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転職したら「給料そんなに払えない」 前の会社は辞めちゃったのに!

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「こんなセコイ会社だとは思いませんでしたよ!」

そういって嘆くのは、会社員のDさん(男性・34歳)。新卒でA証券に入って働いていたが、競合のB社がもっと高い給料で中途入社を募集していたので、試しに応募してみた。すると、すんなり内定通知が出てしまった。

採用面接では具体的な仕事や待遇の詳しい説明はなかったが、「募集内容と同じだろう」と思い、A社に退職届を出した。するとB社の人事部長に呼ばれ、なんと「あなたの職務内容を見直すことにした。給与も大幅にダウンせざる得ない」と言われてしまった。

Dさんは「話が違う」と憤慨したが、いまさらA社には戻ることはできない。このままでは、わざわざ給料の少ない会社に転職することになってしまうが、こんなだまし討ちみたいなことが許されるのか。

職場の法律問題に詳しい、アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いてみた。
求人広告は「個別の労働契約の内容」ではない

――職務内容や給与が、入社直前に変更されたら困ってしまいますね。しかも、そもそもの労働条件も、会社からあらかじめ明示されていなかったようです。

労働基準法15条では、会社は労働契約の締結の際に、労働者に対して賃金、労働時間その他一定の労働条件を明示しなければならないとしています。

本来であれば会社は、採用内定通知の時点または可能な限りそれに近い時期に、給与等の労働条件を定め労働者に通知しなければなりません。今回の場合は、会社がこれらの義務を怠っているのは明らかですね。

Dさんの場合、「会社の求人広告に職務内容や給与が書かれていた」とのことですが、求人広告は、使用者が労働条件を示して労働者の労働契約の申込を誘引するものであり、個別的な労働契約の内容には原則としてならないと考えられています。

採用面接や説明会などで使用者が労働条件を説明しても、労働契約が締結された場合に、初めてその労働条件が労働契約の内容となります。したがって、求人広告記載の職務内容や給与が、直ちにDさんの労働条件となるわけではありません。

今回の場合、採用面接の席でも、給与等の待遇について人事部長から特に詳しい説明を受けなかったとのことなので、職務内容や給与について、会社と合意が成立しているとは言えないでしょう。
会社に「慰謝料の支払い」を命じた判決もある

ただし、労働契約法4条1項において「使用者は、労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするもの」と定められていることに注意が必要です。

これまでの説明だと、Dさんは会社に何も文句を言えないとも思えますが、採用過程において賃金額の合意の成立が認められない場合には、会社に信義則上の説明責任の違反が認められる場合があります。

事実、求人広告などで労働者に誤解を与えるような説明をした場合に、会社に対して慰謝料の支払いを命じた裁判例があります。

求人票に「初任給見込額」を記載していたにもかかわらず、企業が客観的理由なく確定額を見込額より相当に引き下げ、入社日までにそのことを説明しなかった場合には、雇用契約の締結過程における信義則に反するとして、会社に対し慰謝料の支払責任を認めたものもあります。

Dさんの場合も、会社から職務内容や給与の正確な説明を受けていないとのことですので、会社に対して慰謝料を請求できる可能性があります。悪いことをしているのは会社ですので、最後まであきらめないで一度弁護士に相談してみて下さいね。

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【取材協力弁護士 プロフィール】

岩沙 好幸(いわさ よしゆき)
弁護士(第二東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。 頼れる刑事弁護なら≪http://www.adire-bengo.jp/

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