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良い人戦略と非ゼロ和ゲーム(メカAG)

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今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

良い人戦略と非ゼロ和ゲーム(メカAG)

チェスやスポーツで競い合うのは爽やかで心地よいのに、現実の世界で競い合うのはあまりそういう感じがしない。それはチェスやスポーツがゼロ和ゲームなのに対して、現実の世界の競争の大半は非ゼロ和ゲームだからだろう。

ゼロ和ゲームというのは、一方の利益がそのまま他方の損失になる。相手の失点が自分の得点。勝者と敗者が分かりやすい。勝者と敗者の合計が常にプラスマイナスゼロなので、ゼロ和ゲームという。

一方そうでないゲームとしてポピュラーなのは囚人のジレンマ。二人ともプラスになるケースもあるし、二人ともマイナスになるケースもある。もちろん一方がプラス他方がマイナスになるケースもある。必ずしも合計がゼロにならないので、非ゼロ和ゲームと呼ばれる。

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囚人のジレンマの場合、協調してきた相手を裏切った場合に利益が最大になる。だからといって双方が裏切りを選択すると両方とも大損。双方が協調の場合は両方ともそこそこプラス。

安定して得点を最大にするには、双方が協調を選択し続ければいいわけだけど、相手が協調を選択するのがわかってるなら、裏切ったほうが自分の利益になるから悩ましい。そして相手も同じように考えるから、常に裏切られる可能性がある。まさにジレンマ、まさに現実世界の縮図。

思うに日本人は非ゼロ和ゲームが苦手。いや、日本人に限らず非ゼロ和ゲームが得意な人間はいないんだが、好みとして日本人はこの種のゲームを好まないのではなかろうか。ゼロ和ゲームなら勝負と割り切れる。しかし協調と裏切りとなると、裏切ることを躊躇してしまう。騙し合い、駆け引き。それはそれで面白いゲームだと思うのだが。

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非ゼロ和ゲームのポジティブな面は、力を合わせればどちらも勝者になれること。ウィン-ウィン、すばらしい。友情、努力、勝利。日本人好みの展開だ。

でもそれは、いかに相手を出し抜くか(信頼させて裏切る)というゲームと表裏一体。夜景を見ながらワイングラスを片手に「ククク、世の中、賢い者がすべてを手に入れるのだ」みたいな世界(笑)。なんかこっちは日本人は好まないよね。フィクションではこういうのはたいてい悪役でラストで悲惨な結末を迎える。

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長期的に安定するのは、お互い協調し合う戦略。でも閉鎖された世界の中で「協調」に最適化された社会の中に、何かの拍子に「裏切り」を好むプレイヤーが入り込むと、そのプレイヤーはすごく強い。なにしろ自分以外の人間は協調しか選択してこないんだから、自分は裏切りを選択すればすべての相手に勝利できる。双方裏切り合って自滅というパターンを心配する必要がない。なんか日本社会のようだよね(笑)。

なのでそういう「悪」の因子を排除するために、基本は協調でも、悪に対しては報復をするという戦略が重要になってくる。シンプルなのはしっぺ返し戦略。最初の1回は協調してみて、その後は相手が協調してくれば引き続き協調。裏切ってくればこちらも裏切る。むろん双方とも永久に裏切り合えば自滅するだけだが、裏切れば報復されるということを相手に教える必要がある。

シンプルだけどわりと有効な戦略。冷戦時代の相互確証破壊戦略みたいなものだ。核兵器を撃てば撃ち返される。だから抑止力になるという理屈。裏切れば裏切られることがわかれば、裏切りに対する抑止力になるだろうという戦略。

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対戦相手を選べるという要素を加えると、よりリアルになる。協調し合うプレイヤーとはいつまでもプレイをし続けて、お互い得点を稼ぐ。裏切りばかり選択するプレイヤーとの対戦は早々に打ち切る。ようするに善人は善人同士でお付き合いしましょう、と。悪人は悪人同士裏切り合って自滅して下さい、と(笑)。

でも、それで済むならそれが必勝戦略になるはずなんだけど、囚人のジレンマに必勝戦略は見つかってないんだよね…。善人か否か(つまりこの相手と対戦を続けたいか否か)を判断するアルゴリズムには、常にその裏をかくアルゴリズムが存在するわけで。

正義が勝たない世界…でもだからこそ、この世界は多様性に満ちている。諸行無常、下克上、盛者必衰。良くも悪くも変化の可能性が常に開かれている。逆に「信頼し合えば最後には勝つ」という必勝戦略がある世界は、たぶんさまざまなものが固定化されてしまい、変化も発展もない世界だろう。それがムラ社会。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年08月29日時点のものです。

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