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デング熱、国内感染69年ぶりに発生! 地球温暖化で拡大する熱帯性感染症

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 東京・代々木公園でデング熱発生、都が蚊駆除

デング熱が日本で発生した。発生したのは東京の代々木公園。埼玉県と東京都が8月28日、同県の20代女性と都内の20代男性の2人、10代女性1人が国内でデング熱に感染したと発表した。国内での発症は実に69年ぶりのことだ。

3人は都内の学校の同級生で、代々木公園(渋谷区)で学園祭に向けてダンスの練習をしていたという。都は公園に生息する蚊が媒介したとみて同日夕、公園内で蚊を駆除したが、「感染が拡大する可能性は極めて低い」としている。

デング熱はウイルス性の疾患で、蚊に刺されることで感染する。熱帯や亜熱帯の全域で流行しており、東南アジア、南アジア、中南米で患者の報告が多く、その他、アフリカ、オーストラリア、南太平洋の島でも発生がある。最も日本に近い流行地は台湾。

デング熱にかかった人は、ほとんどの場合、問題なく順調に回復する。突然の発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛が現れ、発症後3〜4日後より発疹が広がる。こういった症状は通常3〜7日程度で消失し回復する。治療せずに死亡に至る割合は1~5%で、適切な治療を行えば、その割合は1%を下回る。現在西アフリカで流行しているエボラ出血熱は致死率50%だからはるかに安全だ。

都は26〜27日に公園内でデング熱を媒介する蚊の一種で日本に広く生息するヒトスジシマカなど35匹の蚊を採集したが、ウイルスを保有する個体は確認されなかった。蚊の寿命は30日程度、行動範囲は半径50メートル程度とされ、都は28日、3人がダンスをしていたとされる渋谷門付近の広場を中心に半径75メートルの範囲で、生け垣や樹木などに約800リットルの殺虫剤を散布。周囲に金網のフェンスを設置して29日朝まで立ち入り禁止にした。

致死率が低いとはいえ、重症化してデング出血熱になると、口、目、鼻などの粘膜から大量に出血し、死に至ることもある。どんな病気で、どんなことに注意すればよいのだろうか? 流行するのはどんな場所なのだろう?

 デング熱とはどんな病気か?

デング熱(英:dengue fever)は、デングウイルス(Dengue virus)が原因の感染症であり、熱帯病の一つである。予防ワクチンは無い。

一過性の熱性疾患であり、症状には、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛(Arthralgia)、はしかの症状に似た特徴的な皮膚発疹を含む。治療方法は対症療法が主体で、急性デング熱にはいま起きている症状を軽減するための支持療法 が用いられ、軽度または中等度であれば、経口もしくは点滴による水分補給、より重度の場合は、点滴静脈注射や輸血といった治療が用いられる。

稀ではあるが、生命を脅かすデング出血熱に発展し、出血、血小板の減少、または血漿(けっしょう)漏出を引き起こしたり、デングショック症候群に発展して出血性ショックを引き起こすこともある。

主な媒介生物はヤブカ属の中でも特にネッタイシマカ(Aedes aegypti)やヒトスジシマカ(Aedes albopictus)などの蚊によって媒介される。ただし、ヒトスジシマカにとってヒトは主な吸血対象ではなく、デング熱の媒介はまれである。

このウイルスには4つの異なる型があり、ある型に感染すると、通常その型に対する終生免疫を獲得するが、他の型に対する免疫は短期間にとどまる。また、異なる型に続けて感染すると、重度の合併症のリスクが高まる。

デング熱にかかった人は、ほとんどの場合、問題なく順調に回復する。治療せずに死亡に至る割合は1~5%で、適切な治療を行えば、その割合は1%を下回る。しかし、重症例における死亡率は26%に及ぶ。

ワクチンや予防する薬はない。現在ワクチンの開発がすすめられている。蚊に刺されないようにすることが唯一の予防法である。そのため、防虫対策は大切である。

蚊は100円玉ほどの水溜りさえあれば、そこに卵を産み付ける。過去に流行した台湾では毎年、梅雨が明けるころ、市は殺虫剤を散布。散布時は人には害はないというが悪臭が立ちこめる。感染の広がりを抑えるために、ひたすら消毒する。これを拒否すれば最大120万円の罰金が科せられるなどの対策が取られている。

 デング熱過去の流行、日本では69年ぶり

日本で流行した69年前とは、どんな状況だったのだろうか?

ご存知の通り、今年は終戦後69年、来年は70年だ。第二次世界大戦後、戦地から持ち帰られたウイルスが、日本にも生息するヒトスジシマカによって媒介され、長崎市、佐世保市、広島市、神戸市、大阪市など西日本で流行し20万人が発病したことがある。

長崎での流行は、堀田進らが報告した。また、堀田らは、長崎のデング熱患者からデングウイルスを分離することに成功した。その後、日本国内での流行は無いが、海外からの輸入症例(海外で感染してデング熱を発症する症例)は、毎年100例前後(2010年は245症例)報告されている。

人口密度が世界第2位のシンガポールでは、2005年にデング熱が大流行した。感染者が1万5000人を超えた。シンガポールではその人口密度のため、ひとたび発症すると瞬く間に被害が拡大する。現在国では年間55億円を投じ、蚊の対策に取り組んでいる。具体的には保健所の人が各家庭を訪問し、蚊の発生する水たまりがないかどうかをチェックする。テレビではCMが流れ、公共交通機関には大きな広告で、繰り返し、蚊を発生させないように呼びかける。

2007年10月、台湾(中華民国)南部の台南市において511人の感染が報告された。ハワイでは1940年代にネッタイシマカが根絶されてデング熱も60年間発生していなかったが、2001から2002年にかけて流行し、122人の患者が発生した。2014年にはフィジーにおいても発症が広まり1万人以上が感染し11人が死亡した。

デング熱は、110ヶ国以上で風土病となっている。世界中で毎年5,000万から1億人が感染していて、そのうち約50万人が入院し、およそ12,500~25,000人が死亡している。

 熱帯感染症と地球温暖化の影響

今回、代々木公園で、感染者が発見されたのは、海外から帰国した感染者が、公園の蚊に刺され、同じ蚊が他の人を刺したことで広がったと考えられている。

気になるのは2008年7月5日に放送された、テレビ朝日「地球危機2008」という番組。今回の状況にそっくりの状況を想定したVTRをつくっていた。この番組は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの報告書をもとにつくられていた。やはり、地球温暖化が進んでいるのであろうか。

WHO(世界保健機構)でも、地球温暖化を受けて病気が熱帯から温帯地方へと広がっていると報告している。これは、気温や湿度の上昇によって蚊などの昆虫や、ネズミなどのげっ歯類の生息範囲が広がることが理由だそうだ。

温暖化と感染症による健康影響は、これらの多様な影響のうち、どの程度、どのように影響するのかに ついて、まだ明確にはわからない部分も多くある。とは言え、温暖化によって媒介動物の分布域が拡 大する傾向や、高温化に伴って感染力が増大する傾向などが見られることは、温暖化による影響評価を試 みている多くの研究成果が示唆している。

今は熱帯地方独特の病気で我々には無縁だと思われているものも、やがて身近な病気になっていくのかもしれない。主な熱帯性感染症として次のような例が挙げられている。

1.マラリア:マラリアはマラリア原虫をハマダラカが媒介することによって広がる。マラリアが春に流行するのを防ぐためには、その前の冬の気温が16度以下に下がっていなければならない。国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気温上昇によって世界人口の65%(今より20%多い)が伝染の危険にさらされるだろうと考えている。

一方で、今の日本の住宅環境やインフラストラクチャーでは仮に地球温暖化が進んでもマラリアが流行するとは思えないとする意見も出ている。

2.デング熱:東南アジア、インド、中米、南太平洋など熱帯地域に広く分布しているデング熱は、デングウイルスに感染したヒトスジシマカなどによって広まる。蚊の生息範囲は幼虫と卵があまり寒いと凍結して死んでしまうことから、今は熱帯・亜熱帯に限られている。

しかし、EPA(アメリカ合衆国環境保護庁)や農務省の研究によると、若干の気温上昇だけでデング熱は温帯地方へも侵入してくると考えられている。蚊はシカゴと同じぐらい北にあるオランダや、アンデスの高地へと生息範囲を広げている。

3.脳炎:セントルイス脳炎、日本脳炎など脳炎は節足動物が媒介する病気で、ニューヨークでは1999年の夏に記録的な猛暑と乾燥があってセントルイス脳炎と西ナイル熱の両方が流行した。干ばつが起こると水の流れない水たまりができてしまい、そこでは蚊を捕食する蛙は増えないのに蚊だけが大量発生するという状況が起こった。

地球温暖化では、この種の水たまりが多くできる大雨と干ばつの繰り返しがしばしば生じると考えられている。

4.腺ペスト:腺ペストは、まずペストに感染したネズミからノミが吸血して、そのノミに刺されることで感染するペストの中ではよく見られる。

米国科学アカデミー紀要に掲載された研究によると、地球温暖化は「黒死病」の発生を促進すると報告されている。春に気温が1度上がると、バクテリアの流行は50%増加すると考えられている。

5.コレラ:コレラはコレラ菌に汚染された食物や水を摂取することで感染する病気。WHOではコレラの蔓延を海面温度の上昇、海面の上昇、エルニーニョと結びつけて考えている。コレラを保有する動物プランクトンは暖かい水温で増殖する。

画像 デングウイルス Image courtesy of the CDC Public Health Image Library. https://www.broadinstitute.org/files/DengueSlide.png

※この記事はガジェ通ウェブライターの「なみたかし」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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