残された遺産が一戸建てと現預金。こうした相続が一番のトラブルになる

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残された遺産が一戸建てと現預金。こうした相続が一番のトラブルになる(写真:iStock / thinkstock)

来年2015年1月1日から相続税制が大幅に改正される。相続税と言われても自分には関係ないと思う人がほとんどかもしれない。しかし、来年からは身近な問題として、相続トラブルに巻き込まれる可能性が高くなったのだ。相続対策を見据えた住宅購入術を2回に分けて考えてみよう。基礎控除額の削減で、課税対象者が倍増する!?

そもそも相続税が課せられる場合、不動産については小規模宅地等の特例をはじめ、相続税評価を下げるさまざまな税の軽減措置がある。そのため、これまではよほどの資産家でない限り、基礎控除の適用もあり、相続税が課税されるケースは全体の4%程度と言われていた。

これが来年の税制改正で基礎控除が削減され、昨今の不動産価格の上昇により、フツーの一戸建て所有者でも相続税が課せられる可能性が高くなったのだ。(詳しくは、こちらを参照http://suumo.jp/journal/2014/04/23/60098/)

一方、相続対象資産のなかで注意したいのは、現預金などの金融資産だ。税制上の軽減措置はなく、ほぼ時価評価で計上される(上場株式は、相続発生の2カ月前までさかのぼって、月の平均額を比較し低い額で評価される)。そのため、差し迫ったケースでの相続税対策としては、不要不急の現預金は、評価を低くできる資産に転換させておくことが重要になる。まずは、時価評価される現預金を有効活用する

最も手軽で、相続を受ける子どもにとっても有効なのが、「住宅取得資金贈与の特例」を使って、生前贈与をすることだ。今年中(平成26年)なら、一般住宅の場合は500万円まで、省エネ・耐震住宅の場合は1000万円までが特例として非課税で贈与することができる。これらに加えて、年間110万円までの贈与は基礎控除で非課税になる制度(暦年贈与)を使えば、一般住宅で610万円、省エネ・耐震住宅で1110万円までが非課税で贈与可能となる。子どもがマイホーム取得を検討しているなら、ぜひ活用したい制度だ(※1)。

すでに子どもの住宅取得が終わっているなら、非課税で贈与できる年間110万円の枠を活用して、現金をできるだけスムーズに親から子どもへと受け渡すことも有効な方法だ。子どもはそのお金を住宅ローンの繰り上げ返済に活用したり、万一の相続税の支払い原資に充てることもできる。親子で相続税対策を講じることが重要だ。その際には、贈与契約書を作成したり、金融口座へ振り込みをして形を残すなど、きちんと対応しておくことも忘れずに。毎年決まった額を定期的に贈与していると、過去にさかのぼって一括贈与とみなされ、贈与税が課せられる可能性もあるので慎重に行うようにしよう。

また、相続発生の3年前までの贈与は相続対象資産として税額計算に組み込まれる点にも注意が必要だ。住宅取得資金贈与や年間110万円の基礎控除で贈与時点は非課税であっても、相続発生の3年前までの贈与は結果的に相続税対策にはならないのだ。だたし、贈与時点で支払った贈与税があれば、相続税から除外される。つまり、こうした生前贈与による相続税対策は早目に行ってこそ効果があるといえる。贈与の方法については、税理士などに相談することをおすすめする。

※1 来年度(平成27年度)の税制改正要望で国交省から、最大で3000万円(一般住宅で2500万円)の非課税適用額の拡充案が出されている。こちらの動向にも注目しておきたい生命保険、教育資金贈与も相続税対策に使える

住宅取得以外に現預金の資産移し替えとしては、生命保険や孫への教育資金贈与という手もある。生命保険の死亡保険金は、相続資産の対象外ということで、相続税対策としてあらためて注目が集まっている。死亡保険金は受取人の財産となり、遺産分割協議の必要がないからだ(ただし、相続税の計算の際には、みなし相続財産となるが500万円×法定相続人の数までは非課税になる)。

さらに相続時に一番困るのが、亡くなった方の金融口座は当面凍結されること。葬儀費用の支払いや遺族が生活費に困るというケースが少なくない。生命保険は申請から約1週間程度で死亡保険金が受け取れるため、相続発生直後の生活の支えになるという点も評価されている。

加入の仕方は、現預金の移し替えが目的なので、毎月保険料を払うタイプではなく、余裕資金を使って、一時払いで支払う終身保険が第一の候補となる。さらに受取人は配偶者にしがちだが、相続対策ということであれば、子どもを受取人にしておくほうが節税効果は高い(契約途中での受取人変更も可能)。

自宅以外に主だった遺産がない場合、遺産分割で揉めることが多いが、こうした生命保険の死亡保険金を原資に、相続税の支払いや代償分割(相続財産が不動産など分割しにくいものがある場合、相続人間の不公平感をなくすために、現金などで差額調整すること)の資金に充てることができれば、自宅を売却せずにすますことも可能になるだろう。

現預金は子どもに限らず、孫へも資産を移し替えることで相続評価を下げることができる。それが「教育資金贈与(教育資金一括贈与の非課税制度)」だ。30歳未満の子どもや孫ひとり当たり1500万円まで教育資金として贈与できるというもの。ただ、これは用途が限定的で、手続きがやや面倒ということもあり、制度の見直しが進められている。現在のところ、この制度は今年度(2015年度末)までと期限が決まっており、ほかの目的に使ったり、贈与の受取人が30歳になったときに資金が残っていれば、その分に贈与税が課せられる。

いずれにしても、子どもへの相続を見据えて、今自分たちの資産がどの程度あり、自分たちの老後資金はいくら必要なのかをあらためて試算してみることだ。もしも余裕資金があるなら、その現預金を孫子へ移し替える手立てを、早目にしておくことが、相続税対策の第一歩である。
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/10/03/70502/

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