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【うちの本棚】229回 シルバー・ムーン/奥友志津子

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 「うちの本棚」、奥友志津子の作品を紹介しているシリーズも3回目。今回は魔女を主人公にした『シルバー・ムーン』を取り上げます。

 とある町にふらりと引っ越してきたルナ・シルバーとその妹アンジェラ。ふたりの魔女が巻き起こすラブコメディです。

【関連:228回 砂糖ぬきのコーヒー一杯/奥友志津子】

 本書は奥友志津子の3冊目の単行本。このタイトルに惹かれたというのは事実だ。
初出に関しては、単行本扉ページに「ひとみ掲載」と記載があるだけで詳細は不明。ネット上で確認できるものもあるが確証がえられないため初出リストとして取り上げることはやめた。
『シルバー・ムーン』は、ネット上で見たところ、集英社「りぼん」昭和52年夏の増刊号掲載という情報がある。

 ルナとアンジェラという魔女の姉妹が登場するシリーズ作品の第一作で、本単行本に収録されたほとんどの作品はこの連作シリーズにあたる。

 とある町の古びた館に引っ越してきた美人姉妹。社交的で美しい姉のルナとちょっと性格はキツイが頭脳明晰な妹のアンジェラだ。遅れて母と祖母も引っ越してくる予定だという。隣家に住むロジャーはとりまきのひとりに加えようとアプローチを始めるのだが…。

 タイトルは作者が中学時代に聞いていたというポップスの題名からつけられたという。
最初からシリーズ化を意図していたかどうかはわからないが、魅力的なキャラクターを創出したからには、そのキャラクターをもっと動かしたいと思うのは当然だろう。実際、一作のみで終わっていたらもったいなかったと思う。

 『銀の扉をノックして』は、秋田書店「ひとみ」昭和53年7月号に掲載されたようだ。ルナのシリーズではないが、ファンタジー作品で奥友カラー全開という印象が強い。
『グッド・ナイト』は、秋田書店「ひとみ」昭和53年10月号掲載。ルナのシリーズの一作。今回もふらりと引っ越してきたルナ姉妹と隣家の男子大学生シドが中心になっているラブコメディ。
魔女や魔法を超心理学やESPに関連づけようとするところはSF作品の多い奥友らしいところだと思うし、70年代末のSFコミックにはよく見られた傾向だと思う(作中では魔法をESPだと断じているわけではない)。

 『ブルー・バイ・ユー』は、秋田書店「ひとみ」昭和53年12月号掲載。
今回はアンジェラ単独のエピソードになるが、『砂糖ぬきのコーヒー一杯』収録の『九月終章』を下敷きにした作品という印象がある。もちろん続編とかいうことではなく、設定や登場人物は全く別のものになっているのだが『九月終章』を違う視点で捉えたストーリーといえるのではないだろうか。

 『シーズン』は、秋田書店「ひとみ」昭和54年6月号掲載。『アンジー・ガール』は初出不明。共にアンジェラを主役としたエピソードとなっているが、『シーズン』はコメディタッチ『アンジー・ガール』はシリアスと趣はずいぶんと違う。

 個人的にはルナの方が好きなのでもっと活躍させてほしかったのだが、作家としてはアンジェラを動かす方が面白いものが描けたのだろう(結果的にルナは綺麗なだけで中身のないキャラクターになってしまった印象もある)。便宜上表題作『シルバー・ムーン』にちなんで「ルナシリーズ」としているが、実質上は「アンジェラシリーズ」と言えるだろう。

 こうしてみてくると、等身大の女性を主人公にした「星子シリーズ」、魔女の「ルナシリーズ」そしてSF連作の『ドリーマー』が奥友志津子の代表作と言っていいのかもしれない。ぜひ、再刊行、再評価の機会があることを願う。

書 名/シルバー・ムーン
著者名/奥友志津子
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/370円
シリーズ名/HITOMI COMICS
初版発行日/昭和56年11月10日
収録作品/シルバー・ムーン、銀の扉をノックして、グッド・ナイト、ブルー・バイ・ユー、シーズン、アンジー・ガール

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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