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【うちの本棚】231回 土井たか子グラフィティ/樹村みのり

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 「うちの本棚」、今回から樹村みのりの作品を紹介していこうと思います。

 最初に取り上げるのは89年刊行の単行本『土井たか子グラフィティ』。奇しくも先日、土井たか子さんが亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。

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 樹村みのりの単行本を紹介していこうと考えていて、本書『土井たか子グラフィティ』はその中でも最後に持ってくるつもりでいたのだけれど、どういうタイミングか土井たか子さんの訃報が入り、この作品から紹介していくことにした。

 表題作の『土井たか子グラフィティ』は1989年の発表で、まさに土井さんを中心に政界で「マドンナ旋風」が巻き起こっていた時期にあたる。すでに当時の「日本社会党」自体が無くなってもいるし、歴史の1ページとなってしまった感は否めないが、一般コミック誌に評伝が掲載されたという事実だけでも当時の熱気を想像できるのではないだろうか。

 単行本の収録作品を見てみると、表題作に関連して「社会新報」に連載された『となりのまあちゃん』があるが、これは新聞掲載の4コマ作品で、とある家族の日常といった内容。ほかの3作はエッセイ的な作品であり、本書が「樹村みのり作品集」というより『土井たか子グラフィティ』のために刊行されたという印象が強い。

 土井たか子氏の生い立ちから政治家としての歩み、参議院で首相指名されるまでを50ページにまとめていて、全体としては客観的に描いているが、土井さんのいい面しか描いていないということでは樹村みのりが土井氏に傾倒していたのではないかと思われる。これには、同じ女性として権利や自由を主張し戦っている同志という意識も少なからずあったのではないかと推察される。同様に「マドンナ旋風」という言葉が示していたように、当時は女性の活躍が目立ってもいて、樹村みのりがその代表的な存在として土井たか子という人物を描いたという面もあったと思う。

 それにしても…。2014年9月には女性閣僚が過去最多という状況にありながら、89年当時のような「女性の活躍」という印象が全くないのはどういうわけだろう。むしろお飾りにされることで本質的な問題が棚上げされてしまったような気までしてしまう。樹村みのりが現在の状況をどう見ているのか聞いてみたいところだ。

初出:土井たか子グラフィティ/スコラ「コミックバーガー」1989年19号、となりのまあちゃん/「社会新報」1983年1月~12月(収録作品はそのうちの抜粋)、駆け足東ヨーロッパ/小学館「プチコミック」1979年11月号、ジョニ・ミッチェルに会った夜の私的な夢/秋田書店「BONITA Eve」1983年7月号、映画の中の名場面/秋田書店「ビバプリンセス」1987年2月号

書 名/土井たか子グラフィティ
著者名/樹村みのり
出版元/スコラ
判 型/B6判
定 価/
シリーズ名/バーガーSC(バーガーSC-78)
初版発行日/平成元年12月16日
収録作品/土井たか子グラフィティ、となりのまあちゃん、駆け足東ヨーロッパ、ジョニ・ミッチェルに会った夜の私的な夢、映画の中の名場面

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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