ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

アップルと1億ドルの音楽配信契約。U2マネージャーのガイ・オセアリーが仕掛ける音楽マーケティング戦略の可能性と不安

DATE:
  • ガジェット通信を≫

posted by Jay Kogami

アップルと1億ドルの音楽配信契約。U2マネージャーのガイ・オセアリーが仕掛ける音楽マーケティング戦略の可能性と不安

アップルが9月10日(日本時間)に開催した新製品発表会の場にミュージックゲストで登場し、最新アルバム「Songs of Innocence」をiTunesストアで5週間に渡り無料配信することを突如発表したU2。Billboardによれば、アメリカだけで配信から24時間で20万回ダウンロードされたことが明らかになりました。

アップルのティム・クックCEOはU2のアルバムの配信を「音楽史上、最大規模のアルバムリリース」と繰り返し強調し、世界119カ国のiTunesユーザ5億アカウント分に直接アルバムを届けると明言しました。

今回のU2のアルバムプロモーションの仕掛け人は、U2のマネージャーを長年努めたポール・マクギネス(Paul McGuinness)に代わってバンドのマネジメントを担当する、ガイ・オセアリー(Guy Oseary)です。彼はマドンナのマネージャー兼ビジネス・パートナーでもあり、レコード会社との契約が切れたマドンナとライブ・ネイションとの契約を取りまとめた、先進的ヴィジョンを持ち合わせた音楽マネージャーで、2013年秋にU2の新マネージャーとなりました。

アップルがU2のアルバムを無料で配信するリリース手法は、アップルとU2が所属するメジャーレーベルのユニバーサルミュージック、そしてU2のマネージャーのガイ・オセアリーの間の交渉でまとめられてきました。

情報ソースによれば、アップルはU2のアルバムリリースにあたり、ユニバーサルミュージックとバンドにロイヤリティ(額は非公開)を事前に支払い、最低1億ドル規模のマーケティングキャンペーンにコミットする契約で合意したと伝えられています。アップルのマーケティングにはiTunesを展開する世界各国でのテレビCMも含まれます。U2サイドはまた先行シングル「The Miracle (of Joey Ramone),」をマーケティング・キャンペーンのテーマソングとして起用する契約でもアップルと合意しました。

U2のマネージャーを務めるガイ・オセアリーはアップル発表会のステージ裏で米Billboardに次のように答えています。

「これはアップルからのギフトだ。彼らがお金を支払い、そして無料で配ることを決定したんだ。

幾つかのチャンスが提供された。スーパーボールは我々が準備していた施策の1つで、(RED)Productのキャンペーンとマッチしていると感じた。ジミー・ファロンに出演して、映画「マンデラ 自由への長い道」のサントラも手がけ、アカデミー賞でも演奏をした。これらは今年前半にいろいろと仕掛けた中のいくつかだ。そしてこの数ヶ月内にアップルとのつながりが生まれ、アップルは協力的で、また先進的な考えを持つ企業でもあり、そしてバンドとも強い関係を持っていた。すべてが自然にひとつにまとまった。」

【関連記事】
U2が最新アルバムをiTunes限定で無料配信する前代未聞の取り組みを開始。ボノ「アップルがアルバムの代金を支払ってくれた」 | All Digital Music

U2の「Songs of Innocence」アルバムリリースには、幾つかの理由から、音楽ファンや業界関係者にとって驚きとなりました。最も大きな驚きはメジャーアーティスト、特にU2級のアーティストが、iTunesアカウントを持っているユーザーにフリーで提供させてしまったことと言えます。

またアップルと組んだアルバムリリースの手法は、これまで多額の広告費用を費やしてきた従来の音楽マーケティングとは異なり、一瞬にして世界中に話題を拡げ人々の注目を集める拡散力を持った新しい音楽マーケティングの手法が実践できることを、音楽業界に印象付けました。

さらに今回のアルバムローンチにおける最大の成功要因は、高まる期待以上の効果を発揮した「サプライズ」性でした。メジャーのアーティストが突然アルバムを無料で提供することを発表することは、ファンだけでなく音楽好きな一般人や音楽関係者にとっても予想していなかった驚きを与えてくれました。新しい音楽の届け方は、人の会話やSNSへの投稿の中心を「音楽」にシフトさせることへとつながり、またより多くの人が予想もしていなかった形でアルバムとつながる機会を生み出し、PRとコンテンツデリバリーの効果を同時に発揮することが実現した、現代の音楽消費に適した戦略的な音楽マーケティングと言えます。

一方で、今回のリリースから考えられる今後の問題としては、音楽に支払われるべき対価が、ますます不透明になっていくかもしれないということではないでしょうか。U2のアルバムリリースは消費者にテクノロジーを合法に使えば、ファイルごと無料で配信できることを世界中に印象付けました。この施策によって多くのリスナーは、音楽は無料で手に入ることを体感したと思います。今後U2クラスでないアーティストは、アルバム配信における価格戦略やマーケティング、PR戦略が消費者へのフリー化を実現するための施策へシフトせざるをえない状況になるかもしれません。またアップルにとっても、無料配信を手がけたことによって多くのユーザーの期待を「無料」へと向けてしまったため、今後アーティストのプロモーションをiTunesで行うことが困難になるのではと予想されます。

「Songs of Innocence」の正式リリースは10月14日にデジタルとフィジカルでリリースされます。米Billboardによれば、アルバムは10月になるまで売上チャートには換算することはできないと述べています。またRIAA(アメリカレコード協会)によってプラチナ・ディスクに認定されるのかも、現在は不明です。

■記事元http://jaykogami.com/2014/09/9107.html

記事提供All Digital Music

Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
プロフィール
Twitter
Facebook

カテゴリー : エンタメ タグ :
Musicman-NETの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP