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貧困者を成功できると励ます元貧困者が一番タチ悪いとの意見

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 社会的弱者にまつわる議論が繰り返されている昨今の日本。フリーライターの赤木智弘氏が「貧困者」について指摘した。

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 貧困をテーマにしたメディア、特にテレビ番組は多い。しかし、番組の作り方もさることながら、その出演者が語る「貧困」と、中年になっても結婚もできずアルバイトで生計を立てざるを得ない貧しい人たちが直面している現実との間には、意識の「ずれ」が生じている。

 訳知り顔で貧困問題を語るタレントや識者は多いが、中でも「かつて貧困だった」人の意識の「ずれ」はタチが悪い。もとから裕福な生活を送っていた人よりもだ。テレビで社会問題にコメントするお笑い芸人などがそれに当たる。

 自身が、または同僚や後輩が貧困出身ということで、彼らは「理解者」「経験者」としてコメントする機会を与えられる。しかし芸人の語る貧困は、現在社会問題として議論されている貧困と同じだとは限らない。なぜなら、彼らは一般人と違って周囲の環境に恵まれ、それに甘えている可能性があるからだ。

 例えば、アルバイトをしながら成功を目指す売れない若手芸人は多い。時に彼らはバイト生活の現状を自虐ネタとしても披露している。だが、実際のところ彼らのバイト先は業界の斡旋で融通が利き、突然仕事が入っても「この日は休ませてください」ということが許されてしまう所が多い。また、業界の慣習で先輩芸人に食事を奢ってもらうことや、服や物を譲ってもらうことだってある。

 コネや実利もなく生活のために低賃金労働を「せざるを得ない」人と比べて、そんな芸人の貧困は遥かに優遇されているものではないか。後に人気者になった彼らがテレビで貧困を述懐したとしても、一般の人の貧困とは別のものである可能性が高いのだ。

 さらに、現・貧困者の味方を装いながら、ひどい仕打ちをしているのは「かつて貧困」だったが現在は大きな成功を収めている人たちだ。それは他人に「自分が成功できたのだから、お前も成功できるはずだ!」なんて真顔で言ってしまう人たちのことを指す。

「私は若い時、貧しくても不眠不休で頑張ったから今がある。だから24時間死ぬまで働け」とか言って若い奴に過酷な労働を強いて、やがては政界に進出してしまったどこかの社長のようなタイプの人はなお悪質だ。

 過去に貧困から抜け出し成功した人は、現代の貧困への視点を持たずアナクロな努力を強要しがちだ。努力をした結果としての貧困、努力の機会も奪われている現代の貧困を彼らは考慮しない。この行ないが仮に良かれと思っての激励だとしても、これは「元・貧困の成功者」による傲慢ではないのか。

 彼らには「自分の経験はできるだけ棚に置いて語るべきだ」と言いたい。自分を前に出せる読書感想文や映画の感想ならともかく、貧困とはもっとフラットにそれを生み出すシステムの是非が問われるべき問題である。先輩面して親身に歩み寄る姿勢はいらないのだ。「元・貧困」が貧困を語る場合、自分の経験や自意識を出さないのが賢明である。

※SAPIO2014年9月号


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