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●[対談]乙武洋匡×鈴木寛「日本の教育問題」(5)

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乙武: 教育改革の必要性は様々な側面から議論されていますが、鈴木さんはどのような点に課題意識をお持ちですか?

鈴木: 現在のように、教室のなかだけで均一化した教育を行うのではなく、より児童・生徒一人ひとりに適した対応を取れるようにすることでしょうね。医療でたとえるなら、医者は本来、自分の病院での情報だけで判断したのではダメで、家庭での食事、生活習慣、職場でのストレス、他の病院でどんな薬を処方されているのかを知ったうえで総合的に診断・処方する必要があります。そこで最近、処方の履歴を書き記した「おくすり手帳」が導入されたわけですが、教育にもこうした多面的な対応が必要だと思いますね。

乙武: たしかに、それぞれの患者に適した治療を行うためには、普段の食生活や生活習慣など、診察以外で得られる情報も必要になってきますよね。

鈴木: 教育も同様なんですよ。純粋に情報の摂取量だけで比較すれば、授業よりもテレビやインターネットから入ってくる情報の方が、圧倒的に多い現実があります。ですから、理想をいえば、その子供が365日24時間、家庭でどのような学習をして、どのようなコミュニケーションを取っているのかを把握したうえで、ベストミックスな教育を行うべきなんです。

乙武: 私は東京都教育委員に就任して1年半ほどになります。もちろん、いじめや体罰、学力向上など様々な課題について議論するのですが、同時にジレンマも感じています。というのも、教育委員が携われるのは学校教育だけなんですね。しかし、子どもというのは学校だけで育っているわけではありません。家庭や地域にも目配せをしていかなければ、本当の意味で教育は語れないと常々感じていました。

鈴木: その通りだと思いますが、現在の教育システムは、非常に表面的なものになってしまっている。

乙武: 今の時代、学校からすると、家庭というものがどんどんブラックボックス化してしまっています。多くの学校では現在、個人情報の観点から名簿もありませんし、とくに希望がなければ家庭訪問も行いません。その子がどんな家庭環境で育っているのか、それは学校での教育を行っていく上で非常に重要な情報となってくるはずなのですが。

鈴木: 本当は、家庭訪問に伺った際、玄関口に置いてあったグローブを見つけたりして「ああ、この子は野球が大好きなんだ」と感じ取るようなことが、その後の教育の大きなヒントになったりするものなんですけどね。教室で見ているだけでは、なかなか生徒一人ひとりに最適化した対応をするのは困難です。

乙武: ひとり親の家庭や共働きの家庭など、家族のあり方が多様化してきた現在だからこそ、より家庭と学校の連携が重要になってきていると思うのです。そこに地域を加えた三者で、子どもたちを見守り、育てていく。耳ざわりのいい理想論に聞こえるかもしれませんが、子どもたちの成長のため、どのような形でそれを実現できるのか、これからも模索し続けていきたいと思っています。

(構成:友清 哲)

【今回の対談相手】
鈴木 寛さん
1964年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。通産省、慶應義塾大学助教授を経て、2001年、参議院議員初当選。12年間の国会議員任務の中、民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化・情報を中心に活動。現在は、日本初の東京大学・慶應義塾大学ダブル教授、社会創発塾塾長、日本サッカー協会理事ほか。

(R25編集部)

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