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ロングインタビュー「坂上 忍」

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傷つきつつも、ケンカする。

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「あきらめるな」をテーマにリニューアルした

インタビューページ2回めのゲストは坂上忍。

子役としてスタートし、今も映画・ドラマで活躍。

のみならず、自作の脚本で30本以上の舞台も演出。

取材が行われたのは『坂上忍の成長マン!!』の収録前。

「成長」について、ブレイクについて語ってもらった。

そこには小さな失敗の積み重ねがあった。

教えマンに教わりつつ、
反発する成長マン

『坂上忍の成長マン!!』が面白い。47歳の坂上忍にさらなる成長を促すべく、「教えマン」が登場し、毎回あるテーマに則ってプレゼンを展開する。テーマは【スニーカー】や【男の美容】【チーズ】など多岐にわたりつつも、ズドンと骨太に坂上にぶつけていく(右記同様に文中に【 】で登場する言葉は番組で取り上げたテーマを表します)。

―坂上さんが興味あるテーマより、ないテーマの方が番組が盛り上がってないですか?

あ、僕はもう…8割方興味がないので(笑)。

―ネタの打診はあるんですか?

前日か前々日に「今回はこれです」って言われるだけですね。僕は「フラットでいいです」って言っていただいてるんです。興味がわいたらわいたで、どんなにプレゼンされてもつまらなければそれで構いませんって。だからほぼ何の制約もない番組ですね。

―【デキる男の美容術】のときに「タイトルが気に食わない!」って怒ってたし、番組で「ハーブ」とか「スムージー」みたいな単語が出てくると、だいたい反発してますよね。

女性誌が載せるようなキャッチーなものに嫌悪感があるんですよ。

―なぜですか?

これが流行ってるんだって「煽動」するでしょ? 読者はそれになびく。ぶっちゃけそういうのってくだらないなと思ってるんで。

―拝見してると、保守的なところがありますよね。【ジャケットにスエットパンツをあわせる】とか【スーツの足元をスニーカーで決める】というときにも反発されてますし。

保守的というか。ピンとこない。僕は古いんだと思います。

―価値観の確立された47歳男子に異質なものをぶつけて、その衝突を見て楽しむのがこの番組の面白みじゃないかと思うんです。

わかりやすい例を挙げると音楽かな。僕は兄貴の影響があったので、ディープ・パープルとかレッド・ツェッペリンとか、自分よりちょい上の世代の洋楽で育ったんですけど、いまだに中学生ぐらいのころの曲を聴いてますからね。そういうなかでたまーにブラーみたいに“新しい”のも耳にして「あ、これはいいな」と思ったものは「ちょっとだけ取り入れる」ということをしてるんです。

―嗜好は固まってるけど、柔軟なところもあると。【サーフィン】のときは最初すごく否定的でしたけど、ラストには「サーフィン最高!」って盛り上がってましたね。

あのー…たとえば新しいドラマに入るとき、キャストに評判のよくない役者さんがいるとして。でも僕はあんまりそういうのを信じないんです。実際に会って自分の目で見て良かったら、「いい人じゃん!」って思える。先入観は持ちたくないです。サーフィンは楽しかった(笑)。とはいえ、自発的にはやんないですよ。

―番組で取り上げたもので、生活に取り入れたものってありますか?

【チーズ】のとき眞鍋かをりさんの行きつけの店(「東京スイスイン」)の店長さんから名刺をいただいたので、ぜひ行こうと思ってます。チーズは前から好きだったんですが、番組以降、自発的にしたのはスニーカーを買ったこと。2足買いました。スーツには合わせませんけど(笑)。

―番組の冒頭に「坂上忍47歳を人として成長させるおせっかいなバラエティ」だと謳ってますよね。坂上さん自身で「成長しなければ」と思ってるところは…。

ありますよ(笑)。気が長くなりたいですね。よく潔癖症っていわれますけど、僕のなかで一番は「きっちり病」だと思ってるんです。全部のことをちゃんとやりたがる癖がある。もうちょっとルーズになってくれたらもっと楽に生きられるのに。

もっとルーズになりたい。
なぜかくも「きっちり」か

―「きっちり病」はどこに由来してるんでしょう? 

たぶん、子役からやってきたからだと思いますね。まずは時間恐怖症。何時にスタジオに入って、このシーンは何時までに撮りたい、というスケジューリングがあって、そういうなかでずっと生活してきて。遅刻はほぼしなかったんですが、連絡の行き違いや勘違いでやってしまって何十人という人たちに迷惑をかけたこともあります。そういうのがトラウマになっていて。あと礼儀恐怖症というのもあります。昔の現場は非常に厳しかったですからね。この年齢になると、下の子たちのちょっとラフな礼儀にいちいちイライラ来るというのは普通にあります。

―この本(著書・『偽悪のすすめ

嫌われることが怖くなくなる生き方』/講談社+α新書)に、「遅刻をしないのは現場でケンカができるように」って書いてらっしゃいますね。

「遅刻をしない」というのは当然の礼儀ですよ。いい大人になると仕事について自分の意見もある。それを言いたいなら最低限の礼儀はきちんと守る。遅刻というミスを犯したその日は、もはや奴隷ですよ。僕はそういうルールなんで。僕らの仕事はひとりでできるものではないので、みんなが自分勝手に動くと回るものも回らなくなる。みんながやるべきことをやるとクオリティを上げられる可能性も出てくる。ただすべてが理想どおりにいくわけはないです。アクシデントや阻害する要素が出てくる。それらすべてにイライラするわけにはいかないんですけど、我慢にも限界はあります。僕はその限界の加減が普通の人よりも低いところにあるんだと思います。

―とおっしゃりながら、昔と比べると、ずいぶんと丸くなられた。

いや、「丸くなった」は適当じゃないなあ。言い方を多少は覚えたというか、昔よりタイミングがわかってきたというのか。僕の場合、最終的には口に出すので、「ささやかに賢くなった」ぐらいがいいかな。

―たぶん坂上さんが今みたいな形でテレビに出られるようになったのは、一昨年の『笑っていいとも!』がきっかけじゃないかと思うんです。

「いいとも」のときはドン引きされてましたね。あのアルタは異様な空気だった。

―それが、今では大ブレイクです。

ドラマでもバラエティでも引き受けた以上は自分のできる最低限のことをやってるだけです。ただ、やり方で人と違うと思うのは…。お芝居の場合、やればやるほど、いい塩梅で手を抜く方に行くはずなんです。この年で一所懸命やりすぎるのはお客さんに圧迫感を与えるだけ。

―「抜く」というのは?

「芝居してるのかしてないのかわからない」みたいなところですね。それはバラエティも同じだと思う。47歳のおっさんがドキドキしながら不慣れなバラエティに出て、できもしないのに笑いを取りに行く…そこには悲壮感しか生まれません。だから「テレビに映ってるのか映ってないのかわからない」感じなんじゃないかなと。映ってるという意識をどうやったらなくせるんだろうって考えて、それはたとえば家にいるときとか友だちと飲んでるときとかがそうだなあと。そういうときに後輩には気を遣わないだろうし、自分が思ったことだけ正直に言えばいいかと。

―達観というか解脱というか。

それで嫌われるんならしょうがないですよ。でも、世の中にこれだけたくさんの人間がいるんだから、中には同意してくれる人もいるだろうと。「違う」と思う人でも、僕が言ってるのは自分で普段からホントに正しいと思ってることだけなので、そこまでの不快感は与えないんじゃないかという考えもあります。

―そこまで肚をくくってたら、ちょっとやそっとで「失敗した!」とか思わないんじゃないですか?

僕はやった仕事のほとんどが失敗だと思ってます。別に卑屈な言い方をしているわけではなく、僕らの仕事には100点がないので、失敗か成功かの二択なら成功とは言えないんですよ。もっと直接の失敗なら、20代になって三枚目っぽい役とかベッドシーンのある役が来たときに、どうしても抵抗があって。バラエティに番宣で出してもらってひと言もしゃべらなかったこともありました。でも、僕を逃がさずにやりきらせてくれた監督がいた。ある芸人さんが深夜番組で「番宣で役者が来て、カンペだけ読んで帰るのはありえない。こっちは自分の番組の尺削ってるのに」っていうのを聞いて、あまりの正論にショックを受けたりもしました。なぜこんなことに気づかなかったのかと。悪いとわかっていても、自力で変えられるほど強くはないんです。だから要所要所でそういう経験があったのがありがたいですね。

―でも今や、なかなか誰も言ってくれないんじゃないですか?

そうなんです。でも、今すごく助かっているのは、畑違いのところで仕事させていただいてること。「フラットでいい」って言ってくれてる『成長マン!!』は、お世辞でもなんでもなくいい刺激です。自由だけど責任があることも自覚できてる。でもなかには悪い刺激しか与えてくれないケースもあって…。この47歳のおっさんに手取り足取り「こんな感じでやってください」って言うとか。「それはねえな」と思いながら、実は傷つくんです。でも、普通に世間でお仕事されてる方々はもっと毎日傷つきながら生きてると思うので、僕もちゃんと傷つきつつ、やっぱりケンカもするわけです(笑)。

プロフィール
「坂上 忍」さかがみ・しのぶ

1967年東京都生まれ。3歳から劇団若草に所属、ドラマ『ありがとう』(TBS)などに出演、天才子役として名を馳せる。多くの子役が廃業するなか、88年、映画『クレイジーボーイズ』でチンピラを演じ、芝居の幅を広げ、大人の俳優としても活躍。97年の『30 -thirty-』で初メガフォン。以降、計5作を監督。自ら脚本を書き、舞台の演出も。今年4月本多劇場で上演された『Re:verse~あの瞬間に戻れたら~』は32作目。また、09年7月に「これまでの経験を還元するために」と子役のためのスクール「アヴァンセ」を開校。現在、『成長マン!!』の他に、『バイキング』(フジテレビ)月曜MC、『有吉ゼミ』(NTV)などレギュラー出演番組多数

(R25編集部)

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