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滝田栄 「本気の立ち回り」条件に真剣刀法で宮本武蔵演じた

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 多芸な役者として知られる滝田栄は武道にも優れ、抜刀術の有段者でもある。剣術・武術の使い手を演じる際のこだわりについて滝田が語る言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載『役者は言葉でてきている』からお届けする。

 * * *
 滝田栄といえば、俳優界でも屈指の剣術・武術の使い手として知られている。特に、その居合の腕前は達人の域である。

「文学座養成所の時、バレエの練習の時間があったのですが、あのタイツを穿くのが嫌で。その時間を使って道場に通い、真剣で斬る稽古をしたんです。

 侍の居方が凄く好きで、いつか侍を演じたいと思い続けていました。やるからには絶対に誰にも負けたくない。

 目標としたのは萬屋錦之介さんでした。当時、錦之介さんが警視庁の剣道部で居合を習っていると聞いていました。錦之介さんも本番では竹光を使う。それなら、真剣でもあれくらい動ける体を作りたいと思って、道場通いを始めたんです。

 当時、時代劇をやるからには刀と槍と弓と馬は必須と言われていました。ですから、なけなしの金をはたいて乗馬クラブにも通いましたし、初めて家を作った時は四十畳の稽古場を作って六尺の槍が振れるようにもしました。一番力を入れたのは刀です。刀鍛冶を訪ねて自分用の刀を打ってもらって、実際に物を斬って、稽古しました。

 二十代前半の頃に抜刀術の四段の試験を受けた時は先生から生き物を斬ってこいと言われました。よく行く八ヶ岳に野犬がいるというので斬ろうとしたのですが、僕に気づいた途端、逃げてしまう。凄い殺気が出ていたんでしょうね。

 そのことを先生に話したら、殺気を見せているようでは駄目だと言われました。一、二で斬りかかるのではなく、殺気なしで近づいて、一でやるんだ、と」

 剣にこだわる滝田だけに、時代劇の殺陣も本物志向を貫く。『必殺スペシャル』に相次いで出演した際やNHK『巌流島 小次郎と武蔵』での宮本武蔵役などでの殺陣は圧巻の迫力だった。

「やっぱり、通り一遍の立ち回りじゃ面白くない。『必殺』は京都で撮影しましたが、型も決まっていて他のことをやらせてくれない。ですから、もし実戦的なのをやらせてくれるなら、という条件で出ました。

 実戦の刀を使える殺陣師と一緒に京都に行きまして。京都だと殺陣師が現場に来てその場で手をつけて終わりなのですが、この時は何時間も前に集まってもらって、みんなで稽古してから本番に臨みました。京都の人たちは最初は嫌がりましたが、『変化していかないと飽きられる』と一生懸命に話して納得してもらったんです。

 武蔵の時も『本気の立ち回りをやらせてくれるなら、やるよ』ということで出ました。二刀流も、大刀と小刀で斬る時の真剣刀法でやりました。それから、最後に小次郎にとどめを刺す舟の櫂も、自分で本物の櫂を削って、家で練習しました。

(渡辺)謙ちゃんが小次郎でしたが、本物の櫂で寸止めしています。羽二重に触れるところまで行かないとカメラでバレちゃうんです。ただ自信はあるけど、怖かった。それで一回目はほんの少し隙間が空いちゃうんです。でも、演出家も人の気も知らずに触れてくれと言う。殺陣師も『大丈夫だ』って。それで思い切り振り降ろしました」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)、『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)ほか。最新刊『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮新書)も発売中。

※週刊ポスト2014年10月3日号


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