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自治体の個人情報公表 第三者が難癖つける事例が少なくない

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 8月20日未明に発生した広島市の土砂災害の救助活動が続く中、25日に行方不明者28人の氏名が公表された。同日の会見で新聞記者に「個人情報保護法などのプライバシーの問題はどうクリアしたのか」と問われた松井一実・広島市長は、「私の責任でやることになった」とトップダウンの“決断”だと強調した。

 

 このやり取りはいかにも奇妙だ。というのも救助活動を円滑に行なうために安否確認は必要不可欠であり、氏名公表に法的な問題はないのだ。弁護士・横山雅文氏が解説する。

 

「各自治体の個人情報保護条例で『個人の財産や生命を保護するために必要な場合は個人情報を公開していい』という趣旨の規定があります(広島市では8条4号)。今回の広島市の行為が法律的に咎められることは一切ないと考えていい」

 

 だが、行方不明者数が一時、1万5000人を超えた東日本大震災の時でさえ、多くの自治体はその氏名を公表しなかった。今回、市長がわざわざ“決意”を表明する事態となった背景にあるのが「個人情報」を巡るクレーマーの存在だ。自治体の危機管理に詳しい上村章文・自治大学校客員教授が語る。

 

「法的に問題なくても、クレームをつけられる可能性を市側は危惧したのでしょう。自治体も企業も筋の通らないクレームに苦しんでいて、例えば今回のケースでは『公開された名前をネットで検索して金持ちだとわかったら、空き家になった家から財産を盗もうと考える輩が出てくる!』といった抗議を受ける可能性が考えられます」

 荒唐無稽な話に思えるが、近年は特に被害を受ける当事者ではない第三者が、仮定を重ねて難癖をつける事例が少なくないのだという。 加えて前出・横山氏は特に自治体がクレーム対応にナーバスになっていると指摘する。

 

「私企業だと本当に困ったらお見舞い金などの名目でお金を渡して手打ちにすることもできますが、自治体は税金から筋の通らない支出をするわけにいかない。かといって納税者にすげない対応もできません。それに乗じて行政にばかりクレームを入れる人もいます」

 

 個人情報への過剰な配慮によって人命救助に支障が出る──むしろそんな事態にこそ激しいクレームが入りそうに思えるが。

※週刊ポスト2014年9月12日号


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