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元原子炉設計者の大前研一氏「原発対応組織を官邸に置くべき」

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「原発は廃止せよ」「いや再稼働が必要だ」──賛成論者と反対論者が二元論をぶつけあう中、ひとり正論を語り続けているのが大前研一氏だ。

 元原子炉設計者であり、福島第一原発事故直後から状況を正確に分析して当時の菅直人政権にアドバイスを求められた大前氏は、東京電力の要請で原子力改革監視委員会の委員にも就いた。

 日本の原子力行政を最も知る同氏は、原発推進論者ながら「今のまま再稼働すると、あの悲劇が再来する」と厳しく警告する。

 * * *

 九州電力・川内原子力発電所(鹿児島県)の再稼働論議が大詰めを迎えている。

 川内原発1・2号機については原子力規制委員会が、「(東京電力・福島第一原発事故を教訓に強化された)新規制基準を満たす」と認め、再稼働が確実な状況になった。

 今のところ認可手続きに必要な書類の提出が予定より遅れ、当初目標といわれた秋の再稼働は困難になっている。そのため8月18日には茂木敏充・経済産業相が九電の貫正義・会長と会い、「最大限の(経営)資源を投入して全力で取り組むように」と書類の提出を急ぐよう要請した。

 政府は「まず再稼働ありき」で前のめりになっているわけだ。しかし、現状での再稼働は時期尚早といわざるを得ない。

 福島の事故を繰り返さないため、この3年半、政府や原子力規制委員会は津波の想定高を見直すなど規制を強め、電力会社はそれに対応してきた。

 改善点として「ハード面」ばかりにスポットが当たっているが、肝心な「ソフト面」、つまり「運用する組織やルール」についてはまったくといっていいほど対策が進んでいないことを多くの専門家も国民も見落としている。私の懸念はまさにその点にある。

 九電によると、川内原発ではハード面の対策として国の指示に基づく緊急安全対策(電源の確保、冷却水を送るポンプなどの確保、冷却水の確保)を実施し、地震や津波で通常の冷却設備が使えなくなった場合でも、原子炉や使用済み燃料貯蔵プール内の燃料を継続的に冷却できるようにした。

 原子力規制委員会は、九電が想定する地震の最大の揺れ「基準地震動」を従来の540ガルから620ガルに、想定する最大の津波の高さ「基準津波」を約4メートルから約6メートルに引き上げたことを妥当とし、対策についても認めた。

 たしかに川内原発は、技術的な安全対策では新基準をクリアしている。しかしそれを運用する人間的・組織的な安全対策はまったく進んでいないから、もし事故が起きたら福島と同じ悲劇を招く可能性が高い。

 とくにひどいのが政治の無責任体制だ。

 そもそも政府内にも自民党内にも原発事故対応を担当する組織がない。そのことをなぜもっと問題にしないのか、私は不思議に思う。

 それは経産省でも原子力規制委員会でもできない仕事だ。経産省は原発再稼働を推進する立場だし、規制委員会は新基準に適合しているかどうかを判断する独立した組織だからだ。

 もし規制委員会に事故対応させたら、自分たちが認めた原発なのだから自己正当化に走るだろう。福島の事故で、原子力安全委員会の班目春樹・委員長(当時)が事態を過小評価して見誤ったのと同じ構図になる。

 実際、原子力規制委員会の田中俊一・委員長は「(川内原発は)基準に適合していても、『安全』とは申し上げない」と、はなから責任逃れの発言をしている。つまり、現状では最終的な責任者が政府内に存在しないのだ。

 私は、原発事故対応を担当する組織は首相官邸に置くしかないと思う。

 トップは首相ではなく、原子力について確かな知識のある人間でなければならない。無知な首相が指揮を執ったら、ヒステリックにわめいて現場を大混乱させた菅直人・元首相の二の舞を演じるだけである。

※週刊ポスト2014年9月12日号


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