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概算要求仕分けに立ちはだかる族議員の壁

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【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】

 来年度予算の編成に向け、自民党の行政改革推進本部が概算要求の精査を始めた。財務省による予算の絞り込みを前に、無駄な事業を洗い出す狙いだ。ただ、企業業績の回復や増税による税収増で党内の族議員たちは勢いづいている。歳出拡大圧力を抑え込むのは容易ではない。

 
 来年度予算を巡り、各省庁が提出した概算要求は総額101兆円。来春の統一地方選対策として首相が旗をふる「地方創生」や社会保障の充実などを名目に要求額が膨らみ、過去最大の規模となった。

 
 各省庁の背中を押しているのがそれぞれの業界の意向を受けた族議員たち。建設族は地方を中心に公共工事の積み増しを求め、厚労族は社会保障の充実を求め、商工族は各業界への補助金の拡充を求めている。各省庁は有力族議員と結託し、首相官邸や財務省に働きかけている。

 
 行革本部の動きに、すかさず反発した「元」族議員がいる。「行革本部はなぜ新国立競技場を目の敵にしなければいけないのか。こんなんだったら議員を辞めるんじゃなかった」。東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相は2日、超党派議員連盟の会合で不満をぶつけた。

 
 2012年に政界を引退した森氏は現役時代、文教族議員の重鎮として知られた。日本体育協会や日本ラグビー協会の会長を長年務めるなど、特にスポーツ界に大きな影響力を発揮した「スポーツ族議員」でもある。

 
 森氏にとっては2019年のラグビーW杯や2020年の東京五輪・パラリンピックの成功こそが最優先課題。そのためにはいくら金をかけてもいいという立場である。森氏の目には「1300億円の建設費は高すぎる」として見直し議論を始めた行革本部の対応が不満に映る。

 
 確かに東京五輪の成功のためにも国立競技場の整備は重要な課題だが、財政がひっ迫している我が国においては建設費をいかに圧縮するかという視点も必要だ。森氏の考え方は「木を見て森を見ず」という自民党的な族議員政治の典型例。結果はともかく、見直しはあってしかるべきだ。

 
 ここにきて族議員たちが勢いづいているのは税収の増加が一因である。円安によって大企業の業績が回復しているほか、消費税率が今春に8%に上がった。首相が地方創生を掲げたことで、地方への公共事業の積み増しも主張しやすくなった面もある。典型例が地元選出議員による整備新幹線の前倒し建設要求である。

 
 しかし、税収が増えたと言って、この国に予算をバラマく余裕はない。公債発行を除いた国の基礎的収支は2016年度予算案ベースで18兆円の赤字。消費税の1%引き上げで約2兆円の増収が見込めるが、10%に上げたところで2020年度の黒字化という政府目標にはほど遠い。

 
 そこで首相官邸が白羽の矢を立てたのが無鉄砲で知られる河野太郎氏。行革推進本部長に据え、概算要求を「仕分け」させることとした。森氏のように大物族議員が予算削減に抵抗しても、河野氏ならはねのけられるとの目算だ。行革本部は公共工事や社会保障給付などを聖域なく見直す。

 
 気になるのは補正予算である。政府は消費税率の再引き上げをにらみ、年内に2014年度補正予算案を編成する方向で検討している。せっかく来年度予算で無駄をあぶりだしても、補正予算で復活してしまっては意味がない。行革本部は補正予算の中身にまで目を光らせる必要がある。

 
 安倍晋三首相は河野氏という飛び道具を使って、族議員の壁を乗り越えることができるかどうか。規制改革の先行きを占う意味でも注目したい。 

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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