じる勝訴判決を勝ち取った(2013年、東京地裁)。

池田名誉会長に関するガセネタを載せた同じ雑誌で、他誌のガセネタを難詰しているのだから、まるで説得力に欠ける。あっちで火をつけながらこっちで別の火を消しているわけだから、これぞまさに「マッチポンプ」というやつであろう。せっかく「週刊現代」の誤りを実名告発した黒川博行氏も、さすがに呆れているのではなかろうか。

(2014年10月9日執筆/連載第3回へ続く)

※週刊誌の誤報・虚報ネタ、コッソリ掲載されたお詫び文・謝罪文についての情報提供をお待ちしています。メールの宛先は gasemaga@gmail.com です。(ガジェット通信 ガセネタ特報部)

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