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短時間正社員 職場で孤立するケースが少なくないのも現実

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 1日4時間、あるいは6時間といった短い時間だけ働く「短時間正社員」制度を取り入れる企業が増えている。

 洋菓子製造・販売のモロゾフや、「アースミュージック&エコロジー」を展開するアパレルメーカーのクロスカンパニー、大手ではアサヒビールなどが短時間正社員制度の先駆けとして知られている。

 最近では、政府が成長戦略で掲げている限定正社員のモデルケースであることや、育児・介護などに追われる女性の働き方の見直し議論が高まっていることもあり、今後の導入に前向きな企業も多いと聞く。

 だが、短時間正社員という新たな雇用体系が広く普及しているとはとても言い難い。

 主婦に特化した人材サービス『しゅふJOB総合研究所』が7月に実施したアンケート調査によると、働く意欲のある主婦層417人のうち、「短時間正社員という働き方を知らなかった」と答えた人は54.2%と過半を占めた。しかも、実際に短時間正社員で働いた経験のある人はわずか6.5%しかいなかった。

 9時―5時で働くフルタイムの正社員ではなく、かといって時給ベースの賃金が支払われるパートやアルバイトなどの非正規雇用者とも違う。短時間正社員の位置づけは確かに分かりにくい。

 そこで、社会保険労務士の稲毛由佳氏に短時間正社員の定義を聞いてみた。

「簡単にいえば、正社員よりも働く時間が少ないので、月給も正社員より少なくなるけれど、時給換算すれば正社員と同じ時給になる働き方です。<1年契約>などとパートのように契約期間を区切ることなく、身分的には<期間の定めのない契約>で担当する業務も責任も正社員と同じです。だから、正社員と同じように昇給し、賞与も支給されます」

 しかし、実際に短時間正社員になるためには、さまざまなハードルが待ち構えている。もっとも大きな課題は、職場の人間関係がギクシャクしてしまうことだ。稲毛氏が続ける。

「日本企業は仕事の“密度”で社員を評価せずに、残業時間も含めて“かけた時間”で評価しがち。そんな中、短時間正社員が早く帰った後に仕事を肩代わりした人が不満を漏らしたり、就業時間後に取引先とのトラブルが発生したりすると、『あの人はラクして稼いで……』と人間関係が悪化してしまうのです」

 前出の調査でも、「短時間正社員がもっと普及するために必要なことは何だと思いますか?」との質問に、「職場や上司の理解があること」と答えた人が80.3%ともっとも多く、「短時間正社員に見合った人事評価制度があること」と答えた人も56.6%にのぼった(複数回答)。

 いくら制度があっても、職場全体の理解がなければ定着しない――。漠然と皆がそう認識しているのである。

 だが、制度を利用する当の短時間正社員にも相当の覚悟が問われることを忘れてはならない。

「短時間正社員は席を空ける時間が多いので、居ない時間帯の仕事の引き継ぎをはじめ社員間の情報共有は欠かせません。極端にいえば、同僚が自分の机を見ても何の仕事をやっていたか一目瞭然で分かる状態にしておくなど、業務の効率化やビジネス上の気配りは一般の正社員の3倍は必要です。

 そうした努力をせずに、短時間正社員であることを盾にとって“私には仕事よりも大事なことがあるから”と甘えの言葉を口にして、職場で孤立してしまう人が少なくありません」(稲毛氏)

 では、多様な雇用形態が混在する今、短時間正社員が根付くための条件は何か。稲毛氏は「決められた時間内に仕事を完遂させるという責任感を持つこと」だという。

 もちろん、残業ありきでダラダラと働くフルタイムの正社員にも同じ意識改革を促さなければ、人手不足に悩む企業の生産性はかえって非効率になるばかりだ。


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