ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

富野監督が語る「G-レコ」の魅力

DATE:
  • ガジェット通信を≫

あらかじめ簡単に説明しておくと、富野由悠季さんという人は最初の『機動戦士ガンダム』の原作者で総監督であり、今に続くガンダム現象を巻き起こした張本人のひとりだ。他にも数々の傑作・話題作をつくり続け、72歳の今も現役。ガンダムのテレビシリーズとしては15年ぶりに自ら手がける最新作『ガンダム Gのレコンギスタ』の作業に没頭している。

【大きな図表や画像をもっと見る】

「今の大人たちのやってることは全部、20世紀までの考え方の延長。このままではどうしようもないと気づいてるはずなのに、考え方を切り替えることができず、日々の暮らしを優先させて現状のまま進行させていく。もう大人には未来を変えるなんてことはムリ。だから、子どもたちに向けてつくっているのが『G-レコ』です。新しい方法を考えるきっかけになるような種子、問題意識を世界観のなかにすべて並べてあるつもり。ただし、具体的な台詞には反映させず、話の構造でわかるようにしてある。好きなおもちゃを瞬時に選別できる子どもたちにはわかる。でも、30代以上の方にはまず見抜けないだろうと思います。そういわれると、いったいどんなものなんだろうって、観なきゃいけない気になってくるでしょう?」

監督は大人世代に対して、「いい年してアニメばかり観るな」「おまえらのことなんか相手にしてない」的な発言をしばしばくり返してきた。つまりそれは「いいかげんに腹を立てろ」「おまえら自身でがんばれ」という反語的メッセージでもある。

「徹底的に子どもに向けてつくる覚悟をすると、ウソは絶対に書けないんです。もちろんアニメなんだから、物語にあらわれる絵は全部ウソ。宇宙エレベーターだってミノフスキー・クラフトだってアニメ・マンガ的な表現です。そういう次元でのウソという意味じゃない。たとえば、もっともらしくニュータイプとか宇宙世紀とか語っているのが、原発だって必要でしょうという“大人の言葉遣い”と同様、単なるレトリックじゃないかと思えるときがあるわけです。要するに、本質をきちんと語っていない言葉遊び。たしかにガンダムというタイトルは凄い。凄いからこそ、それを利用させてもらいながら、本気で子どもたちに向かって物事の本質を提示するのが『G-レコ』です。巨大ロボットものやガンダム的なものに見えるかもしれないけれど、どこかちょっと違うはず。そこをどうか見つけてほしい。少なくとも、子どもたちが観ることの邪魔だけはしないでほしい」

すでに30歳のころには、監督は初めてのチーフディレクター役として『海のトリトン』に関わっていた。

「あの作品ではアニメの持つ特殊な性能を教えてもらいました。放映終了後に、トリトンのファンクラブの子たちの集まりに呼ばれて、行ってみたら実に1000人くらい中高生の女の子たちが集まっていたわけです。アニメのキャラクターにシンパシーを感じてこんなに支持してくれるんだ、これは芸能人に対するものにかなり近いぞ、という重要なことを体感
できた。ただ、その芸能、エンタメという感覚をうまくガンダムシリーズには導入できずにいたのも事実。それは僕自身がガンダムという前例に縛られて、“こうあるべき”という型にとらわれていたせいかもしれない」

だからこそ『ガンダムGのレコンギスタ』のキャッチコピーに“元気のGだ”という表現を思いつけたことは、大きな手応えになっているという。

「つまりこれまでのガンダムって、実は元気どころか、ぜんぜん芸能的に享受される作品にはなってこなかった。それが今回ようやく、“G”の1文字をガンダムじゃない何かのシンボル、それもあろうことか“元気”として見立てることに成功した。だから『G-レコ』は僕個人にとっても脱・ガンダムと呼びたい作品なんです。そして重要なのは、これはひとりでやっていたら絶対できなかった発想だということ。作品全体についても、スタッフワークのなかで整理され形は変わっていく。それでいいんです。人との関係のなかで揺さぶりをかけられることが突破口になるし、演出の手つきも変化してくる。ひとりの人間の考えることってたかが知れていて、自分勝手にやってると危険なんです。実生活のなかで他者とコンタクトして、刺激を受けないといけない。みなさんにもひとつだけいえるのは、自分が袋小路に入っていると感じたら、やはり別のものを入れてみて再構成するのが大事ですよということ。異能な人、異質なもの、異民族や異宗教、そういうものをたがいに取り込むことで、われわれ人類も不毛な分派抗争に陥らずに、違う突破口が見えてくるはずなんです」
 
30オトコへの真摯なアドバイスが人類文明に直結する。最新の宇宙論から経済視点による文明論まで縦横に“勉強”し続ける監督だからこそのスケール感だ。それら膨大なインテリジェンスが投影され、ひとつの現象やひとりのキャラクターの行動が世界の構造を表現するような、新しい物語が紡がれる。監督の新たな冒険の始まりだ。

「単純に物語的におもしろがって観てもらえるつくり方をしているつもり。元気にガンダムで冒険してみせる。そういうお話です。だってさ、巨大ロボットもので深刻なメッセージドラマなんて誰が喜ぶかって。ねえ?」
(及川 望)
(R25編集部)

富野監督が語る「G-レコ」の魅力はコチラ

※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびweb R25から一部抜粋したものです
※一部のコラムを除き、web R25では図・表・写真付きのコラムを掲載しております

関連記事リンク(外部サイト)

「ガンダム知らず」20代が5割?
富野監督、アムロになれます? 僕は!
『ガンダムさん』日曜定番なるか?
埼玉とジオン公国が姉妹都市提携?
IT業界あるあるガンダムの台詞に

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
R25の記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP