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●[対談]乙武洋匡×鈴木寛「日本の教育問題」(4)

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乙武: 日本では、戦後、日本中どこの地域――それこそ過疎地や島嶼(とうしょ)部でも均質な教育が受けられる仕組み作りが目標とされてきました。それ自体は非常に大切なことですし、一定の成果をあげたと思います。しかしその一方で、何か教育改革を進めようと思えば、「全国すべて均質」であることが足かせとなってくることもあります。

鈴木: そうですね。その学校、その生徒にとって理想的な授業が、必ずしも実現できない側面はあります。

乙武: たとえば今年4月、佐賀県武雄市が民間企業と提携して日本初の官民一体型学校の創設に乗り出したことが、大きな話題となりました。これが成功するかどうかはさておき、こうした斬新なチャレンジに対しては、必ず「けしからん」という批判が巻き起こる。その一因は、「公教育において飛び抜けた存在をつくってはならない」という不文律があるからだと思うんです。

鈴木: 私もまったく同感です。戦後間もないころは、日本は工業立国を目指したわけで、教育システムもそれにならったものになりました。つまり、大量生産のために、マニュアルを暗記し、ベルトコンベアの前で正確かつ高速な作業にあたれる人材が必要とされたわけです。これが、暗記力と再現力を重視する、戦後教育の本質です。

乙武: 実際にそうした人材が高度成長期を支え、日本を先進国へと押し上げてくれました。つまり、その時代にはマッチした教育であったということですよね。

鈴木: そう。ところが、そういった正確さとスピードを求められる作業というのは、デジタル・テクノロジーの発展により、現在は人間の仕事ではなくなりつつあります。

乙武: にもかかわらず、教育内容やシステムはその変化に対応していない、と。

鈴木: より正確にいえば、学習指導要領はある程度そうした変化を織り込んだ内容になっているのですが、それが、私立大学文系の受験には、ほとんど反映されていません。また、社会全体やメディア、政治家などの間でも、十分に共有されていないんですよね。これからの時代に求められるのは、お手本を正確に真似られる人材ではなく、0から1を生み出せる人材です。でも、現在の大人たちの大半は、工業立国を目指していた時代の教育こそが正しいと思い込んでしまっている。

乙武: 私自身、小学校教員を経験して感じたのは、漢字練習や計算問題にほとんどの時間を費やすことが、はたして未来を生きる子どもたちにとってベストな教育なのか、という点です。スマホやタブレットが普及した現代では、漢字を書く機会もどんどん減っていますし、計算だって手元にあるスマホで瞬時に行えます。私たちが暗記させられてきた内容も、スマホでいくらでも調べられる。誤解のないように付け加えますが、漢字や計算を疎かにしていいと言っているわけではありません。ただ、授業時間が限られているなかで、本当にそこまで時間を費すべき内容なのか、いま一度議論しようという話なんです。

鈴木: そうですね。まったくやらなくていいというのではなく、あくまで割合の問題ですが。

乙武: いま日本の教育に最も欠けているのは、「批判的思考」を身につけさせること。提示された情報を鵜呑みにするのではなく、それを疑い、検証し、自分なりの答えを出していく。漢字や計算への時間配分をいくらか減らし、授業でもこうした力を身につけられるよう転換していく時期に来ていると強く感じています。

(構成:友清 哲)

【今回の対談相手】
鈴木 寛さん
1964年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。通産省、慶應義塾大学助教授を経て、2001年、参議院議員初当選。12年間の国会議員任務の中、民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化・情報を中心に活動。現在は、日本初の東京大学・慶應義塾大学ダブル教授、社会創発塾塾長、日本サッカー協会理事ほか。

(R25編集部)

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※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびweb R25から一部抜粋したものです
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