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テレビ番組で音楽が売れる時代は終わったのか?

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posted by Jay Kogami

テレビ番組で音楽が売れる時代は終わったのか?

日本では夏や冬場にかけて多くの音楽特番がテレビで今でも放送されていることを見かけます。多くのアーティストが出演していますが、これらの番組の情報を見ていて少し個人的に不思議に思ったことがあります。それは、番組出演でアーティストにどんな影響があるのかということ。もっと具体的にいうと音楽の売上に影響が出るのかということに興味がわきました。

テレビ出演するアーティストの多くは、新曲や新アルバムの収録曲を披露するので、番組がプロモーションとして存在するのであれば、オンエア終了後に売上げにプラスの影響が出てくるはず。そう思っていた時にテレビ出演することのヒントになるかもしれない海外のテレビ番組(特番)とTwitterのデータを見つけたのでまとめてみました。

少し前の音楽イベントになりますが、8月24日にロサンゼルスでMTV主催の一大音楽イベント「MTV Video Music Awards」(VMA)が開催されました。VMAは近年アメリカでのテレビ中継の域を超えて、SNSによるオンエア中の爆発的なバズによって世界中が注目する音楽イベントへ進化してきたことで若者やメディアから毎年注目を集めるイベントへ進化してきました。

今年のVMAに出演したアーティストのアルバムとEPが、テレビ放送後の売上が41%アップしたことが、ニールセンサウンドスキャンの調べで分かりました。昨年のオンエア後のVMA関連の売上比率は前年比37%でしたので、アワード番組がもたらす売上へのプラスの影響は今年も継続していると見て取れます。

オンエアされた24日後、8月25〜31日週のVMA関連の売上は、アルバムとトラックを合計して116万枚でした。18〜24日週はアルバム、トラック合計が82万2000枚でした。

アルバム売上で最も動いたのは「Michael Jackson Video Vanguard Award」を夫のジェイZ(@S_C_)と娘のBlue Ivyから受け取ったビヨンセで、「Beyonce」は181%アップし1万6000ユニットを売上げ、アメリカのiTunesチャートでは7位にまて上昇しました。

トラック売上の場合では、ジェシー・J、アリアナ・グランデ、ニッキー・ミナージュの「Bang Bang」はトラックダウンロードが前週から54%アップして24万4000ユニット、ビヨンセが披露したメドレーの楽曲は155%アップして12万6000ユニットを記録したことがBillboardの調べで分かっています。

またマルーン5はVMA初登場したことによって、最新アルバム「V」へのプリオーダーが166%上昇する効果がありました。

さらにこれもVMA初登場のサム・スミスはヒットシングル「Stay With Me」のパフォーマンス後、同曲のiTunes売上は90%アップ、彼のアルバム「In the Lonely Hour」は95%売上げがアップする結果となりました。

これらの数値から考えられるのは、テレビ番組でのパフォーマンスや出演することが、音楽売上の部分でもインパクトを残せるということです。

しかし同時に興味深いことに、VMAのテレビの視聴者数は昨年の1,010万人から大きく減少し、830万人に留まったとも発表されています。にも関わらず、VMAでは音楽売上げという面ではプラスの影響を残しています。では何がこのプラスの影響を生み出しているのか? 考えられるのは、VMAとソーシャルメディアの連携で、SNSのパワーが話題を作っていると言っても過言ではないでしょう。

TV Ratings: VMAs Take a Small Hit, Pull 8.3 Million Viewers – Hollywood Reporter

Nielsen Social調べによれば、VMAは今夏最もソーシャルで口コミされたテレビ番組となりました。Nielsen Socialは、VMAオンエア中に「#VMA」ハッシュタグ付きのツイートが米国だけで1,260万件に上ったことが発表しています。

またアワードのオンエア中だけでは、Vine、Tumblr, Snapchat, Instagram, Twitter, Facebookで、驚異的な6,400万件のインタラクションがSNS上で行われていたことも明らかになりました。

Twitter社によれば、TPM(1分当たりのツイート数)もオンエア中にいくつかのピークを迎えています。例えば

・マイリー・サイラスが「最優秀ビデオ賞」を受賞した時:138,792TPM
・ビヨンセが「Michael Jackson Video Vanguard Award」を受賞した時:97,153TPM
・ロードが「最優秀ロックビデオ賞」を受賞した時:89,029TPM

昨年のVMAではマイリー・サイラスのパフォーマンスが306,000TPMとTwitter記録を叩き出しています。

こちらは、最もツイートされたアーティストのトップ10。若者に人気の5 Seconds of Summerからビヨンセ、本人の代わりにホームレスの青年がアワードを受け取らせたことが話題になったマイリー・サイラスなどさまざまですが、やはり話題になるアーティストは、パフォーマンスをしたアーティストです(マイリー以外全員)。

1. ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー(@5SOS
2. アリアナ・グランデ(@ArianaGrande
3. ビヨンセ(@Beyonce
4. ニッキー・ミナージュ(@NickiMinaj
5. フィフス・ハーモニー(@FifthHarmony
6. マイリー・サイラス(@MileyCyrus

ではVMA自体の認知度はどの位なのでしょうか? VMAの盛り上がりは人気のアーティストのパフォーマンスだけでは実現しません。VMA全体の話題拡散が大きければ大きいほど、ファンやSNSユーザー共通のテーマになり、「VMA」への注目が高まります。

こちらはTwitter社が「#VMA」ハッシュタグ付きのツイートを時系列にマッピングしていったヒートマップです。VMAの放送に合わせて北米、南米、ヨーロッパで光が広がっていくのが、ご覧頂けると思います。ここで注目したいのは、VMA放送中でも常に「#VMA」ハッシュタグ付きのツイートが継続して投稿されていることです。

この爆発的な拡散は、テレビを見ながらツイートすることが日常的になっていることが大きいと考えられます。が、それ以上に話題を広げているのは、一時的な投稿で終わること無く、継続的な投稿で口コミが拡散し、そこからさらに投稿が増え続け、

さらに言えるの、アーティストや主催のMTV、メディアがSNSの活用に積極的であることも、番組の話題を拡大している大きな要因となっています。バックステージの様子やVMAの感想、アーティスト同士のコミュニケーションをSNSで行うことは、海外のアーティストにとってごく一般的になっていることが、障壁をさげてくれています。例えばロードやテイラー・スウィフトは楽屋の様子を直前にツイートすることで貴重な情報を配信するだけでなく、普段は見えない人間性も共有しています。

例えばこちらはTwitter社による、アーティストの画像投稿をまとめたフォトグリッド。多くのアーティストの積極的な投稿が積み重なり、VMAを盛り上げています。

ソーシャルメディアでのインタラクション以外では、アワードを取材したMTVでもオンラインで大きな伸びが見られました。MTVでは米国でアワードのストリーミング中継を始めて以来、過去2番目に多い視聴者を獲得し、ストリーミングへのアクセスは650万件に上りました。

同時にMTVのモバイルアプリへのアクセスとダウンロード数は過去最大を記録しました。

数字には出ていませんが、恐らくVMAオンエア後には出演アーティストのSpotifyでの再生回数も伸びているはずです。

まとめて考えますと、個人的には日本の音楽番組は、もっと魅力的にできると信じています。そうしていったほうが、アーティストにとっても魅力的(プロモーション効果)ですし、ファンにとっても魅力的(レアな映像)だと思っています。ただまだ先は長いので、さまざまな調整や環境つくり、たくさんの人の連携、そして多くの議論とアイデア出しが欠かせないと思います。

過去には音楽番組は流れてくる映像を流すだけで万人に届いていましたが、今の時代は番組も新しいエンターテイメントと競争する時代になったため、人の記憶に残し、行動へとつなげる効果は薄れてきました。このようなエンタメ時代では従来のやり方では、音楽のプロモーションにはつながりにくく、新しい人に音楽を知ってもらうつながりもなかなか作ることは難しくなってきました。

MTVはVMAという番組を1つの軸にソーシャル連携を図り、ファンやメディア、アーティストの注目を高めることを実現しています。それを実現しているのは、どうやってコンテンツにプレミアム価値を付け、拡散するかというデジタル時代の特性を戦略的に導入したコンテンツ作りです。

すこし話題が逸れてしまいますが、海外では音楽フェスでライブをすると音楽売上げがアップする傾向にあると、言われています。音楽番組で起こっていることは、音楽フェスで起きていることと同じで、ファンやアーティストをどう巻き込み、話題を拡散できる音楽体験が必要とされている1つの世界的なトレンドだと思います。今日本で音楽がもっと楽しまれるには、新しいテクノロジーの導入も大事かもしれませんが、既存のコンテンツの再定義も大事だと思います。

アーティストにとって出演する価値を今以上に最大化し、音楽売上げなどプラス効果を実現することについては、日本の音楽番組にもまだ大きな可能性が残されている、そんな気がします。

■記事元http://jaykogami.com/2014/09/9037.html

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Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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