見知らぬ部署に異動命令 どう考えても「パワハラ」なんですけど!

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見知らぬ部署に異動命令 どう考えても「パワハラ」なんですけど!

新卒でマーケティング部署に配属され、3年が経ったAさん(25歳、女性)。しかしグループリーダーとのソリが合わないせいか、大きな仕事に関わらせてもらえません。

そこで部長に、別のグループに入りたいと希望を出したところ、小売店を支援する部門への異動を命じられました。職場は同じ駅なのですが、これまでのきれいな本社から、近くの関連会社と同じ古いオフィスビルに移ります。

付き合いのあったコンサルティング会社やデザイナーとも縁が切れてしまい、量販店や流通業者とのやり取りに変わりました。関連する部署も製造や生産管理、倉庫などに変わり、見知らぬ人たちと働くことになります。
「グループリーダーに厄介払いされた」と不満

「前は知的でおしゃれな感じの人たちが多くて、会社に行くのがとても楽しかったのです。でも、こっちの職場は体育会系で、コワモテの人が多くてなじめません。これってきっと、グループリーダーの嫌がらせだと思うんです」

Aさんは、こう言って嘆いています。また、この「仕打ち」は、グループリーダーと仲のよかった部長が、Aさんを厄介払いしたのではないかとも疑っています。

「どう考えてもパワハラ」「異動の取り消しはできないか」と憤っていますが、そのような対応は期待できるのだろうか。職場の法律問題に詳しいアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いてみました。

――環境が突然変わり、ご相談者さまは大変な苦労をされていると思いますが、残念ながら、異動の取り消しは難しいでしょう。

会社は、労働契約上、労働者に指揮命令をする権利があり、どのような場所で、どのような職務に従事させるのかを自由に決めることができるのです。

したがって、希望に沿わない部署に配転を命じられたからといって、必ずしも、パワハラとはいえませんし、異動を取り消すこともできないのです。
「配転命令権」の濫用なら命令は無効

例外的に、職種を限定して採用された場合、勤務地を限定して採用された場合には、希望とは異なる部署への異動は無効となります。

会社が従業員に配転を命じることができるのは、労働契約に根拠があるのですから、労働契約上、職種や勤務地が限定されている場合には、契約と異なる部署へ配転を命じることができないのです。

また、職種や勤務地を限定していない場合であっても、「配転命令権」が濫用された場合には、配転命令は無効となります。配転命令権が濫用されるとは、次のようなことが行われた場合です。

(1)業務上の必要性が無い場合
(2)業務上の必要性はあっても、不当な動機・目的に基づいてなされた場合
(3)労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合

今回のケースでは、業務上の必要性がないとはいえないでしょうし、ある程度我慢しなければいけない範囲を超えてご相談者さまが不利益になるようなことともいえないでしょう。
次のキャリアへのステップアップになるかも

問題は、不当な動機・目的に基づいてなされたかどうかですが、確かに、嫌がらせ目的で配転が命じられたのであれば、配転命令権の濫用といえます。

しかし、ご相談者さま自ら別の部署への異動を願い出ていますし、明確に嫌がらせが目的であるという証拠があるわけでもありません。したがって、残念ながら、不当な動機・目的に基づく配転命令とはいえないのです。

このように、会社は従業員に対して、広く配転を命じることが可能となっています。納得のいかないことも多いでしょうが、いろいろな仕事を経験することが、次のキャリアへのステップアップに繋がることもあるので、前向きに考えてみてはどうでしょうか。

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【取材協力弁護士 プロフィール】

岩沙 好幸(いわさ よしゆき)
弁護士(第二東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。頼れる労働トラブル解決なら≪http://www.adire-roudou.jp/

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