ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

70歳超の54%が服用の降圧剤 死亡リスク10倍に高まる結果も

DATE:
  • ガジェット通信を≫

「血圧147は健康なのか」──医学界を揺るがした「健康基準値論争」について、70万人を対象とした大規模調査を行なった医学者が新たな問題提起をした。その核心を解説する。

 きっかけは週刊ポストの特集記事だった。

「『血圧147は健康』で『病人1800万人減』のカラクリ」(5月2日号)

 人間ドック学会が4月4日、150万人の人間ドック受診者のうち、健康な状態にある約1万人のデータをもとにはじき出した新しい「健康基準値」を発表。その新基準値について取り上げた本誌記事が大きな反響を呼び、他のメディアも特集を組むなど、健康基準をめぐる大論争に発展した。

「健康基準値」とは、血圧やコレステロール値などの数値が、ある一定の範囲内に収まっていれば「正常」、逸脱していれば「異常」と判定する際の基準となる数値のことだ。人間ドック学会の新基準が話題を呼んだのは、それらの数値が既存の基準に比べ、大幅に緩和されたからだ。

 ところが、その新健康基準はその後、他の学会からの猛抗議を受けることになる。

<本当に「正常」といえるか不明であり(中略)一部には「要再検査、要治療」が含まれている>(高血圧学会)

<人間ドック学会の「基準範囲」は日本国民の健康に悪影響を及ぼしかねない危険なもの>(動脈硬化学会)

 などと、既存の基準値を定めてきた各学会の逆鱗に触れたのだ。

 そうした圧力の前に、人間ドック学会は「あくまで健康の目安であり、病気のリスクを示したものではない」と、すぐさま尻尾を巻いた。

 そのまま押し切られるかに見えた「健康基準値論争」に待ったをかけたのが、大櫛陽一(おおぐし・よういち)・東海大学医学部名誉教授である。

 大櫛教授は、いまから10年前の2004年、日本総合健診医学会シンポジウムのなかで、全国約70万人の健診結果から、日本ではじめて男女別・年齢別の「健康基準値」を発表した第一人者だ。

 今回の人間ドック学会の調査のまとめ役といえる研究小委員会学術委員長を務めた山門實(やまかど・みのる)・足利工業大学看護学部長とは、かつて共同研究を行なった間柄でもある。

 大櫛教授は過去の自身の研究成果や欧米の最新論文などをもとに『「血圧147」で薬は飲むな』(小学館刊)を緊急出版し、健康基準についての考え方を世に問うた。

 発売早々、大きな話題になっている本書だが、なかでも注目を集めているのが、本書に収録された大櫛教授の70万人調査をもとにした「新『健康基準値』一覧表」だ。それを見ると、現行の基準とは大きくずれていることがわかる。

 たとえば60~64歳の男性の場合、血圧は164までが「正常」で、悪玉コレステロールとして知られるLDLコレステロール値についても183までが「正常」となっており、120以上を「異常」とする現行の基準とは大きくかけ離れている。

「現基準値は性別も年齢も分かれていない項目が大半ですが、欧米の複数の調査研究では性差や年齢差でさまざまな疾患に対するリスクが異なることがわかっています。たとえば米マサチューセッツ州フラミンガムの住民を追跡調査した研究では、男性と女性、かつ5歳刻みで心疾患に対するリスクが異なることが明らかになりました。

 日本では強引に一つの基準にすることで、本来は健康なはずの人が『病気』とされ、無駄な薬を飲まされている危険性があるのです」

 その典型が降圧剤だという。

「降圧剤で少し前までよく使われていた『Ca拮抗剤』に関する無作為化試験(客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験)では、急激に血圧を下げたグループは、少しだけ下げたグループと比較して、死亡率が1.4倍上がったという結果が出ました。

 私たちの研究でも180/110以上という血圧高めの方たちのうち、降圧剤を飲まなかった人たちと、降圧剤で160/100未満まで血圧を下げた人たちを比較したところ、薬を飲んだグループの死亡リスクが10倍に跳ね上がったという結果が出ています。

 このような降圧剤のリスクは世界では常識とされていますが、日本だけはすさまじい勢いで服用されており、厚労省の平成24年『国民健康・栄養調査報告』では70歳を超える人では54%が服用しています」

※週刊ポスト2014年9月12日号


(NEWSポストセブン)記事関連リンク
人間ドック学会が出した健康の新基準値に専門学会側が猛反発
新健康基準値公表 日本全体で「病人」が2270万人減る計算
現在の基準と大差がある健康新基準値を公表 健康な人増える

NEWSポストセブンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。