「これなら80歳までいけるかも」 高齢者を「労働力化」する革新的な新製品たち

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「これなら80歳までいけるかも」 高齢者を「労働力化」する革新的な新製品たち

好景気で人手不足が深刻化している建設現場。すでに高齢化が進んで久しく、総務省の2012年の調べでは、3人に1人が55歳以上だったという。汗まみれになるキツい仕事は、猛暑の夏には熱中症が頻発する危険性も高い。

2014年8月26日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、そんな過酷な労働環境で働く人たちを助ける新しい技術を紹介していた。それは人間の負担を軽くするために工夫された、ユニークで革新的なものだった。
元ソニーの技術者が開発、大ヒット

1着の上着で2万1470円する作業服が、この夏25万着を売る大ヒットとなっている。埼玉県戸田市にある社員15人のベンチャー企業・株式会社空調服が販売する製品だ。

長袖の作業着にファンが2つ付いており、服の中で外気を循環させ汗を気化することで適度に体を冷やすしくみだ。これが過酷を極める猛暑の現場で、必需品となっているという。

鉄道のレールを作る大和軌道製造では、3年前から130人の作業員全員にこの服を支給している。作業員は「これを着ていないと、動きがにぶくなる」と明かす。

1000度近い鉄を目の前で扱う作業場では、かつて1日に2~3人が熱中症で倒れていた。空調服を導入してからはそれがほぼなくなり、夏場の生産量は3割増加した。この服を12年かけて開発したのは、元ソニーの技術者だった市ヶ谷弘司さん(66)だ。

「今までにない製品を生み出し、世の中を変える」

ソニー創業者・井深大氏のそんな言葉を胸に10年前に独立。5つの特許を取得し2004年に販売を開始するものの、はじめのうちは電池が3時間しか持たず売れなかった。

4年前にリチウムイオン電池を独自開発し、11時間作動するようになってから一気に大ヒット。今年は生産が間に合わず売り切れ状態だという。
元パナ社員の製品はSF映画のよう

市ヶ谷さんは「暑いのは日本だけじゃない」と、海外市場へ販路を拡大している。アメリカでは、熱中症で命を落とす人が一番多いのがカリフォルニア州だ。

カルフォルニアワインの産地では、ふどう畑で働く労働者のために空調服を導入しようとしていた。現地でオーナーや作業員に着てもらうと、オーナーは10着の注文を即決。市場規模は一気に広がりを見せた。さらに3年前から、原発事故現場での防護服に空調機能をつける開発を行う。

大阪の辰巳商会は、大阪港でコンテナ船の荷揚げから輸送まで手がける会社だ。作業員は毎日、手作業で20~30キロの荷物の上げ下ろしをする。56歳の作業員・湯川さんは、

「みんな腰痛持ち。仕事だから家庭のために、だましだましやっている」

と話す。過酷な作業のため若い人は集まらず、平均年齢は50歳以上。会社は高齢化する現場に危機感を抱き、人の負担を減らす方法として「パワードスーツ」の導入を決めた。

パワードスーツとは、人体に装着し手や足の動きをセンサーが読み取って、筋力をアシストする装置。装着する姿はSF映画のロボットさながらだ。開発したのは奈良市のアクティブリンクという会社で、パナソニックでモーターを研究していた藤本弘道さんが2003年に社内ベンチャーとして設立した。
力仕事に自信のない女性も働ける

辰巳商会の要望は「なるべく簡易で、腰への負担を軽減するもの」。大幅に軽量化した腰専用のパワードスーツを新たに開発した。これを機に量産化を見越して製作、2015年度中には1000台ほど量産し、価格も50万円くらいに抑えたいとのことだ。

作業員には「これなら70~80歳までいけるかも」と喜ばれ、手応えをつかんだ藤本さんは「我々にとってはすべての始まりになる商品と思っています」と話した。

労働力としてロボットが注目されているものの、まだまだ人間の手で行わなくてはならない仕事は多い。高齢者や女性など力仕事に自信がない人でも「これがあれば」という期待と需要は広がることだろう。労働者不足が深刻化する中で、過酷な作業の負担を少しでもラクにする技術が進歩を続けていることを知った。(ライター:okei)

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