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中小企業じゃ有休取れない! せめて「買い取り解禁」して欲しい

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Aさんは、ネットPR会社に勤める30歳男性。6月からは、新卒以来3社目の転職を予定している。幸い給料は上がっているが、今の会社も前の会社でも長時間労働、残業続きで休む暇がなかったという。

調べてみると、この3年間で5日しか有休が取れておらず、それも病欠のみ。転職前に有休を完全消化できればよいのだが、仕事の引継ぎやら何やらで休めそうにない。そこで会社の人事に「有休って買い取ってくれないんですか?」と聞いてみたところ、国が禁止しているからできないという。
転職の際には退職金代わりにもなる

理由を尋ねると「有休の買い取りを認めると、会社が社員を休ませなくなる」とのことだが、Aさんはそんなのウソだろう、と腹を立てている。

「買い取りがあろうがなかろうが、たくさん休めるのは、人が余っている大企業だけなのが現実ですよね。ということは、有給休暇制度って『悔しかったら大企業に入りなよ』ということを、結果的に国が推奨していることになるんですよ」

買い取りを禁じる理由は、大企業の経営者におもねっているからではないのか。一方で、買い取り解禁されれば、中小企業で働く人へのメリットは大きい。転職の際には退職金代わりにもなると、Aさんは鼻息を荒くする。

「国は『ブラック企業追放』とか本気で言うなら、有休の買い取りを義務化するべきですよ。『使い捨て』の抑止にもなります。退職時に有給休暇の完全消化を義務付けて、その分の給料をちゃんと支払うようにしてもいいです。この考え、どうでしょう?」

確かに言い分が分からないでもないが、会社がこのような考え方を取り込んだ制度を導入することは現実的に可能なのか。職場の法律問題に詳しいアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いてみた。
「買い取り」は原則違法。認められるケースは限定的

――有給休暇が事実上取得できない会社に勤めているのであれば、せめて有給休暇を買取ってもらいたいですよね。しかし、年次有給休暇の買い取りは、原則として違法です。

そもそも「年次有給休暇」とは、休日とは別に労働者にできるだけまとまった休暇を有給で与えることで、心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図ることを目的とした制度です。

そこで、会社などの使用者は、採用の日から6か月間継続して勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、少なくとも10日の年次有給休暇を与えなければなりません(労働基準法39条)。

よって、年休を与える代わりに金銭を支給しても、心身の疲労を回復させることにはなりませんので、 会社が年次有給休暇を買い上げることは原則として禁止されています。しかし、以下の場合には、例外的に買い取りが認められています。

(1)法定を上回る日数の年次有給休暇
(2)時効により消滅してしまった年次有給休暇
(3)退職によって権利を行使できなかった年次有給休暇

これらの場合には、心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図るという目的に反しないからです。ただ、例外として買い上げが認められるといっても、会社は法律上、有給を買い取らなければならない義務を負うわけではありません。買い取るかどうかは会社の自由です。
有休を気軽に利用できる法整備の議論を

会社が年次有給休暇を買い上げることが原則として禁止されているというのが、現時点での日本の法制度です。ただ、これではAさんも納得できないところもあるかと思います。現に、Aさんの指摘のとおり、買い取りを認めるべきだという意見もあります。

しかし私としては、そもそも有給休暇を気軽に利用できる社会を作っていくことが大切だと思います。そういう世の中になれば、買い取りという問題も生じないですからね。

今後は、有給休暇を気軽に利用できる社会にするためには、どのように法律を整備していけばよいのかについても議論して欲しいところです。

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【取材協力弁護士 プロフィール】

岩沙 好幸(いわさ よしゆき)
弁護士(第二東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。頼れる労働トラブル解決なら≪http://www.adire-roudou.jp/

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