日本の「冷たい」を熱帯アジアに売り込む ロックアイスとフローズンビールの挑戦

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日本の「冷たい」を熱帯アジアに売り込む ロックアイスとフローズンビールの挑戦

暑い夏を乗り切るために、日本人は昔から冷えたものを食べたり飲んだりしよう工夫をしてきた。セブン・イレブンで大ヒットしているセルフ式のアイスコーヒーに使われているのが、「ロックアイス」でおなじみの小久保製氷冷蔵(コクボ)の氷だ。堅くて溶けにくいため、飲み物の味を変えず長く楽しめるという。

2年前にキリンが発売したビール「フローズン<生>」は、グラスに注いだ一番搾りの上に、マイナス5度前後で凍らせたシャーベット状の泡を乗せたビールだ。2014年8月12日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、「日本式の冷たいモノ」を海外にも展開しようとする動きを紹介。文化が異なる国に新商品を売り込む苦労がうかがえた。
「ビールに氷」入れるタイに進出するコクボ

タイではビールに氷を入れて飲む習慣があり、氷は必需品。コクボはタイでも自社工場を稼働させている。地元の氷が25円なのに対し、ロックアイスは50円と倍の価格だ。

それでもタイの成長と共に売り上げは伸びており、今年の6月から販売数は前年比で140%と大幅に拡大している。ロックアイスを毎日切らさず購入している会社経営の家族はこう語る。

「タイの氷と違って清潔で、溶けた氷の中にゴミがないのが気に入っています」

コクボは、狙っていた大手スーパーともすべて契約を交わし、タイ事業を開始したばかりの東京・新橋の氷卸売会社スズキアイスと組んで、街の飲食店への販売を本格化していた。

タイ市場の拡大を任されたのは、和田源太さん(37)。新橋で氷問屋として15年の経験を積み、銀座の飲食店を担当してきた。肩書きは「スズキアイス・タイランド」の社長だ。

「43年、氷屋を続けてきたが成長戦略が見いだせなくなった。バンコクにコクボさんがあり、気候が暑い国でもあるので、これからまた成長できるのではないかと」

和田さんはこう語り、通訳付きでの地道な飛び込み営業を行っていたが、庶民を相手にするような店では、ロックアイスの価値をなかなか認めてもらえず苦戦していた。

ちょっとおしゃれなカフェに入っても、すぐに追い返されてしまう。真面目で誠実そうな方だが、名刺を渡すのみで見本品を置いていくこともせず、営業としては不慣れで苦手という感じが否めない。現地に着任して半年、タイ語も現地社員に習う勉強の毎日だ。
「冷やしすぎが嫌い」な中国人にどう受け入れられるか

それでも、ロックアイスの知名度は広がっているらしく、契約に結びつけたときには「よっしゃっ!って感じですね」と心からホッとしている様子だった。コクボロックアイス・タイランドの田久保渡社長(53)はこう語る。

「タイから東南アジアへの輸出の話が来ている。我々のマーケットはタイだけではない。まだまだ周りにたくさんあるんだと思っている」

成長著しい、気候の暑い東南アジアの国々で、まだまだ大きな可能性が広がっているようだ。

一方「フローズン<生>」を、中国をはじめとするアジア市場に売り出したいキリンビールは、香港を視察して思わぬ壁にぶつかる。それは「中国系の人々は、冷やしすぎは体に毒なので冷たすぎる飲み物を好まない」という事実だ。

しかし、案内をしたサンミゲルの郭さんは、キリンビール海外事業推進担当の堀見和哉さん(35)を「香港は非常に多様性のあるマーケット。もっと現場を理解して」と励ました。

確かに、日本人経営のダイニングバーで反応を観察させてもらうと、香港の若者にはウケていた。その後、飲食店店主などを招待した試飲会を行うと、日本人向けの店以外での契約に初めて結びついた。
未熟なアジア市場を開拓する醍醐味

ロックアイスもフローズン<生>も、他社で簡単にまねできない高い技術が駆使されている。それだけに、海外ではぜいたく品という感覚もあり、営業活動は苦しい部分もある。

そんな中、キリンビールが世界10か所で大イベントを打って市場拡大を畳み掛けていたのには、さすがに大手の貫録を感じた。

先進的な日本の商品やサービスは、成長著しい東南アジアで受け入れられてくることだろう。これからは日本の大企業で働く人にも、居心地のよい日本にいるだけでなく、未熟なアジア市場の開拓に携わる経験が求められるに違いない。(ライター:okei)

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