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住人の「好き」を大切にしたら、長く愛される家になった

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賃貸だからって、自分の住む空間は自分の好きにしたい! そう思う人も多いだろう。そんなニーズに応え、最近、「改装OK」や「原状回復義務無し」の賃貸物件が少しずつ増えている。実際に、インテリアが大好きで、自分の希望の空間に住みたいと思い続けていた女性が、一から自由にカスタマイズした物件を訪ねた。彼女が言う、「家賃を初めて『感謝』を込めて払った」背景にあるものは?賃貸でも「理想の部屋」が叶う条件とは

目白駅から徒歩10分もかからない住宅街の中に、4階建てのこじんまりとした真っ白な外観のマンションが現れる。側面に並ぶバルコニーや窓のつくりがどことなくレトロで味わいを感じさせる。聞けば、築40年を超えていると言う。5月にこのマンションに入居した竹沢さんは、マンションの持つレトロさに、祖母の形見のミシン台を掛け合わせ、素朴で懐かしい部屋をつくり上げた。

「疲れて夜中に帰っても、入るとなんだか、自然とにやけちゃって」と、出来映えを紹介する彼女。「『ここにこれがあったらいいな』や『こう暮らしたい』と、思い描いたことが全てできた」と満足そうだ。

元々、インテリアが好きで、その延長線上で仕事もしているほど。自分が暮らす部屋こそ、好きなモノに囲まれていたい。だが、前居は普通の賃貸物件。その願いは叶わなかった。半年後に更新を控え、次の家についてぼんやり考えていたころ、改装が自由にできるマンションの企画をしていた友人の建築家から話をもらい、「待ってました!」と飛びついた。

ひとくちに「改装可能」といっても、その範囲は物件や借り手によってさまざまだ。棚の据え付けや壁紙の張り替えなど、DIYで改装が可能なものから、プランを練り間取りの変更まで行ってしまうものまで幅広い。竹沢さんの部屋は、後述するがかなり年季の入った部屋だったため、オーナーと相談し、間取りの変更も含めた抜本的な改装を実施することとなった。

また、彼女には以前から「自分が住む部屋だから、施工過程にも関わりたい」との思いがあった。そこで、基本はプロにお願いしながらも、要所では(友人たちも呼び)ワークショップを開き、自分も工事に関われるような方針をたてた。(※この改装方針を可能にするのは、素人の参加を受け入れてくれるプロが重要になる。『女子一人でもここまでできる! プロと楽しむDIYの現場に潜入』http://suumo.jp/journal/2014/09/01/68444/)約20年もの生活の埃や汚れが積み重なった古部屋。場を受け継ぐ、ということ

期待に胸を膨らませ、初めて自室に訪れた竹沢さんを待ち受けたのは、20年分の生活の痕跡が積み重なった部屋だった。前居住者のおばあさんはここに約20年暮らし、今から2年前に退去。部屋は住人が去った状態のまま2年を経、室内は古びてボロボロになっていた。キッチン窓には長年の埃が油で固まって分厚くこびりつき、畳は黄ばんで所々腐食のせいか歩くとふわついている。玄関脇の靴棚下には穴があき、お風呂は現代では見られぬ小ささで、タイルの浮きや汚れが目立った。

【画像1】解体直前。全体的に古びた感じが否めず、黄ばんだ壁が部屋をより狭く感じさせる (写真撮影:藤本和成)

【画像2】タイルがひび割れ、はがれていた浴室。今では見られない極小の浴槽は長年の使用で変色している (写真撮影:藤本和成)

しかし、そんな状況の部屋を見ても、竹沢さんは「襖や畳や水まわりなど撤去を前提とするものは、いくらボロくても換えられると分かっているから」気にしませんでした。元々、古いものに抵抗も無い。むしろ、新築ではつくり出せない古さを味に感じられるような部分を、宝探しのように見つけるのが楽しかった。それに、立地や周辺の環境は最高なのに、もったいないなと実感しました。

竹沢さんは「少し懐かしい」と感じる部屋に暮らしたかった。竹沢さん曰く「最新の(設備)性能よりもインテリア」らしいが、彼女の「インテリア」は単なる家具や建具を指す以上に、その部屋の雰囲気や場そのものを指している。その場所の雰囲気は、そこが重ねてきた歴史や経験で形づくられる。その過去が自分にとっていいのかは、住み手の判断に委ねられるが、経験を重ねているという点で、古い物件は、新築の住宅にはない付加価値を兼ね備えているとも言えるだろう。「名付ける」ことで大切さが増す。祖母の古ミシンがメインの「memento(形見)」部屋へ

竹沢さんは早速、どのように部屋を変えるか、プランを練り始めた。したい暮らしのイメージは既に固まっている。前の部屋には狭くて置けず、実家に大切にしまっておいた祖母の形見のミシン台。最初におんぼろの部屋を見たときから、改修のイメージはこのミシン台の再生を出発点にしようと決めていた。部屋の名前は「memento」、英語で「形見」という意味だ。名前をつけると、どのような部屋にしたいかが明確になる。そして、人に伝えやすくなる。mementoの名の通り、竹沢さんの部屋は、以前の居住者のおばあさんや、彼女自身の祖母の思い出が詰まった、少し懐かしい、素朴な部屋となった。

床の畳は全て剥がし、2つあった押入れの一つは解体し、もう一つはハンガーパイプや棚を取り付けクローゼットに改装した。古い油がこびりついたキッチンも廃棄し、自分の思う通りのサイズのキッチン台を置くことにした。また、元々は玄関から部屋が見通せる間取りだったのを、玄関ドアの前に目隠しとなる収納(洗濯機置き場)を配置して、ドアを開けても全てが見えないように工夫した。そして、この部屋を色づける祖母のミシン台は、ミシンの代わりに白い陶器のボウルを置き、新たな洗面台として生まれ変わった。

【画像3】左:部屋のテーマの”memento”の文字をあしらった洗面スペース。シンボルの形見のミシン台は洗面ボウルを据え付け再利用した(写真撮影:藤本和成)

【画像4】無垢材のフローリングに白壁が映える竹沢さんの部屋。どこか懐かしく、手作業のぬくもりを感じる家具がよく合う。白壁が窓の日射しを反射して、以前よりも数段、部屋を明るく見せている (写真撮影:藤本和成)

【画像5】部屋の奥からの風景。右奥にあるのが、形見のミシン台を改修した洗面台だ (写真撮影:藤本和成)

【画像6】使い勝手を考えつく直したキッチン。調理スペースとシンクの位置を反対にした。冷蔵庫置き場の確保のため、キッチン台そのものは小さくしたが、シンクや収納は大きくし、自分仕様にこだわった (写真撮影:藤本和成)

【画像7】事前に思い描いたプラン。完成後の今の部屋と寸分違わない (写真撮影:藤本和成)賃貸でも「理想の部屋」を叶えるには

竹沢さんの暮らしは小さく、でも意味合い的には大きく変わった。充実度が増した、と言ったほうが良いかもしれない。起床後、祖母の洗面台に向かい身支度をする。人を招くことが楽しくなり、週末は友達を招きホームパーティーを開く。

竹沢さんのように「好きなものに囲まれた暮らしをしたい」と、室内をDIYで変化させる入居者も増え、大工道具の貸し借りや人手が足りないときに助け合うなど、新しいコミュニティも生まれている。ホワイトマンションは築年が古く入居希望者が少なかったが故に、オーナーの「家を改造してもいい」との英断が生まれた。

住人の「好き」を大切にした家づくりをめざしたオーナーに、竹沢さんは「家賃を『感謝』しながら払うようになった」と言う。借りている住人も、オーナーも満足する関係のつくり方が、「したい暮らしを追求する」という姿勢に表れているようだ。●『女子一人でもここまでできる! プロと楽しむDIYの現場に潜入』
HP:http://suumo.jp/journal/2014/09/01/68444/
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/09/05/68770/

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